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二種類の人達

コントロールできない激しい怒り。抑えようとしても、抑えきれない憤り。



大切に思っていた友達とはこんな程度のものだ。


助け合うなんてバカらしい。


友達なんて物は表向きだけの関係だ。


心の中では助け合おうなんて思ってないんだ。


あいつらは裏切る。


信じたって意味がない。


怒りにも、憎しみにも似た気持ちがこみあげてくるまでにそう時間はかからなかった。


友達を何より大切にしてきた私にとって、その心境の変化は今思うと非常に恐ろしいものだったと思う。あのまま突っ走っていたら、きっと今は誰かが助けてと言っても「どうせ裏切る奴らに助ける必要なんてない」と傾いたままだったと思う。


人間の心はいとも簡単に腐ってしまう。





一方で、そんな風に私が全てを敵だとでも認識し、全てに怒り、拒否せずに済んだのは皮肉にも友達のおかげだった。


「今まであんなに一緒にいて、相談にものって、あんなに仲良くしてたのに何!?結局その程度じゃない!友達なんて信じた私がバカだった!ふざけるな!ふざけるな!ふざけるなよ……」


そんな考えに侵され始めていた私にやってきた数少ないメール。



笑顔の写真に名前が入った画像。「これでいい?」と、メッセージも添えて。


「私は◯◯って呼ばれてて、◯◯の話をしたよ。出あったのは◯◯だった。一緒に◯◯もしたよ」


そんな私にやってきた数少ないメール。数枚の写真を編集して一枚の画像にし、名前だけじゃなくメッセージもくれた友達もいた。


皆が手のひらを反して私を追い詰めれば楽だっただろう。私は何も信じずに、それは他者に期待をしなくなり、傷つくこともなくなるのだ。こうして泣くこともなくなるのだ。


友達は私を悲しませ、私を支えもした。



私は送られてきた数少ない友達の写真を見た。


一枚。


この子はいつも忙しかった。それなのに送ってくれた。


一枚。


こんなに色んな時期の写真を編集してくれて、時間がかかったろうに。


一枚。


この子は画像に自己紹介を入れてくれてる。私が忘れてしまっても、困らないように……。


その写真がぼやけてきて、私は喉の奥が痛いような感覚がした。


中には「自撮り恥ずかしすぎて白目になってもた(笑)」のようなメール。


「アホだなぁ……ホントに、白目むいてるし……」


本当に画像は白目をむいていたけれど、その画像には笑ってしまった。


「ちゃんとした、顔が、分からないじゃないか……」


私はそう言いながら顔を両手で覆った。指の間から涙が溢れた。



ありがとう。


ありがとう。


本当にありがとう。


感謝がただただあふれてきた。嬉しくて、嬉しくてたまらなかった。


ダムが決壊したみたいだというけれど、本当にその通りだった。もう一度画像を見た時には、ほとんど見えなかった。次から次へ、目からぼたぼたと涙が落ちていった。


「忘れたく、ないなぁ……」


その言葉を口に出した時、視界が揺れた。


「私、忘れたくない……」


私の傍にいてくれる、少ない本当の友達。記憶が日々消えていく中、明日、明後日、この大切な人達を覚えていられる保障はどこにもなかった。


私は皆を憶えていられるのか?


私は皆の名前を憶えていられるのか?


私は皆と笑い合ったことを憶えていられるのか?


もしも神様がいるというのなら、どうか、どうか、私の大切な記憶を奪わないでください


その日、私は携帯を抱き締めて号泣した。


この時写真を送ってくれた友達を一生大切にすると心に決めた。



今になって思う。私はただ純粋に自分のことで手いっぱいだったのだ、と。

私の「友達」。

この場を借りて言いたい。


ありがとう、傍にいてくれて。

ありがとう、支えてくれて。


私は今皆の優しさのおかげで笑って生きています。

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