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湯グラドルしる  作者: 織田 涼一
第1章:聖女が事件を連れてきた
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お風呂に注意☆

湯船の前に置かれたステップに立ち、ラルメールは静かに息を飲んだ。

いくら最後に残された光と言われても、身体が反応してしまう熱さや寒さは本能的な危険とも言える。

デリアは私を止める為見ていなかったが、こちらからメルディのリアクションはしっかり見えていた。


「ラルメールさま。やはり、違う手段を考えませんか?」

「フラウ司祭、何か手段があるのですか?」

「それは、司教さまに相談をしてみないことには……」

「司教に相談した時点で、【最後の祝福】を使うでしょう。そうなれば……」


フラウの言葉が止まる。【最後の祝福】とは、この世界に召喚されたのが【聖女】の場合、命を賭して祝福を行う儀式だ。

もし【聖女】に癒しの力がある又は目覚めた場合、儀式を行った者は助かる確率が上がり、【聖女】を祝福した者として【聖者】の列に並ぶことになる。【勇者】が召喚された場合、祝福を行って命を落とすことになる。

一か八かで国内から【勇者】や【聖女】を選出し、神殿の高位責任者に「このままだと皆死んでしまうので、先に祝福で命を賭けてください」とは言えない。


「時間がありません。メルディ」

「はい、ラルメールさま」


羽織ったバスローブを再び脱ぎメルディに渡すと、意を決して湯船に足をつけた。

動きは堂々としているのに、足先はそーっと入れるところが、正直な反応だったようだ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「んっ、んんんんん……」

「ラルメールさま!」

「問題……ありません」

「申し訳ありません。聖女さまは、肩まで浸かっておりました」

「待ち……なさい、今は動けませ……ん」


静かな水面が波を打ち、熱さが痛みにも似た刺激を容赦なくラルメールに打ち付ける。

波紋が落ち着くまで微妙な体勢で止まり、更に動いた後また止まる。

このままでは持たないと、ラルメールは一気に腰を下ろし。緩い体育座りのように肩まで浸かる。

その瞬間、ラルメールの真上に赤い円形のものが現れた。魔力が具現化したものだと、ラルメール意外気がついた。


「針が動いているようです」メルディの言葉は、ラルメールには届いていない。

動かないことに集中しているのか、ラルメールは微動だにしなかった。

『どれだけ浸かればいいのか?』『聖女さまは限界で出たはずだ』いろいろな事が頭に浮かんでは消える。

1分・60秒・60000ミリ秒、時計というよりかはストップウォッチに近いが、その存在を知っている者はここにはいなかった。

一秒が二倍に感じ、二秒が四倍に感じる。時間感覚があやふやになり、ラルメールはひたすら時間が過ぎるのを待った。


「メルディ。何やら波打っていませんか?」

「はい、デリアさま。おかしいですね、聖女さまの時はこんな動きは……」

「神さまが、お認めになっていないのでしょうか?」


湯船では目まぐるしく状況が変わっていく。最初は小さな波紋程度だったのが、寄せては返す波になり、今ではラルメールの周りが少し水深が下がって回り、その外周が高くなっている。

上部を見ると、赤い枠の中で動いている針が丁度上下一直線になっていた。再び同じ位置に戻るとしたら、今はまだ半分にしか到達していない。これ以上の変化に、ラルメールの無事を保障出来ないと思ったデリアは、この【洗礼】から救出することを決意した。


「ラルメールさま、ラルメールさま!」

「……今は声を掛けないで」


目を瞑って必死に耐えているようだけど、既に限界を超えているのは誰が見ても明らかだ。

デリアはメルディにステップから離れるように言い、ラルメールに呼びかけながら手を伸ばす。

何故、この手が届かないのだろうか? 声は届いているようだけど、時間の感覚も曖昧なのが分かってしまう。

段々声が大きくなり、最後には怒声にまで発展した時、ラルメールは目を開いた。


「デリア!」

「ラルメールさま、これ以上は……」

「なりません!」

「姫さまを見殺しにしたとなっては、【魔族の王】より先に国が混乱します」

「後、少しだけ……」

「姫さま、手を伸ばしてください」


一瞬、逡巡した後ラルメールは手を伸ばした。デリアはラルメールの手首を掴み、引き上げようと試みる。

ところが、ラルメールはまだ迷っていたので、思わず少しだけ抵抗してしまった。

引き上げるはずが、何故か引っ張られる力が強く出ていた。

体勢を崩したデリアは、上半身から浴槽に突っ込んでしまった。


「デリアさま!」

「ラルメールさま!」

「ゴボゴボ」

「デリア!」


一人がゆったりと入れる浴槽も、二人となると密集地帯となる。

しかも重心も定まっていない女騎士と、出ようにも出られなくなったラルメールでは動くに動けない。

メルディは暴れるデリアを、胸いっぱいに魚を持つような感じで、残った下半身をしっかり持って引っ張った。

もんどり打つような形で、デリアが石畳に倒れこみ咳き込んでいる。

メルディは続けて救出を決意し、ラルメールが身を乗り出したので、問題なく救出することが出来た。


フラウは最後まで、注意深く観察していた。

救出の間も針は時を刻み、上下だった針が真上で重なり合っていた。

ラルメールの肌は真っ赤で、深い呼吸をして落ち着こうとしている。

メルディはラルメールに抱きつかれたからか、上半身を中心に湯で濡れていた。


「フラウ司祭。わ、私達は何か変わりましたか?」

「ラルメールさま、湯の光量に変わりはありません」

「それでは……」

「召喚された【聖女】さまや【勇者】さまも、この世界の力に馴染むまで時間が必要だと聞きます」

「では、まずは関係各所に連絡をしましょう。【召喚の儀】の失敗と、人に出来る対策を!」


【召喚の間】は、しばらく封鎖されることになった。

今後は騎士から冒険者から神殿からと、対策チームが結成されるだろう。

ラルメールは夢を見る。国の平和を守るのが王家の務め、ならば抜けても問題ない者が立ち上がるべきだ。

力が無ければ許可は下りないだろう。ラルメールに変化が起きたのは三日後だった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


『仙道 柚葉のさしすせそ』


プロフィール

仙道 柚葉23歳


 このブログは柚葉の公式ブログで、所属事務所が管理しています。

画像の撮影者は、自撮りかマネージャーが多いかな?

目指せ雑誌の専属モデル。歌も女優も出来るマルチなタレントを目指しています。応援よろしくね。


11月12日

【画像】


 報告します、倒れちゃいました。

あ、全然元気だよ! ちょっと張り切りすぎて疲れがでたのかな?

会社からは休みを取りなさいと言われたので、田舎に行ってゆっくりしてきます。

M君もいるかな? リミアについて相談があるので、少し楽しみです。


リミアについて知りたい人はこちら。

http://www.×××


ちなみにお仕事は『熱湯リレー』という動画で、こちらから見られるよ。

チャンネル登録をしてくれたら嬉しいです。

画面の端にある私のアバターと一緒の赤いビキニ姿が・・・、違うのに変えたんだった。

画像は水着を着用していない時のバスローブ姿だよ!


コメント

1 ケルベロス(Lma)

ウォン!


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「柚姉、大丈夫かな?」

「まことー、何か言ったかい?」

「じいちゃん、大丈夫―。今日は何を収穫するの?」

「今日は白菜とかぼちゃだな。肉が食べたかったら、スーパーで買ってきておくれ」

「うん、収穫が終わってからね」


軽トラに乗り込む祖父母の後を追うように、まことは原付バイクに乗りヘルメットを被る。

柚が来るとなると騒がしくなるなと、まことは少し昔を思い出していた。


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