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何て殺し文句だよ……

 リーフがヒルダ様を連れてやって来た。なので、ゲイルとの話題は変える。旅行での事に無理矢理戻した。


 作業中の僕の隣にぽすんと座り、リーフは浮いた端末をしげしげと眺めている。


「あれ、話してませんでしたっけ? 端末も魔力で作られてたんですよ」


「……まだ聞いてない。そうなんだ」


「便利ですわね」


 音声入力にはしてあるので、二人の言葉も端末は拾って文字にしてゲイルに送ってくれる。それで二人が来た事を察してくれた。


「リーフとヒルダか。こっちは異常無しだ。ちと暇だぜ」


「それはよろしい事ですわね。姉様はお元気かしら?」


「ああ、そりゃもう。相変わらず旦那一筋だぜ。旦那がしんどそうなところに目を瞑っちまえば、良い夫婦だよな」


 え、何それ。


「どういう事ですかそれ?」


「ヒルダの姉貴は、北を治めてるソロト家に嫁いでんだよ。そんでな、ソロト家ってのはハーフリングの一族なわけだ」


「ほうほう」


「姉貴はな、重度の少年趣味だ」


「うわあ……それは、さぞかしお幸せでしょうね」


 どうなってんのさ、シルエレート家姉妹は……。


「無事長男も生まれてな。今は絶好調なわけよ」


「絶好調?」


「そりゃお前、夜の方に決まってんだろ」


「うわあ……ええと、さぞかしお幸せでしょうね……」


 どうなってんのさ、シルエレート家姉妹は!?


「確かに、相変わらずですわね姉様は」


 ヒルダ様はわりと人の事言えないからね?


 ソロト家の旦那様には頑張ってもらうとして、話は魔穴絡みの事に変わる。その傍らで僕は作業を続けた。


 リーフとヒルダ様には、わりと早い段階で作ってるところを見せた。遊びに来る事が多いし、その度に中断してたら気を遣わせる。だからもう、良いかなって。それにこの二人なら構わないとも思うし。もちろん秘密にはしておいてもらってる。


 そんなわけなので、二人がいても作業は続行。ゆっくりのんびり進めた。


 ヒルダ様がゲイルから色々聞き出す一方で、リーフは僕の作業をじっと見つめる。どうしよう、緊張して来た。自覚しちゃったから、尚更綺麗にも可愛くも見えてしまう。何てこった。しばらくは駄目だね。


 作業自体は滞りなく片付く。素材と完成形の情報を識別で端末のメモに書き残して蓄積し、分析を進めれば大体の計算も可能になった。それで魔力使用量を調節しつつ無駄を無くして作業の最適化を行い、手順を確立した。


 今となってはお喋りの片手間にやってしまえる。魔力操作は当然として、魔力感覚もあるおかげだ。


 あちらで普通の仕事をしてるのが馬鹿らしくなっちゃうけど、こちらのお金をあちらに持って行く事は出来ない。残念。


「こちらのお金をあちらで使いたいですねえ」


「結構稼いでんだったな」


「……ベンケイも同じ事言ってた」


 彼も稼いでそうだもんね。考える事は同じか。


 ヒルダ様貯金は十八万弱。そこに今やってる仕事の報酬が入れば、確実に二十万は越えてしまう。一イルを何円にするかが問題だけど、物とか宿の値段を見るに百円前後だと思う。そのままのレートで換金出来たら……二千万円だよ!?


 嘘お!? そんな金額!?


 これ、ベースは魔術ギルドの決めた金額なんだよね。魔道具を百個売ったんじゃなく、作った金額でこれか……。やっぱり高いって!


 技術職って、あちらでもこんなには儲からないよねえ……。


 ああ、切実に思う。日本円に換金したい。







 ゲイルがレジーナとカーマインに呼ばれて話が終わり、ヒルダ様も巡回のために席を外した。そうすると、必然的に僕とリーフの二人だけになる。おかしい、何故こんな事に?


 リーフはヒルダ様を扉のところで見送ると、さっきまでと同じように僕のすぐ隣に腰を下ろした。そして一休みしてる僕をじっと見つめる。


「えっと……宿にいた時みたいですね」


「……うん」


 やばい、顔が赤くなってるのが自分でわかる。そんなに見つめちゃいやん。


「……ベンケイが言ってた」


「はい?」


「……とりあえず掴んでおいたら良いって」


「……はい?」


 よくわかんない。何? 何の話?


「……わからないなら、掴んでおいたら良いって言われた」


 そう言って、リーフは僕の腕をそっと手に取った。


 掴むって、僕を?


「……迷惑じゃない?」


「いや、あの……意味がよくわからないのですけど」


「……多分、恋愛の話」


「えー……」


 何言ってんのよベンケイさんは! 何なの!? 焚き付けたの!? 余計な事を……!


 とりあえず掴むって何よ! わからないなら掴んじゃ駄目でしょ!? 自分の事を見つめ直すのが先!


 ああもう! ゲイルと言いベンケイさんと言い、お節介なんだから!


『焦れったいのだろう。我はベンケイの話にも一理あると思うぞ? お主やリーフのようにそちらの方向へ自ら向こうとしない者は、先に掴ませてしまった方が良い。そうでもしなければ、いつまで経っても動き出さぬからの』


 本人はそれで良いんだから良いじゃん!


『まあ、百歩譲ってお主はそれで良いとしよう。しかしリーフはどうだ? 放っておけば行き遅れてしまうぞ』


 それはほら、親御さんが考えるでしょ!


『好いてもいない者の下へ嫁げと言うか』


 そんなの、僕相手だって同じじゃないの!? わからないって、そういう事でしょ!


『それはあくまでも恋心かどうかわからないという事であろう。リーフは、葉子はお主を好ましく思うておるわ。それはお主自身も理解しておるだろうに。おっと、年に逃げるでないぞ? 年の事を言うなら、お主は老いんのだ。やがては逆になろう。お主が、老いてゆく葉子を看取るのだ』


 そういう事じゃなくてさ……。


『少なくとも、何処の誰とも知らぬ者よりお主の方が遥かに良い相手よ。魔導器を持つ者同士であり、快く思うておる相手でもあるのだからの』


 四面楚歌か。まだ三面だけども。


『見よ。その目を見てもまだ煮え切らぬか』


 言われて視線を上げれば、じっと見つめるリーフの翡翠色が目に映る。


 無表情に見える。いつも通りの無表情に。でもよくよくと見つめれば、だんだんと頬が染まってゆく。


「……迷惑なら」


「迷惑だなんて思いません! でも、僕は……倍も年上なんですよ? それに年だって取らないんです。あなたが老いて倒れる時も、僕は隣でこのまま……」


「……その時は頼りにする」


 俯きかけた僕の顎をすっと上げさせ……って、これあれ? 顎クイって奴? 僕がされる側なんだ? ショック。


「……考えたら、駆とずっと一緒にいるのは楽しそうだった。何をしてなくても、見てるだけでも楽しかった。……わたしが嫌じゃなかったら、少しでもいい。掴まれてて」


 何て殺し文句だよ……。


 そう真剣に言われてしまっては、心臓を鷲掴みにされた僕の選択肢なんて一つしか存在してなかった。


「はい……」


 ねえこれ、逆じゃない? 男女逆じゃない? 大丈夫? 合ってる?




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  名前 ラン

  種族 ハーフエルフ

  性別 男性

  階級  四


  筋力  六

  敏捷 一六

  魔力 二〇


 魔導器 強化属性剣

拡張機能 変幻自在   小領域作成

  魔術 魔力操作   魔力感覚


  技術 看破     識別

     軽業     跳躍


  恩寵 旧神ナルラファリア


  ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一

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