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嫌な臭いがしますにゃ!

 狩りを兼ねた性能テストは順調に進んだ。


 攻撃性能はどちらも高水準。銃は敵の魔術を吸い込んで撃ち返す事が出来る。しかもその時には速度が上乗せされる。覆った金属のおかげか前方の魔術しか吸い込まないので、自分や味方の魔術を誤って不発にさせる危険性も少ない。


 よく出来た銃だ。この金属も特殊な合金なのかもしれないね。


 短剣については攻撃性能特化と言える。四つの属性全ての効果が刃に乗って、一度に相手を襲う。ゲームなんかだと相反する属性がどうこうとか設定されてて対消滅でもしそうだけど、そうはならないみたい。


 炎と水辺りは怪しいと思ったけど、問題無く燃えた。風と土なんてむしろ好相性。風で裂いた傷口を土の質量の加わった刃がさらに広げるんだ。しかも突きの時なんて刺さったまま水の弾けた衝撃で飛んで行く。そして床なり壁なりへ衝突する時に、より深くえぐってた。そもそもゲンゾウさんの石の刃みたいに質量の増加で威力が上がってそうだし、総ダメージ量はかなりやばい事になってそう。


 短剣にした理由もわかった。手数だ。軽い短剣なら、この属性ダメージを手早く重ねられる。リーフが使ったら恐ろしい効率で敵を殲滅しちゃってたよ。怖い。


 この上まだ魔道具化出来るんだろうから、この四属性合金は途轍もない。


『暇ですにゃあ』


 ルリは保険だからね。テストが主な目的だから、何事も無ければ暇になる。ルリが暇なら、それは順調だって事。良い事だよ。のんびりしててね。


『はいですにゃ』


 背中を撫でて、少しだけ構ってあげた。耳元でごろごろと鳴る音が心地良い。


 猫はやっぱり良いなあ。大好き。




 ベンケイには、現時点での報告を入れておいた。動画付きで。返事は早かったね。


「リーフがやばい」


「テンション高くなってるの、わかりますか」


「いやさすがにわかんねえよ。けど恐ろしく強くなってんのはわかるな。四属性はこうなるんだな。良いテストになったぜ。銃の方もありがとよ。おおよそ狙い通りだった」


 これ、狙って作ってたのか。まあ当然なのかな? すんごい弾速で、僕は戸惑ってるんだけども。


 連射出来るから、魔力消費無しでも充分なダメージ効率になるんだよ。もっとも、消費した方が当然一発当たりは全然強い。連射は発動点を魔石ミスリルの中に入れてしまえる魔力操作のおかげで出来る事だ。


 威力は魔導器で刀身を飛ばした方が強そうだけど、こちらは速度と連射による手数があるから優劣付けるのは難しいね。


 後は運用か。右手で剣を振りつつ左手で銃を撃つ?


「リーフ! 剣と銃ですよ! これ、格好良くないですか!?」


「……可愛い」


 何しても可愛いのか僕は。


 そして音声入力にしてたから、ベンケイには大笑いされた。おのれ。







 迷宮の探索も順調だ。地図がどんどん広がってる。


 大まかだけどこの第三層の構造が見えて来た。多分物凄く大きな円柱だ。外側を駆けずり回って広げてみたら、そんな形になった。ショートカットの大穴に繋がる隠し扉のある高さは、ぐるりと回る事が出来たんだ。


 上下方向にも中心にもまだまだ空間がある。でももう帰らないといけない時間だ。恐ろしく広いから、何時間もかけたのに一周回るだけだった。


 ここは地図を完成させようと思ったら、何日もかかっちゃうね。


「では、帰りましょうか」


「……うん。楽しかった」


「それは良かったです。また来ましょうね」


 リーフは三度、こくこくと頷いた。


 帰りもまた魔力操作で飛ぶ。大穴を上がれば程なく第一層の一階だ。そこから出入口までの道は、もう覚えてしまった。


 てくてくと歩いて帰途を辿る。けれどその途中の事。ルリが鼻をひくひくとさせた。


『嫌な臭いがしますにゃ!』


 嫌な臭い?


「ルリが何か気付いたみたいです。どうします?」


「……行く」


 即断即決だ。ルリ、案内よろしく。


「にゃっ」


 一声鳴いて、ルリは空を蹴る。その後を追うと、行き先はこの一階の隅。南西の一角に到着した。戦闘の音が聞こえる。そしてルリが言った、嫌な臭いも漂っていた。


 それは腐臭だ。しかもかなり強烈に臭う。ルリの鼻が心配だ。猫の鼻も人間のものより遥かに利くからね。相当きっついはず。


『ルリは精霊ですから大丈夫ですにゃ。臭いですけど、それだけですにゃ』


 そうなの? 良かった。


 リーフがいち早く駆けて行く。その後を追いかけて僕もそこへ飛び込んだ。


 ここは中程度の部屋だ。広くはなく、狭くもない。魔物が住み着いていたらしき跡が残されていて、ごみの類いが散乱してる。そこで二人の人族、多分プレイヤーだ。彼らが魔物と戦っていた。ただしその魔物は、様子が明らかにおかしい。身体の損傷を意に介してなくて、叩かれようが突かれようがお構いなしに襲いかかってる。


 それはいわゆる、アンデッドだ。


「くそっ! 一階にアンデッドが出るなんて聞いてないぜ!?」


「階級は高くないのに何でこんな強いんだよ!」


 見たところ、このアンデッドはコボルドだ。本来は階級一の魔物。端末によれば階級二になってるから、アンデッド化して強くなってるみたい。でも、それにしてはタフなようだ。アンデッドの特性なのかな?


 ところで、彼らは気になる事を口にしていた。アンデッドは一階に出ない?


「加勢しますよ!」


「おお、済まない! よろしく頼む!」


 銃を撃ちながら、リーフに確認した。


「一階にはアンデッドって出ないものなんですか?」


「……わたしも聞いた事無い」


 という事は、何かが起きてる?


 嫌な予感がひしひしとするね……。何事でもなければ良いんだけど。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  名前 ラン

  種族 ハーフエルフ

  性別 男性

  階級  五


  筋力  六

  敏捷 一八

  魔力 二四


 魔導器 強化属性剣

拡張機能 変幻自在   小領域作成

  魔術 魔力操作   魔力感覚

     魔力封印


  技術 看破     識別

     軽業     跳躍

     耐寒


  精霊 風猫ルリ


  恩寵 旧神ナルラファリア


  ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一

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