表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
151/430

混沌のやる事だからのう

 怖かった! 滅茶苦茶怖かった! 何でもかんでも投げなくたって良いじゃない! 必死でかわして必死で弾いたよ! 服があちこち切れたり破れたりしてぼろぼろだ! どうしてくれんのさ! 弁償……はいいか。僕お金払ってないし。


 気を取り直して、作戦は大成功だ。かなりの数を僕の方に向けてくれた。指揮官らしき悪魔は釣れなかったけど、振り返って見えるのは魔物ばっかり。正確な数字はさすがにわかんないな。でも数百ってくらいには見えてるね。


 散々挑発して、魔穴消滅宣言もして、二つ閉じたのも僕だと明かしてやった。目の色の変わり方はすごかったね。親の仇でも見るような目で睨まれて、すぐに罵詈雑言とか矢とか武器とかが飛んで来た。言葉がわかる魔物が案外いたみたいで、周りに広めてくれたから助かっちゃった。


 さて、このまま付かず離れずで行く必要は無い。僕を追う魔物達は、どうあっても魔穴まで戻らなければならないんだから。急ぎ戻って僕を止めるなり邪魔するなりしないといけないんだ。戦場に戻るという選択はあり得ない。


 そんなわけで、振り切ってしまっても問題無い。スピードを上げよう。それから、どうせまた魔力がたくさん必要になる。集めながら向かおうか。




 魔穴の位置は知らなかったけど、大地には進軍の跡が残っていた。この跡を辿る事で簡単に見つけられた。


 ここの魔穴は、ノリアエントよりも大きく見える。具体的にどのくらいと言うのは難しいね。直径十キロ前後? 穴の中央辺りに浮くと、地平の霞む辺りまで穴だ。


 見下ろせば、警備なんてものは無かった。魔物の姿は見えず、ロランシルトの魔穴のようにもぬけの殻。やっぱりこのタイミングがベストだったね。一人で何十もの魔物と戦うなんて厳し過ぎる。予想通りで良かった。


 端末のカメラを起動させてから穴へ。すぐに止まれる程度の速度で降りて行く。けど、程なく異常を感じたので降下を止めた。


 ぴたりと止めたつもりが上に浮き上がる。何だろ、感覚が変だ。微調整して、今度こそ宙に静止。ゆっくり魔力操作してみると思いの外軽く動いた。そして、操作をやめても止まらず動いてしまう。止まるには魔力操作が必要だった。ついでに落ちない。


 これはあれだね、無重力だね。


 動かすの楽そうだと一瞬思ったけど、実際にはむしろ厄介だった。普段と感覚が違い過ぎるしスピード出過ぎるし、慣性を計算に入れて動く必要がある。スピードを出し過ぎていればそれだけ止まるまでに時間がかかって、身体への負担も増す。普段との感覚の違いが操作を誤らせかねず、微調整に重力を使えないから全て操作しなければならない。


 慣性でそのまま動いてしまう事も、思った以上に注意を要する。この場所がだだっ広いのは助かったね。狭かったり障害物があるようなところだったら危なかった。


 本当は慣れてから行動を開始したいけど、魔物達が来てしまう。一刻も早く核を見つけないといけない。


 降下を再開する。下に向けて動かした後は操作をやめ、慣性で動くに任せて周りに目を凝らした。


 魔穴は、幾らも降りない内に壁面がまた黒くなってた。ノリアエントと同じく、何かが蠢いているように見える。確認に行きたい気もする。でも今回は急いでるからやめとこうかな。


 何処までも続くような黒い穴。今のところ魔物の気配は無く、ただ降りて行くだけの時間が過ぎるばかり。集めて束ねた魔力を引き連れて、ひたすらに真っ直ぐ落ち続けた。


 見えるものに変化は無い。







 端末の時計が到着から二時間を示した頃、ようやく変化があった。魔力の放つ濃い空色の光に照らされて底が見える。初めはぼんやりと、やがてはっきりと黒い最深部の底が現れて、いよいよ蠢いているものと対面させられた。


 人族の姿ではある。しかしあまりにも滅茶苦茶で、三度目となる僕でも怖気を感じるに充分な異様さだった。


 女性が見えた。ロランシルトの魔穴に囚われていた人達のように横たわって動かない彼女には、両腕が無い。代わりに、二つの胸からたくましい男性の腕が生えていた。


 男の子が見えた。光に向かって伸ばされた腕は三対、計六本。


 男性らしき姿が見えた。首から上が無く、腹部に顔が浮き出ている。


 一面の何処を見てもそんな光景だった。誰も彼もが滅茶苦茶な姿にされて、あまりにも残酷で凄惨な様相。僕は身体の内側が冷え切って行くのを感じ、持っていた柄をぎゅっと両手で握り締める。


『案ずるな。お主が解放してやれば良いのだ。それでこの者達も救われる』


 うん、そうだよね。早く核を……っとと、あった。真ん中を真っ直ぐに降りて来たからか、すぐそこに見えてた。


 今回の核も色は黒い。形状は妙に凸凹した球体だ。深い溝が走ってたり、盛り上がってたり。それに何かが張り付いてるような?


 こうして見ると、球体と言うのもちょっと違う気がするね。


 ともあれ、また剣を突き刺してしまおう。刀身を発生させて貫こうとする。けれどその瞬間、核がまるで脈動するかのようにびくんと動いた。


 え、何? 今までに無かったパターンだよ?


 驚いて身構えると、核が割れて展開した。


 ……いや違った。これはただ丸まってただけだ。最初から球体じゃなかったんだ。


 張り付いていたものが広げられるとそれは皮膜の翼で、深い溝を作っていたものは腕であり脚であり、頭だった。


 つまり翼のある人型の形をしていて、しかも柔らかな曲線のある体型と豊満な二つの丸い物を持つ。頭部に髪は無いけど、目鼻のはっきりとした美貌。


 核は、妖艶な美女の姿だった。


「嘘お……」


『混沌のやる事だからのう。基本的には何でもあり得るのだ』


 気怠げな表情でこちらを見ると、女性型の核は艶やかに笑う。


「ほう、人族か。よもやこの深淵にまで来る者が現れようとは」


 高めの声が耳に心地良く響く。何処か蠱惑的で、ある種の衝動を掻き立てられるような抑揚や緩急がある。


 視線は僕を上から下へとじっとり眺める。


「その容姿で、男か? ふふふ、これはこれでそそるわ」


「お断りします!」


「釣れない事を言う。ほんの三回四回程度、付き合ってくれても良いではないか」


「多い!?」


「我ら魔の者にとっては少ないくらいだ」


 と言うかこの核、滅茶苦茶喋るじゃん。やり辛いんだけど。


「それとも……」


 そう言うが早いか、彼女は身体の形を変え始めた。柔らかそうな二つは肉厚な胸板に、しなやかな両腕両脚には太い筋肉を纏い、美貌は厳つく残忍なおぞましい顔付きに。そして全体的に肥大化して、完全な男性型へと変貌してしまった。


 その見た目は、僕が大昔にはまり込んで遊んだ某ダンジョン物のRPGに登場した上級悪魔に似てる。経験値稼ぎの養殖とか流行ったらしいね。


「その容姿通り、女扱いしてやろうか」


「いえ、普通に男なので結構です」


 するとまた女性型に戻る。忙しないね。


「取り仕切らせている者が男でな、たまには男側に回るのも良いかと思うたのだが」


 嫌だよ! 同じ男を相手にするんだから、あの悪魔相手にやってくれれば良いのに!


「嫌そうな顔をするものだ。仕方ない、この姿で相手しようではないか」


「だからしませんって! 僕はここを消し去るために来たんですから!」


「ほう……。我らの領域が二つ奪われたと聞いたが、そなたの仕業か?」


「そうですよ!」


「……これは面白い。ならばそなたは我らの天敵。その魂を食らい、格別にもてなしてやるとするか」


 ぞくっとさせられる程に艶っぽい声と妖しい笑みで核は言う。そして両手の爪を鋭く伸ばす。


 戦闘態勢に入った。こちらも剣を構えてきっと睨み付ける。


「うふふ、ぞくぞくするぞ? その肉体から魂を抜き取り、たっぷりと嬲ってやろう。男としても、女としても」


 うひい。


『情けない声を出……してはおらんか。だが、気圧されるでないぞ』


 わかってるって。それに急いで倒してしまわないと、魔物達が駆け付けて来てしまうからね。


 でもまさか、こんな事になるなんて……。いつも通り魔力での戦いになると思ってたんだけどな。とりあえず持って来た魔力は口の中へ。補給には使えるよね。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  名前 ラン

  種族 ハーフエルフ

  性別 男性

  階級  四


  筋力  六

  敏捷 一六

  魔力 二〇


 魔導器 強化属性剣

  魔術 魔力操作   魔力感覚


  技術 看破     識別

     軽業     跳躍


  恩寵 旧神ナルラファリア


  ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ