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損な性分ね

 アンデッドと化してタフになってるとは言え、僕とリーフの相手じゃなかった。四匹のアンデッドコボルドはあっという間に動かなくなり、塵となって消える。助けた二人にも目立った怪我は無く、このまま探索を続けると言うのでそこで別れた。


 僕達に気付いて掲示板で自慢するとか言ってたけど、それって自慢になるの? よくわかんないなあ。


「……何でこんなところに、アンデッドが」


 リーフは真剣な様子で……無表情だけど雰囲気がね。真剣な感じで呟いてる。伯爵令嬢だし、こういった事は気がかりなのかも。一階に階級二の魔物が現れてしまうのは危険だからなあ。


 僕もこうして関わったし、気にはなっちゃうね。辺りを見回して、魔力感覚も使って調べるけど何も無い。手がかりを探すには、他を見ないと駄目かな。


 ……おっと、それ以前に時間だ。リーフはログアウトしなきゃいけない。


「帰りましょう、リーフ。兵士の皆さんに報告して、後は任せましょうよ」


「……仕方ない。そうする」


 納得はしてないね。でも聞き入れてはくれた。両親を心配させないようにログアウトすると決めたのは彼女自身だ。それを覆してしまう気は無いみたい。


 踵を返すと、リーフは足早に歩き始めた。







 土曜の夜だ! まあ、僕はあんまり変わらないんだけども。


 いつもの通りログインしたら、リーフが待ってた。早いじゃないのよ。今日はヒルダ様もいる。


「……ラン、迷宮に行こう」


「わたくしはお止めしたいのですけれど……」


「主人の意向ですからね」


「ええ、そうですわね」


 がっくりとして、ヒルダ様は同意する。損な性分ね。


 今日は馬車で向かうそう。従士としておともするなら、服は制服にしようか。コートも着とこ。


 さて、馬車だけども。


「ラン。あなたのケルベロスに任せてもよろしいかしら?」


「馬具もそれ用になってるじゃないですか……」


 わざわざ作ったの? ラピスのベルトを預けたヒルダ様が、いざという時のために先読みして用意したそうな。でも僕がいるなら、受け持つのは当然僕だ。もちろんやらせてもらうよ。


 ちょっと面白いし。


「ラズリ、出なさい」


 魔力量五点でラズリを召喚。馬具……犬具? ともあれ取り付けて用意完了だ。ついでにルリも呼び出して、ラズリの真ん中の頭の上に配置。馬車の扉を開けてリーフとヒルダ様に乗り込んでもらったら、僕はふわりと御者台に上がった。


 意味は無いけど、一応手綱を握る。周りから見たら怖いだろうからね。


 さあ、出発だ。


「ラズリ、常歩……ってわかりますか?」


「わんっ」


 頷いた。ルリがぴょこんと跳ねる。思わず吹き出した。何そのコミカルなの。不意討ちずるい。


 しかし、わかるらしいね。賢い子だ。


「じゃあ常歩で」


 ラズリはゆっくり歩き始めて、馬車もゆっくり動き出した。良いね、大丈夫そうだ。


 ゲイルやレジーナ、ホークさんは、町中では基本常歩だった。僕もそれに倣って常歩のまま進ませる。


 領城から真っ直ぐ南下。第三従士隊舎前を通ったので、従士達に手を振って挨拶。向こうも振り返してくれた。


 貴族地区の門を出たら、南通りを行く。たくさんの人々が行き来する中にケルベロスが現れたものだから、ざわっとして波の引くように裂けて開いた。何だか申し訳ない。


 でも毅然としてよう。この馬車はリーフの馬車だ。僕が変におどおどしてたら、彼女の名前に傷が付くかもしれない。


 何て思って飄々としてるつもりになってたら、ルリもラズリの上で背筋を伸ばしてつーんと澄ましてる。子猫が、つーんと。可愛い。


『ルリもご主人と同じにしますにゃ!』


 僕もこんな感じなの!? 何てこった!


 ちらっと車内を窺うと、和まれてた。くそう。




 迷宮に到着したら馬車は預けた。せっかく呼んだしラズリはそのままにしとこう。ルリに乗られて微妙な表情してるのが面白い。


 リーフ達は兵士長から報告を受けてる。それとなく聞いてみると、アンデッド絡みの話だった。


 どうやら増えてるみたい。何が起きてるのか調査は進めてるんだけど、兵士達も戦士達もどちらでもない人達も、誰もまだ手がかりを掴めてないらしい。これまでに無い事で、ちょっとした混乱? お祭り? そんな事になってるという。


 お祭りて。プレイヤーは自重しようか。大変な事なんだから、喜んじゃ駄目よ?


 実際迷宮に潜る人数が増えているおかげで、彼ら目当ての商人が集まってる。消耗品や食べ物飲み物、武具や道具などなど、様々な商品を扱う商人達が来ていて、すごく賑やかだ。


 イベントじゃん、これじゃ。


 まあ、経済効果があるなら良い事か。


 報告を聞き終えたら、いよいよ迷宮だ。装備をしっかり確認して、明かり代わりの魔力を浮かべて進む。


 魔力での索敵は僕、臭いではルリとラズリが行う。集音の耳飾りはカインさんに貸しっ放しだから無いけど、音についてもルリとラズリが引き受けてくれる。問題は無いね。


 隊列はラズリに腰掛けた僕が前、リーフとヒルダ様が並んで後ろ。索敵の関係だ。斥候役だから、当然前よ。


 ルリは判断に任せた。この子は空中を蹴って移動出来る。前にも後ろにも自由自在。その上風読みによる索敵能力もある。精神同調で僕とは以心伝心だし、色々任せておけるから頼もしい。


 でも実のところ、これは表向きの役割。本当に任せてるのはヒルダ様の護衛だ。彼女はこちらの人。死んだら終わりの、一番守らなきゃいけない人なんだ。本人が強いし水蛇とラピスも呼べる。けど、保険はかけておきたい。だから、ルリに彼女をお願いした。


『お任せにゃ!』


 胸を張って一鳴き。よろしくね。


『ところでご主人。ルリも新しい魔術を覚えましたにゃ』


 え、そうなの? 僕の階級が上がったから?


『ですにゃ。確認をお願いしますにゃ』


 端末からルリのステータスを見れば、成長してるのがわかった。能力値は僕と全く同じだから筋力六、敏捷十八、魔力二十四だ。魔術に新しいものが増えてるね。『風纏い』と言う名前で、効果は『風を纏わせて守る』。持続型で対象を選ぶ事が出来る魔術だ。


 これで攻撃の風裂き、補助の風読み、防御の風纏いと三種類が揃った。僕と同じで便利になってくね。


『ご主人と一緒ですにゃ!』


 僕も嬉しいよ。こしょこしょしてあげよう。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  名前 ラン

  種族 ハーフエルフ

  性別 男性

  階級  五


  筋力  六

  敏捷 一八

  魔力 二四


 魔導器 強化属性剣

拡張機能 変幻自在   小領域作成

  魔術 魔力操作   魔力感覚

     魔力封印


  技術 看破     識別

     軽業     跳躍

     耐寒


  精霊 風猫ルリ


  恩寵 旧神ナルラファリア


  ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一

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