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童心の灯火を忘れていませんか?

キューブの出た目で即興で物語を作っています。

キューブの目

挿絵(By みてみん)


むかしむかし。一日中ずっと日が昇らない《夜の国》がありました。

《時刻》は午前4時。《影猫》と呼ばれる影の中に入り込める猫種びょうしゅ、名前はクロクロという子供の猫がいました。クロクロは好奇心が強くて、朝の国と夜の国の国境まで冒険することにしました。

クロクロが進んでいくと《黒霧の森》がありました。大きな森の木陰のせいでまるで真っ黒な霧がかっているように先がまったく見えない森です。でもクロクロは影猫なので暗いところでも何でも見える猫目を生かしてどんどんと森の奥まで入っていきました。すると《朝のように真っ白な杖》を森の中で見つけました。


「わあ。これが光ってものなのかな。初めて知った。これは光の色に違いない。光には色が付いているんだ。これは森の財宝に違いない。宝物にしよう」


夜の国では見たことも無い色を気に入ったクロクロは上機嫌で杖を背負って探索を続けることにしました。

ずっとクロクロは森を探索しましたが、朝の国と夜の国の国境が全然見つかりません。こまったクロクロはふと白い杖があることを思い出して杖を振ってみました。

すると魔法の杖はお日さまのように輝きました。すると森の木々がずるずると音を立てて光に流されて、《国境の塔までの道》ができました。

そう。真っ白な杖は国境の塔までの道を開く鍵だったのです。

塔を登っていくとそこには黒色と白色の《二枚の仮面》がまるで生きているかのようにふわふわと浮いていました。それぞれの仮面は名乗り、黒色は夜の番人と。白色は朝の番人と名乗りました。

夜の番人は言いました。


「これこれクロクロ。ここは夜と朝の狭間だぞ」


朝の番人は言いました。


「クロクロは影生まれだから駄目だぞ。朝なんて見たら溶けてしまう」


二人の番人は声を揃えてクロクロへ言い渡しました。


「「太陽なんて君には似合わない。影で生まれて影の中で死ぬのがキミの正しい生き方なのだ」」


たしかにクロクロは夜の国の住人で、朝の国に行ってしまうと蕩けてしまうと何度も言い聞かされていました。だけど、クロクロは言い返します。


「ボクが欲しいのは命では無い。ボクが欲しいのは自由なんだ。自由が無い世界になんて生まれる意味はあるのかい? ボクはそうとは思わない。このまま自由が無いのなら生きていないのと同じだから悲しいじゃないか。だからボクは自分の命なんて惜しくは無いんだ。どうにかボクに朝の世界を見せておくれ」


番人達は困ってしまいます。


「我々もキミを困らせたいわけでは無いのだぞ。だけどそこまで言うのなら、ちょっとだけ見せてあげよう」


そして朝の番人は《リンゴ》をポイッと塔の窓まで持ってきました。


「キミはこのリンゴの影に隠れるんだ。ぜったいに影から出てはいけないぞ」


そして夜の番人はクロクロの顔にピッタリとくっつきました。


「キミは仮面越しで世界を見るんだよ。ぜったいに仮面を外してはいけないぞ」


そして番人達がクロクロを窓まで導きます。


「ほら始まるぞ。新しい世界が初まるぞ。一日がはじまるぞ。急げや急げ。ほんの一瞬だけだぞ。見たらすぐに目をつぶるんだ。すぐに国へ帰るんだぞ」

「分かったよ。見たらすぐに帰るよ」


パッと白が差し込みます。刹那せつなが煌めきました。クロクロは初めて『眩しい』という言葉を知りました。

朝と夜が交差する瞬間に番人達が言いました。


「ほら見ろクロクロ。今日はとても良い日だぞ。この一瞬がとても綺麗なんだ」


クロクロが目をこらすと、そこにはこの世の物とは思えないほど華やかなものが広がっていました。


「番人さん。あれはなんだい?」

「あれは《虹》って言うんだよ。上から赤色。隣は橙色。黄色に緑色に、青色に藍色。最後のは紫色だ」

「朝の国って色があるんだ。ボクは知らなかったよ」

「ほら、夜の国の住人はもう帰りなさい。これ以上見たら目が潰れてしまうぞ」

「うん、分かったよ。綺麗だけど大変だ。もう目がぴおぴおとかゆくて、とろけてしまいそうだよ」


番人達は笑ってクロクロを夜の国へ帰しました。


こうしてクロクロの朝と夜の冒険は終わりました。

そして今、クロクロは次の冒険の準備をしています。彼が生きている間はずっと冒険が続くのです。分からないものを知る喜びを知ったクロクロ。自由を知って大人になったクロクロ。あの日に見た虹のキラキラした思い出が、クロクロの心を灯し続けるのです。


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