小さな者への気遣いを忘れてはいませんか?
キューブの出た目で即興で物語を作っています。
キューブの目
むかしむかし。眠気職人の村がありました。夜になるとみんなが眠たくなるのは、職人達が眠気を煙突から空へ流して夜に届くからなのです。
しかし、今日はどうしてかおかしいことが起こっていると眠気師のネムムが《顔をしかめて》悩んでいました。
「どうしたんですかいネムムさん? たくさん作らないと夜に間に合わないですよ。早くオラの背中に眠気を乗せて煙突からふわふわと飛ばしてくだせぇ。私の背中が軽くってソワソワしてしまいます」
部下の《羊たち》がネムムに相談します。しかしネムムは首を振りました。
「いんや。オイラも作りてぇけど、どうしてか分からないんだ。何が起こってるんだい? たくさん眠気を飛ばしているのに、今日は全然足りる気がしないさね」
すると静かな鍛冶場にドンドンと扉をたたく音が鳴りました。そして入ってきたのは《水亀座》の伝令でした。
「てぇへんだ! てぇへんだ! 今日の夜はカミナリ様の宇宙ライブの日だったんだ! 地球のそばで大ライブの歌まつりだ! 《雷》が雪崩のように降ってきて、地球中に雲が覆われて雨がたくさん降ってるぞ。誰も空なんて見えないから星座の人たちがわんさかと遊びに行って大パニックになってるぞ! こいつはてぇへんだ!」
ネムムと部下の羊たちは困ってしまいました。ゴロゴロとうるさい雷と、強くたたきつけられる雨の音で人間達は眠ることができないようです。
「どうりでオイラがいくら眠気を作っても足りねぇわけだ。こりゃあ、いくら作っても足りないさね。こりゃあカミナリ様に会って止めにしてもらわないといけんなあ」
そうしてネムムはカミナリ様の元へ行くために《星空の笛》を奏でました。するとふんわりした眠気のようなモコモコ雲がネムムと羊達を包み込んで、ゆらゆらと飛んで宇宙まで飛んでいきました。
そしてネムムはライブで歌っているカミナリ様の元へ飛んでいきました。
「カミナリ様。カミナリ様。お話があるのでごぜぇます。どうか、オイラのお話を聞いてくだせぇ」
「どうしたんだ。おまえはいったい誰なんだ? ははぁ。きっと俺のライブの客なんだな。たくさんの羊も連れて、いっぱい騒ぎに来たんだな。それはけっこう、けっこう」
「違ぇます。まったくもって違うのであります。オイラはカミナリ様のライブを止めに来たのでごぜぇます」
「どうしてだい? ここに来ている星座の皆は喜んでいるぞ。俺の歌をみんなが楽しみにしているのに、それはきっと嘘に違いないな」
わぁっと星座の観客達が騒ぎました。ここにいるみんながカミナリ様の歌を楽しみにしているのでした。
「カミナリ様が歌うと、地球では稲妻が喜んでどんがらがっしゃんと鳴って、雨が大声で騒いでざぁざぁするのです」
「でも、歌は素晴らしいぞ。地球の人間なんてちっぽけなものじゃないか。ここにいるのは宇宙に住むすべての星座達。地球の人間の数と比べると、こっちの方が数が多いからきっと俺たちが正しいに違いないな」
そうだそうだと星座達が声をあげました。せっかくのカミナリ様のライブを皆は中止されないように声をあげてネムム達を否定してきたのです。
「ふふん、どうだい! 今日のライブはとっておきで一日中なんだ。今日のために、楽しみにしている皆のために《魔法の鍵》と《魔法の籠》で、《月》を捕まえておいたんだ」
「なんてこったい! それじゃあ、地球に月は昇らなくなる。夜が無くなってしまうじゃないのさ。地球の人が眠れなくなって大変だ!」
「よく分からないが、それくらい良いじゃないか。星座達は眠らないが、人間達は眠るのか? 星座の方がたくさんで、たくさんが眠らないなら眠る方が間違いに決まっているぞ。人間達の方が間違っていて、俺たちが正しいんだ」
ネムムは困りましたが、ここで止めてしまっては説得できません。ネムムは言い返します。
「そうだ! カミナリ様はピーナッツが苦手でやしたよね?」
「んん? ああ、そうだ。あれを食べたら目玉がかゆくて、腕がかゆくて、体中がかゆくて仕方ないね。医者が言うにはあれはアレルギーって言うらしい。気持ち悪くて、喉の奥がぜぇぜぇ鳴って大変だ。もうあんな食べ物なんか食べたくないよ」
「みんなは食べれるのに、カミナリ様は食べれないんで?」
「ああ、そうだ。木の実はおいしい食べ物らしいが、俺の口には合わないね」
「人間にとっては眠るのは大切でごぜぇます。だから稲妻は大きな音が出るので苦手なのでごぜぇます。だからみんなが喜ぶ宇宙ライブも人間にとっては苦手なのです」
「おお! 言いたいことが分かったぞ。そうかそうだったのか。みんなにとって良い物でも、人によっては絶対に駄目なものになるんだな。俺はピーナッツが駄目なのと同じなんだ」
「星座は眠らなくても平気ですが、人間は眠らないと駄目なのでごぜぇます。喜ぶ人が多くても、たとえ困る人数が少なくても駄目なものはダメなのです。カミナリ様。どうかライブは隣の星でやってくだせぇ」
「よぉし分かった分かった。そうだなあ。今日は土星のわっかの上でライブをして騒ごうか。集まってくれた星座の皆よ。それでいいよな。さあ、行くぞ! 今日はずっと騒ごう!」
「カミナリ様、カミナリ様。地球の夜を帰してください」
「そうだったそうだった。ほら、魔法の鍵だ。これで月を夜空へ連れていってあげなさい」
「ありがとうごぜぇやす!」
こうして月が戻ったので地球は夜になり、カミナリ様も別の場所へ行ったので地球は静かになって安心して《眠る》ことができる夜になりました。
宇宙に比べればちっぽけな地球ですが、ネムムは地球のためにカミナリ様に正しい言葉で説得ができたことを誇りに思いながら、今日も眠気を作ります。