また黒タイツか!
用意された部屋は三階の大きな一室。ボイド家が利用するとの事で、この三階は貴族用に整えてあるそうな。
つまり、かなり豪華。ベッドは大きいし内装は綺麗だし湯も使えるしと素敵な部屋だ。
二人で浴室を覗くと、やっぱりお湯を作る魔道具が仕掛けてあった。蛇口じゃない。でもシャワータイプだ。
「ふ、ゆっくりしてくれい」
店主さんはにっと笑って、鍵を置いて戻って行った。魔力反応はあたし達二人だけ。とは言えファリアもいるから、二人きりってわけじゃないね。そう思うと、少しは気楽になれる。本当の二人きりなんて無理よ無理。
『この娘ならば少しは気安かろうに、難儀な奴だのう』
それはまあ、多少は? 年下過ぎるから、気を遣っちゃうんだよ。それに伯爵令嬢でもあるしさ。
「セブン、先に浴びちゃいなよ」
「……わかった」
女性を先にするのは最低限のマナーだよね。紳士として当然の
『紳士とはな。くっくっく……』
ええ紳士ですとも! 何か問題でも!?
……まずはこの格好かな。
二人とも湯を浴びてさっぱりしたら、少しお喋りしてログアウトした。もう良い時間になってたからね。
ベッドに起き上がってswivelを外し、身体を伸ばして一息。
「今日はこちらに戻るのだな」
「リーフに合わせておいた方が良いですからね」
こちらでもお風呂に入ろうと支度を始めたところでスマートフォンがメールを受信。差出人はリーフだ。
「日曜は大丈夫かな。あっちの用事、終わる?」
約束の事を心配してるね? タリス様の事は長引かせるつもり無いかな。明日の夜に下見して、行けそうならそのまま実行する。厳しそうなら一旦戻り、しっかり対策してから明後日に実行。
その後の事は任せてしまえるはずだ。と言うか、僕達に出来る事なんて無いでしょ。
だからタリス様さえどうにか出来れば、僕達は何を気にする必要も無く日曜を迎えられるって事。
「頑張りますよ! 明日明後日で終わらせて、すっきり日曜を迎えましょう!」
「うん。日曜は、何時から大丈夫?」
「お昼からなら大丈夫ですよ」
「それじゃ、何処かでお昼食べよう」
などなどと、少しずつ日曜の予定が決まってゆく。町を散策して歩こうという話になって、何処のデパートは面白いとかそこのお店は覗いてみたかったとか、寄る場所の目星もある程度付いた。そうして気付けば日を跨いでいて、お互い明日に障るからと名残惜しさを感じながら終わりとした。
緊張よりも楽しみな気持ちが勝ってて、日曜がすごく待ち遠しい。
あ、着てく服を決めておかないと。
そうして仕事から帰った夜。今日のログインは若干遅め。部屋にはセブンが来ていて、僕……あたしね、あたし。ああもう……。で、あたしを待っててくれてた。
寝巻きから地味装備一式に着替えたら支度は完了。もちろんあたしのもセブンのも浄化は済ませてある。素晴らしいチョーカーをありがとう、名前も知らないPKさん!
朝食には少し遅い時間だけど、酒場に顔を出せば食事が出て来る。量はしっかりめ。
「金はブランドン様から受け取ってる。気にせず食って、泊まってくれや」
ありがたいお話で。好意に甘えて、ここを利用させてもらおうね。
美味しくいただいたらお礼を言って宿を出発。目指すは城塞だ。
近くに向かう道中でも、警備の厳しさがよくわかった。遠目に眺めた時点で兵士の数が違ってたし、閉ざされた門の周辺に着けば見張る兵士の引き締まった様子が窺える。見上げた防壁は見せてもらった絵そのままに高く、やっぱり手のかけられる用な凹凸は無い。
徹底した警戒態勢。聞いていた話の通り、表側は無理だね。
魔力感覚へと意識を向ける。すると奇妙な感覚だった。その範囲に魔力が留まってて、他より濃いと感じる。踏み込んでみると、一切を感じられなくなった。魔力感覚が中断させられたんだ。使おうとしても発動しない。それは魔力操作も同じで、柄を動かそうとしてもぴくりとすらしない。
魔導器や端末は普通に出たままだし剣は試せないけど端末は機能を失っていないから、本当に魔術だけを阻害してるみたい。面白いなあ。
城塞付近を端から端まで眺めて歩き、その位置を確認する。情報は正しく、出入り出来る付近にだけ仕掛けてあるようだ。でも、さすがに中まではわからない。魔力感覚で範囲を感知出来てるから、そこだけ避ければ問題無さそうだ。
侵入するのは夜になってからかな。こんなに明るいんじゃ、幾ら何でも気付かれる。だから今は無理。
そうなると、やる事があんまり無い。ブランドン様のアジトに戻って、服を借りれるか聞いてみようか。なるべく暗い色合いの、夜空に紛れて見辛くなるようなのを。隠密行動するなら多分あるよね。
そう考えて行ってみると、あるにはあった。サイズの合わない物が。またか。
がっくりしてると、居残りになった女性が服を二枚引っ張り出した。
「プレインちゃんなら、この黒いシャツと黒タイツで何とかなると思いますよ?」
これは酷い。
着替えてみた。男性用の大きなシャツを着て、袖は肘の上に紐で留めて長さを調節。腰にホルダー付きベルトを巻いて、ワンピース風の着こなし。下は黒タイツに手持ちにあるお気に入りのショートブーツを合わせる。
以上! また黒タイツか!
「これは、危険ですね……」
「…………」
「無言でめくらないで!?」
セブンも何だか、最近行動がはっちゃけてない? 馴染んでくれて嬉しいけど、ヒルダ様とか参考にしちゃ駄目だからね?
……とりあえず、夜はこれで行こう。顔を隠す黒い布は借りれた。マフラーと言うかストールと言うか、そんなの。
「気にせず受け取っちゃって下さい。別に数とか管理してませんし」
「え、良いの?」
「協力してもらうのはこっちですし、これくらい大丈夫ですよ」
との事なので、いただいた。黒シャツとタイツはともかく、ストールは嬉しいかも。
それからは三人で女子トーク……女子? 一人女子じゃないのが混じってますね……。
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名前 ラン
種族 ハーフエルフ
性別 男性
階級 四
筋力 六
敏捷 一六
魔力 二〇
魔導器 強化属性剣
魔術 魔力操作 魔力感覚
技術 看破 識別
軽業 跳躍
恩寵 旧神ナルラファリア
ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一
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