二人目の弟子が出来た!
気にはなったので、冷遇される理由を聞いてみた。何しろ僕はしばらくここに通う事になってる。他人事じゃないんだよね。
「古い話になるのじゃがな。魔道具も関わる話なんじゃよ」
お茶を啜って思い出すような、言葉を選ぶような間を置く。それからテートさんは話し始めた。
「魔力操作が魔道具の作成において大きな役割を果たす事は、実のところ魔術ギルドでも掴んでおるのじゃ。ランもそのようにして作っておるのじゃろう」
何だ、わかってたの? でもわかってるなら、どうしてやらないんだろ?
疑問に思ったけど、この理由はよくある事情だった。
「魔力操作を持つ者に権力が奪われると危惧したためじゃな。そのために魔力操作を持つ者は魔道具の作成に関わらせず、それどころか冷遇してギルドから立ち去るよう仕向けておったのじゃ」
あちらでもこういう話はちらほら聞くね。日本なんて古くから続く年功序列の社会が今尚根強く残ってるんだ。あれと似たような話で、自分の持つ権力を手放せなかったわけだよ。例えそれが魔術ギルドのためになる事であってもね。
これは一部の権力者に限った話じゃない。魔力操作を持つ者が台頭すれば、上へ立つのに魔力操作が絶対の条件になる。その他の魔術を持つ者達全員が、上に立てなくなってしまう。
だからって冷遇するのはもちろん理不尽な事だし、魔術ギルドはより利益を上げる機会を自らの手で逃すなんて馬鹿げた方針を選択した事になる。でも少数派が多数派に弾圧される事なんてあちらでも普通にあるんだ。間違った事だけど、これもまた人の世の常って話だよ。
それが今になって現れた僕という魔力操作を持つ者に脅かされてる。すごい皮肉だ。
ま、過去の事をあれこれ言っても仕方ないし、そんな気も僕には無い。彼らには魔力操作無しの方法でやってもらおうよ。
それを僕が支援しなきゃいけないのが、問題なんだけどさ……。
「話し難い事をありがとうございました。過去の事は過去の事ですし、ごく一部の者が権力を独占する危険性については僕も理解します。魔術ギルドにはたくさんの人々が所属しているにもかかわらず、魔力操作を持つ者しかその運営に関われないなどという事になってしまっては、健全な組織とは言えないですよね」
そうなる事を避けたという事実だけは、悪くなかったと思うね。
ただし動機は駄目。まず間違い無く、当時実権を握っていた者達が自分達の地位を守るためだけに決定した事だろうから。それは冷遇していたという話から想像に難くない。彼らは上手くコントロールしてギルドや人々のために役立てるという努力を放棄し、立場の弱い魔力操作の人達を有用とわかっていながら弾圧して排除したんだ。この事は人として許せる事じゃないし、魔術ギルドという組織の面からもあってはならないやり方だ。
でもそれも、過去の話。テートさんが変革させてる今の魔術ギルドまでもそうだとは限らない。
「同じ魔力操作を持つ者として、憤りは感じんのか?」
「そりゃまあ、多少は。でもそんなところも人族の、社会性を持つ生命の常ですから」
「ほー。ランは見た目によらず大人じゃのう!」
「それ、テートさんが言います?」
「ほほっ、そうじゃったのう!」
応接室に二人の笑い声が響いた。やっぱり話し易い人だね。
さて、問題はマーニだ。彼女は悩んでる。魔術ギルドにはいたいみたいなんだよね。でも魔力操作に習熟すれば、従士入りの対象になってしまう。従士とならなければ危険だから。
それならそれで、答えは簡単なんだけどね。
「では、この三人だけの秘密って事でお教えしましょうか?」
「本当か! ランは話せる奴じゃな!」
「でもあの……よ、よろしいのでしょうか……?」
「よろしいも何も、魔力操作は別に閣下のものではありませんし。それに危険なのはマーニ自身ですからね? 知られればどうなるか。それは隠していたマーニが一番よくわかっているはずです。それに加えて、僕のせいではありますけど利用しようとする人達も現れるかもしれません」
ノリアエントでのプレイヤー達の所業は覚えてる。多数で押しかけてたくさんの人達に迷惑をかけてた。彼らみたいな人達はきっと、マーニの事を知れば放っておかない。今度はプレイヤーじゃなくてNPC扱いだから、もっと遠慮も薄れるだろうね。
僕もカーマインも首尾良く従士になれたから守られた。でも多分、今の魔術ギルドにそこまでの力は無い。倒れかけた組織に彼女は守れないでしょ。
しかもその時には、彼女が魔力操作を持つ人材だって事がばれる。魔力操作の持ち主を迫害して来た人達が、果たして彼女を放っておくかな?
「もっとも、ばれないようにするのはこれまでと変わりませんからね。同じようにしていれば問題無いはずです。仮にばれてしまったならその時、従士となる事を考えれば良いんですよ。それにテートさん次第では、その時には魔力操作を持つ人材の扱いも向上してるかもしれませんし。ね?」
「うむ、もちろんじゃ!」
同意を求めれば、良い笑顔で頷いてくれた。
「マーニはマーニの望むようにすれば良いのじゃ。他の事は儂とランに任せておけ!」
「はい……!」
じわっと涙を滲ませて、彼女は自分の望みを口にする。
「わたくしに……魔術を、教えて下さい!」
「はい、承ります」
二人目の弟子が出来た! 秘密だけど!
続いての話題は、テートさんから振られた。それはさっきの魔力操作の話にもあった、権力を求めて保持しようとした人達について。
今も魔術ギルドが抱える内患についての事だった。
「儂は先代の支部長とその取り巻き達を一掃した。したつもりじゃった。しかし長く続いておった奴らの支配から、そう容易く脱却出来るはずもなかったのじゃ。儂が今は支部長として管理しておるが、息のかかった者は多く潜んでいる。不甲斐ない事じゃがのう」
これはもちろん身分制度の話にも絡んでいた。身分制度も魔術差別も先代の影響も、何れもが解消されない。こういった負の遺産がテートさんを悩ませ続けている。
聞いててこちらまで頭が痛くなるようだね。
「ランも気をつけるのじゃぞ。奴らが何処で何をしておるのか、何を企んでおるのか、何もわからんのじゃ」
僕みたいな外様の存在は、そんな連中にとって目障り以外の何ものでもない。一刻も早い排除が望ましいはずだ。常に警戒しておく必要があるね。
でもそれだと、危険が付き纏う事になる。
「マーニが危なくはないですか?」
「儂にも手の者がおる。マーニも一人ではないぞ」
あ、それもそうか。じゃあ心配しなくても大丈夫だね。
「あ……ありがとうございます。でも、わたくしの……心配なんて……」
「今日からマーニは僕の弟子ですから。……あ、そう思ってて構いません?」
「もちろんじゃ! よろしく頼むぞ!」
また嬉しそうにしちゃって。本当可愛いなあ。ハーフリングはずるい。
……抱っこしたり頭撫でたりしたら怒るかな。怒るよなあ。
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名前 ラン
種族 ハーフエルフ
性別 男性
階級 四
筋力 六
敏捷 一六
魔力 二〇
魔導器 強化属性剣
拡張機能 変幻自在 小領域作成
魔術 魔力操作 魔力感覚
技術 看破 識別
軽業 跳躍
恩寵 旧神ナルラファリア
ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一
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