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チュートリアルを始めます

 閉じていたらしい目を開けると、初めに端末が見えた。それはさっきまで使っていたタブレット端末ではなく、ずっと小さいスマートフォン程度の大きさ。灰白色で透き通ったガラスのようなデザインはそのままに、文字の色だけ黒から瑠璃色に変わっていた。


 目の前に浮かぶそれにはチュートリアルと書かれていて、次へと進むためのタッチ領域も表示されてる。


 周りは暗い。端末の画面がぼんやりと光っているので少し見えるけど、立っているのは石か何からしき冷たそうな床だ。足首までのショートブーツを履いていて、軽く足踏みをした床の感触が硬い。このブーツは靴底があまり厚くない。厚手の靴下が辛うじて暖かく感じられて、長さはブーツと同じく足首までだけど何とか冷えずに済んでるかな。空気はちょっと涼しい。じっとしてたら冷えちゃうかもしれない。


 自分の身体に沿って視線を上げると、剥き出しの脚が見える。腿の半ばまでがそのままで、次に見えたのは青。深い青のミニスカートだった。幅広なベルトで留めて、ローライズ気味に穿いてる。


 何となく不安に思ってめくってみると、紐パン様は健在でした……。


 気を取り直して、と言うより目を背けたくて視線をさらに上へ運ぶと、見えたのは明るい灰色。首回りがVラインに広く開いたブラウスを着ていた。ボタンを上二つだけ留めてくびれの辺りに細い革のベルトを巻き、ちょっとした動きでおへそがちらっと見えてしまう着こなし。袖は長袖、裾はスカートに少しかかるくらい。


 何故こんなにもセクシー路線なんだ。似合ってないと思うんだけど。


 ブラウスの下から覗くのは白いキャミソール。こちらも健在だったか……。広く開いた首回りのせいで肩紐はちらちら見えそうだし、胸元を隠す布地は見えちゃってる。下着っぽくはないからやらしく見えないけど、大丈夫なのかな。


 しかし、どう考えても女性扱いされてるね。ステータスの性別はちゃんと男性だったのになあ。


 まあいいや。この見た目だからね、そんなの慣れっこだもの。これまでの人生で一体何度女装させられたか。抵抗感なんてとっくの昔に消え失せちったい。




《魔導器のチュートリアルを始めます》


 次への文字に触れると、魔導器の扱い方が表示された。特に何かする必要も無く、ただ魔導器を出現させようと思うだけで良いらしい。試してみれば確かに簡単で、細長い黒の柄が現れた。


 僕の手でも握り易い細さの少し平たい形状。長さは二十センチくらい。両端は下側が丸まって途切れて、上側は途切れた先端部分に穴が開いてる。


 刀身も同じように出現させるのかな? そう考えた途端に瑠璃色のエネルギーが溢れ出し、真っ直ぐで薄い鋭利な形状に集束した。柄からほんの少し離れた位置に定着して刀身を形作ってる。


 長さはおよそ一メートル。細身の刀身はレイピアを思わせるけど、それよりは少し幅が広い。明るく光り輝いていて、遠くに見える壁の姿を照らし出した。明かりの代わりにも使えるとは便利な。


 もっとも、ここみたいな暗い場所で何かする事が少なければあんまり意味が無いけど。


 軽く振り回してみる。柄の分しか重さを感じないんだけど、大丈夫なのかなこれ。剣に限らず、武器にはある程度の重量が必要のはずだ。こんな軽い上に僕の非力さで、この剣に武器としての役割が果たせるだろうか……。


 そう言えば属性剣だっけ。よくあるゲームみたいに、属性攻撃力特化型の剣なのかもしれないか。魔力属性って事? どんな属性よ。推測も難しいよ。


 メッセージをさらに次へ進めると、この端末についての説明が表示された。これは各プレイヤーに一つ支給される物で、人に譲渡する事はおろか無くす事も不可能というアイテムらしい。名称は簡素で、『メニュー端末』。


 端末にはステータスを閲覧したり持ち物を管理したり、他のプレイヤーと連絡したりと様々な機能が詰め込まれていた。ゲーム的に言えば、メニュー画面なんかで出来るような事を行うための端末。つまりは名前の通りの機能を持ってる。そこに追加でスマートフォンやタブレット端末の機能がある程度搭載されている万能アイテムだ。


 魔導器と同じく必要に応じて出したり消したり出来るというから、これまた便利。ただし今は浮いてるけど、浮かせる機能は無いらしい。手に取ったら二度と浮かない。そこは残念。




 細かい機能の確認は後回しとして、チュートリアルを進める。今度は戦闘らしい。


 思わず剣の光で周りを照らす。ここは円形で、直径にして百メートル程の大広間だとわかった。壁や床、天井などは石のような質感の物。切れ目や継ぎ目が一切無く、模様なども特にない。巨大な石をくり抜いて作ったかのような広間だった。


 その中央に、聳えるような人型の影が見えた。


 寸胴で、全体的に太ましい形状。その背丈は僕の三倍程。横幅なんて三倍じゃ全く足りない。色は黒で、剣の放つ強い光が無いと闇に紛れてしまいそうだ。顔などの細かい部分はのっぺりとしていて、およそ生物的ではない。黒い粘土か何かで作り上げた人形。そんなのがそこに立ち、ゆらりと身体を揺するものの姿。


 いわゆるゴーレムと呼ばれるもののように思えた。


 あまりの事に呆けていると、左手にある端末が音も無く振動した。見ればメッセージを表示している。


《魔術のチュートリアルに入ります》


 あ、はい。いきなりだね。


《魔力操作は魔力を操り動かす魔術です。魔力から生成されている魔導器も対象となります。さらに『属性武器』であれば、その攻撃部位を操り動かす事も可能です》


 なるほど。僕なら柄ごと動かす事も、刀身だけ飛ばす事も出来るって事?


 それを試すための、このゴーレムなわけね。


《対象は自己の魔力です。ただし他者の魔力でも、許可を得る事が出来れば干渉可能となります》


 敵の魔導器や魔術を操る事は出来ないのか。残念。でも味方の魔力なら大丈夫だそうだし、使い勝手はきっと良いね。


 どの程度操作出来るのか、どんな風に操作出来るのかなどなどは、今後色々調べながら試してみよう。


《使用方法は魔導器の生成と変わりません。ただし、魔導器を出現させていなければ使えないので注意して下さい》


 魔導器を出してる時に使おうと思えば、発動出来るって事かな。


《魔術は魔力を込める事で、より強力に扱う事も可能です。ただし込められる魔力の最大は階級と同じ数値までとなります》


 魔術を強化しての発動も可能っと。今は階級一だから、魔力一点だけ使えるわけね。


《魔力操作は持続型の魔術です。持続している間、使用した数値だけ魔力を占有します。占有された魔力は消費扱いなので、常に減少した状態を維持します。魔術を止める事でその部分の自動回復が通常通り適用されます》


 最大値が一時的に減るようなものか。という事は、持続時間みたいなものは無い? 魔力の使い道が他に無いなら、持続させたままで良さそうだ。


 でも今はまだ魔力操作自体、他の使い道がわかんないからなあ。




 とまあ、そんな情報を走りながら確認した。


 後ろへちらりと視線を向ければ、どしんどしんと追いかけて来るゴーレムの姿。もう、せっかちなんだから!


 チュートリアルでしょ? 読み終わるまで待ってようよ……。


《魔導器と魔術を駆使して、ゴブリンを倒しましょう》


 ……ゴブリン? ゴーレムじゃなくて?


 ゴブリンと言えば醜悪な顔の小柄な魔物だよね。そんなの何処にもいないよ?


 何か、いきなり怪しい雲行きになって来た……。


 このチュートリアル、正常に働いてるんだよね!? ただの誤植だよね!?




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  名前 ラン

  種族 ハーフエルフ

  性別 男性

  階級  一


  筋力  六

  敏捷 一二

  魔力 一二


 魔導器 属性剣

  魔術 魔力操作


  技術 看破


  ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一

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 ステータスは後書きに載せておきます。ある程度育ってしまうと変化が乏しくなるのですが。


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