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子供扱い!? 酷っ!

 さて、空を移動しながら動画編集だ。うっかり忘れたって事にするから、終わった後魔穴が無くなった事を確認出来る動画だけ撮影した、という体裁に整えとこう。これを見ればどうやったかはともかく、消し去れた事はわかるって具合に。


 盾を蹴って加速しながらそんな事を済ませていると、しばらくして魔物の軍勢が見え始めた。地平の果てがエーテルに消える辺りから現れて、次第にその全貌が見渡せるようになる。


 高さがあるから向こうは僕に気付かない。そのまま南下を続けてる。この軍勢、どうしようか。


『無理に戦う必要はあるまい。そして、無駄に姿をさらす必要もな。あやつらはこのまま魔穴の跡地まで戻るであろう。その後どうするかはわからぬが、仮にまたフリントクルズへ攻めるとしても時は稼げる。その頃には、こちらの援軍も到着していよう』


 おー、それ良いね。また攻めて来るなら援軍と合流した戦力で迎え撃てるし、来ないなら野良の魔物になるだけ。どちらでも僕達は構わないわけだね。


 そういう事ならそっとしておこうか。僕は変にちょっかい出さずに真っ直ぐ帰ろっと。


 ちなみに見下ろして数をざっくり確認してみると、千に近い軍勢だった。思いの外戻してたね。残した戦力でも充分だと判断したのかな。本当に三千いたのなら、確かに充分なんだけども。


 不安になって来た。先を急ごう。




 その後しばらくの距離を飛び、本隊らしき軍勢も見下ろした。ハーピーらしき姿があったので高度を上げる。気付かれると面倒だ。


 軍勢は撤退してるみたい。数はさっき見た僕の追っ手より少ない。撃退出来た? それなら良かった。


 胸を撫で下ろしてから端末で連絡を取ってみる。相手はゲイルだ。


「ゲイル、そちらは無事ですか?」


「おう、待ってたぜ! こっちはお前とリーフのおかげで士気が異様に高くてよ。押し留めんのは兵士達に任せちまって、俺達はプレイヤー集めて魔物どもの散開した陣形を突破した。後ろからがたがたにしてやったぜ!」


 魔物達はやっぱりあれを警戒して、散開陣形で来たんだね。予想通りってわけか。で、ゲイルは結局突貫したのね。指揮官には逃げられたらしい。しばらくは踏み留まって堪えてたんだけど、損害が大きくなる前に撤退を決めて軍を退かせたそうだ。


 リーフのおかげというのは、彼女にしては珍しく奮起させるような指示を出したのだとか。僕の作戦……と言うより不意に思い付いた悪戯みたいなものだけど、あれを悲壮な囮として通達したようだ。その犠牲を無駄にしないために、皆が勢い付いてくれたんだ。


 ちょっと嬉しいかも。


「それで、そっちはどうなんだよ? 魔穴に行ったんだろ?」


 と聞かれたので、編集した動画をアップロード。


「今回はうっかり撮影を忘れてしまったので、跡地だけですけど」


「お前は何でもなかったように言いやがるな……。ともかく消えてんのは確認したぜ。他の奴ら……つっても三人か。見せとくぞ」


 レジーナとリーフとヒルダ様だね。


「ところでこの動画、夕方頃に撮影してるよな?」


「ですね」


「今は?」


「夜ですね」


「……いや、まあいいがよ」


 うん、連絡するって頭に無かったんだよ。


「ごめん遊ばせ」


「おう、許さん」


「えー」


「後どれくらいで戻るんだ?」


「もうすぐですよ」


 行きの時程急いでないけど、もう二十分はかからないところまで来てると思う。飛べるようになって移動速度のインフレがすごいな。今は時速何キロ出てるんだろ? 測ってみたいね。


 着いても真っ直ぐは降りられないから、ちょっと考えとこうか。砦の館の上に降りれたら簡単なんだけど、ハーピーがいたし兵士を配置してそうだ。


 駄目なら仕方ない、離れたところに降りて歩こう。







 はい、駄目でしたー。


 でもよく考えたら、盾を蹴って移動したところは見せてしまったし、それでひょいひょい行けば良いんだよね。なので、歩かずにそうした。


 服はぼろぼろだけど普通に帰った僕を兵士達は大喜びで迎えた。そして方々に伝えて、あちこちからわらわらとやって来る。怪我してる人まで起き上がっちゃったみたいで、もうしっちゃかめっちゃかだ。頭やら肩やら背中やら腕やらをぽんぽん軽く叩いてねぎらってくれる。


「誰ですかお尻叩いたの!?」


「太え野郎だ、とっ捕まえろ!」


 後でこっ酷い目に遭わしてくれるそうな。お手柔らかにお願いしておく。


 笑い声に振り返ると、ゲイル達が見えた。まーた笑ってるし。


「酷えなりだな」


「味方に当たる事なんて構わずに射かけたり投げたりするんですもん。本当酷いですよ」


「ランちゃん、怪我は?」


「三点程減ってますね」


「治す水を出すわね」


 インベントリから出したコップに魔術で水を注いで、それを僕に渡してくれる。飲めば良いみたい。見た目はただの水。でも、飲むとたちまち生命力が回復した。


 彼女の魔術、名前は『癒しの水』だったかな? 傷に塗っても、こうして飲んでも治せると言うから便利だ。コップ返してお礼を言う。


「これくらい良いのよ。無事で良かったわ」


 そう言って、レジーナは僕の頭を撫でた。心地良いし嬉しくなっちゃうけど、完全に子供扱いじゃないですか。


 まあね、レジーナは僕よりよっぽど大人っぽいしね。致し方なし。


 それからゲイルとレジーナ以外にもう一人、カーマインの姿もある。そちらを見れば、彼女もそばに来た。


「師匠、オレもう心配で心配で……気が気じゃなかったっすよ!」


「気苦労かけてしまいましたか。ごめんなさい、カーマイン」


「無事で良かったっす……」


 上からかぶさるように抱き締められた。意外と大胆ね、程々にある胸で顔が普通に包まれちゃってるんだけどな……。


 心地良いけど、一応注意だ。


「カーマイン胸! 胸が当たってますから!」


「もう師匠なら良いっす。男だと思えないっすから」


 えー……。地味にショック。


 ゲイルめ、また大笑いしてるね? 覚えとれよ……。


「カーマインも女性なんですから! 慎みは持ちましょうよ!」


「母性っすよ!」


「子供扱い!? 酷っ!」


「ランちゃんじゃねえ……」


「諦めろよ。良いじゃねえか、可愛がってもらえてよ?」


 味方は!? 味方はいないの!?




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  名前 ラン

  種族 ハーフエルフ

  性別 男性

  階級  四


  筋力  六

  敏捷 一六

  魔力 二〇


 魔導器 強化属性剣

拡張機能 変幻自在   小領域作成

  魔術 魔力操作   魔力感覚


  技術 看破     識別

     軽業     跳躍


  恩寵 旧神ナルラファリア


  ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一

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