表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
256/430

預金が百万に到達しましたわ……

 六月五日。


 梅雨の時期には入ったものの、まだ梅雨と言える程には湿っぽくならない。日本はそんな、夏を前にした金曜だった。


 風鳳の月、八週の十日。


 日々寒くなる一方の、吐息が白く天に上るような時期。冬となる水龍の月の目前となる最後の週の僅か一歩手前。アルスはそんな、風の冷たい朝だった。


 暑くなって来たなと思いながら帰宅して汗を拭い、ログインすれば冷えて来たなと服を着込む。不思議な感覚に襲われて、思わず苦笑いを浮かべた。


 そんな僕を見たヒルダ様は、くすりと艶やかな美貌を可愛らしい笑みに変える。


『何だ、今日は趣が違うではないか』


 …………台無しだよ!


「あちらは暑くなる時期なのでしたわね。こちらはフレアがそろそろ水龍の月用コートを用意している頃ですわ」


「コートですか?」


「従士に着せる物ですわ」


「あるんですか!?」


「無ければ寒い中の行軍など不可能でしてよ?」


 何と……!


 行けば受け取れるだろうって話なので、早速……


「ところで、ラン」


 後回しか。


「はい、何でしょう?」


「預金が、百万に到達しましたわ……」


「何ですと……!?」


 正確には百万と六千イルあるそう。こんな大金、全く使い道を思い付かない。うーむ。


 ちなみに大金貨十枚と大銀貨六枚だね。シルクの袋に入れてわざわざ持って来てくれてた。あんまりかさばらないね。テーブルに並べると大金貨がさすがに壮観。黄金色に輝く大きな硬貨が十枚も!


 ……本当どうしようか。


「ランは無欲ですものね……」


 無欲かなあ。一般的に高価だとされてる物には興味薄いけどねえ。僕が欲しい物って言うと、良い素材とか服とかかな? 後は美味しい物食べたり飲んだりは好きか。


 他には何か………………思い付かないぞ。


 素材はどうだろ? 強力なのは自分で狩りに行くよなあ。でも、端末で買えるサービスで買ったりもしたね。後でまた覗いてみようか。


 服はフレア手製の物だ。これは一着当たり三桁にも届かないから、物凄く高価な服ってわけじゃない。ドレスの一着か二着でも買えば……普通にドレスを考えてしまった。礼服だよ、礼服! でもフレアが売ってくれるわけなかったね!


 美味しい物は、お茶とかお酒が欲しい。これはそこそこする物がありそうだ。お酒もこちらだと未成年のリーフに飲ませても大丈夫だし、成人が飲んでもほろ酔い程度だしで都合が良い。お茶とお酒はありだ。


 でも百万イルなんて大金だと、多少目減りする程度に留まっちゃうよなあ。何か一気に使えてしまうような使い道があれば、ぱっと使っちゃうんだけどね。


 まあ、とりあえず受け取ってしまおうか。手元にあれば、何かで使う気にもなるかもしれないし。


 インベントリの所持金が、七桁……あははは。







 お買い物をするとなれば、まず覗くのは端末にある青の扉。色々な物が並んでるし、特に素材を買えるのがありがたい。もちろんお茶やお酒などの類いも種類豊富に揃ってるから、じっくりと説明を読みながら探して買うつもりだ。


 場所はフレアのお店に移した。ヒルダ様に見られるのはまずいだろうし、コートの事も聞きたい。


「というわけで、僕のもあります?」


「はい、ございますよ」


 渡されたのはお尻を隠すか隠さないかという丈の、薄い緑のコート。デザインはシンプルそのものだ。従士用だし、ごてごてしてても特徴的でも良くないからこんなものかな。


 早速羽織らせてくれたので、くるっと回って見せる。ファリアとフレアからは太鼓判をもらえた。


 生地は厚めで丈夫。それでいて柔らかさも保っている。そして何より暖かい。今はまだ着るのに早いかもしれないけど、飛ぶ時にはちょうど良さそうだ。


 支払いは領地から出るので受け取るだけ。インベントリに仕舞った。


「ソファを借りますね」


「はい、どうぞ」


 ファリアはそのままフレアと雑談を始めた。話題は僕達の近況だ。伏せるところは伏せたりぼかしたりしてくれてる。フレアの方も察してくれて、深くは追及しない。ありがたいね。


 さて、それじゃ青の扉を開こうか。




 あちこち眺めつつ欲しい物を購入する。お茶を数種類、お酒も数種類、美味しそうなお茶請けやおつまみも数種類と色々衝動買い。お酒に似合うグラスなどもあって、目移りしつつやっぱり数種類買った。この機能本当に便利で素晴らしいなあ。


 そうしてあれこれお買い物を楽しんでいると、装飾品の一覧で気になる物を一つ見つけた。その説明を読んで目を疑った。そして即購入した。


 まさかこんな物が売ってるなんて……。


 インベントリの画面に映るその宝石を見つめて、僕は沸々と込み上げる歓喜に口元を緩ませた。


 うふふふ……、お金貯めといて良かったあああ……!


「どうしたのだ、ラン?」


「これですよこれ! 見て下さい!」


 こちらにやって来た二人に端末の画面を見せた。そこに映る宝石の名前は『魔晶』。その効果は『魔術を吸い込んで一つを維持し、利用する』というもの。しかも『身体の何処にでも取り付けられ、任意に取り外せる』そうだ。


 お値段なんと百万イル。ぽんと吹っ飛んだ。


 早速出してみると、ダイアモンドみたいに透明な小粒の宝石だ。それを試しに左手の平へ取り付けようとする。


 ……お、埋まった。痛みは全く無く、半分顔を出す形に収まってる。つんつん突っついた感覚としては、爪とかかさぶたとかに触れるのと似てる。多少違和感あるけど問題にはならないね。


 見ているとゆっくり色を変えて瑠璃色に、僕の魔力の色に染まった。ぼんやり光ってとても綺麗。


「このような物もあるのか……」


「魔晶ですか。この国の王様が一つを所持していると、来店された貴族様から伺った事があります。不思議な宝石だと」


 確かに不思議だ。何でこんな風にくっ付くんだろ? 魔力感覚でわかるかな?


 調べてみると、仕組みはそう難しいものじゃなかった。肉体もエーテルで出来てる。そこに半分融合するような形で定着してるみたい。面白いね。


 ちなみに階級の設定は無し。魔力量は二十。でも現在値は〇だ。回復させとこうか。







 色々試してわかったけど、魔術を維持させてると吸い込めないみたい。しかも解放には最低三秒、魔力量を回復させていればその数値と同じ秒数がさらに必要。その際には魔力も一緒に解放しちゃうから魔力量が〇に戻る。


 防御手段として使うには中を空けておかないと駄目だ。でもそれで吸い込めるのは一発だけ。魔晶の用途としては勿体ないね。


 これは魔道具と同じ運用をするのが一番だと思う。魔術を切り替えられる魔道具だ。それだけで充分便利で強力だよ。


 高かったけど良い買い物だった。所持金はごっそり減ったね。魔晶が百万で諸々買ったのが三万。残りは一万四千イル弱。


 ま、また貯金しようか。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  名前 ラン

  種族 ハーフエルフ

  性別 男性

  階級  四


  筋力  六

  敏捷 一六

  魔力 二〇


 魔導器 強化属性剣

拡張機能 変幻自在   小領域作成

  魔術 魔力操作   魔力感覚


  技術 看破     識別

     軽業     跳躍


  恩寵 旧神ナルラファリア


  ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ