表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
湯グラドルしる  作者: 織田 涼一
第2章:聖女とダンジョンアタック
27/27

群れを成す

 宙を掻くように、ゾンビがこれ以上いけない地点で、更に前に行こうとする。

今なら安全だと、柚が『レーザー』の魔法で焼いていく。

貫通力がある魔法のようで、直線状にいるゾンビの腕が吹き飛んでいった。


「柚さん、やりますね」

「マネージャーも働きなさい」

「良いんですか? 殲滅しちゃいますよ」


 二人が盛り上がっている中、注意深く周囲の確認を怠らない。

何か違和感があるような……、そんな感じが拭えないでいた。


「まことくん、これって……」

「場所のせいでしょうか?」

「その可能性もあるよね。どちらかと言うと、VR物の環境設定かリアリティー設定とか」

「二人とも何を話しているの? えい!」


「柚さん。『えい』じゃなく、折角の魔法なんですから……」

「段々だるくなってきた。それよりリアリティーって、グロいのは変わらないんですけど」

「柚さま。お疲れでしたら、一旦下がりましょうか?」

「ううん、メルディ。大丈夫よ」


 やっぱり、佐々木さんは気がついていたようだ。二階に降りてきてから、生暖かい風というのは若干感じていた。

ところが腐肉というか腐敗臭というか、火で燃やされているのに、そういう煙が異臭を放っていなかった。

もしかすると、あのカリカリやっている先では、ひどい臭いなのかもしれない。

でも、ビジュアル的グロさはひどいものがある。柚のレーザーで飛ばされた腕が、後ろのゾンビの食事になり、そこに群がるゾンビ・ゾンビ・ゾンビ……。火の壁も、時間経過とともに燃え尽きるが、ゾンビの量は減った気がしなかった。


「これは、俺を踏み台に……」

「佐々木さん、それは初代? そうじゃなくて、『俺の事は良いから、先に進め』じゃないですか?」

「悲鳴を上げても、振り向かないでいられる?」

「多分無理でしょうね。そして、全滅っと」

「じゃあ、作戦を練らないとだね」

「そうですね。あ、柚姉。申し訳ないんだけど、使える魔法は全部試して」

「後は『聖なる守護円』だけだよ」

「じゃあ、それを試してから撤退をしましょう」

「分かった。えい!」


 どうも、詠唱が必要なのはヒールだけのようで、『えい』という締りのない言葉で魔法が発動される。

魔法の詠唱問題は置いといて、魔法名を叫ぶ利点を後で教えないといけないと思った。

火の壁がなくなり、視界がゾンビ以外良好になったので、少しだけ離れた位置に置いて貰う。

すると、『聖なる守護円』の効果は絶大だった。


「あー、ゾンビが群がっていくね」

「これって、誘蛾灯ゆうがとうみたいな感じでしょうか?」

「こっちを向いてたモンスターが、振り返って光の柱に焼かれにいってます」


「後は効果時間……かな?」

「リポップを見る為に、マーカーは無理ですよね」

「コンビニに置いてある、カラーボールでも調達してくる?」

「多分、難しいでしょうね」


 佐々木さんが腕時計で測ったところ、効果は5分くらいだった。

ただ、あの円は全員が入るには小さいし、効果時間が切れた瞬間埋もれる未来が見えてしまう。

効率的に何箇所か時間差で設置して、部屋の調査もしくは次の階段探しに移っても良いかもしれない。

「いっそ、灯油でも撒く?」と言った佐々木さんに、「ダンジョンを攻撃したら、大変なことになります」とメルディが助言する。そもそも、田舎でも大量に灯油を買うと、目をつけられるかもしれない。


「じゃあ、今日は戻りましょう」

「「「はーい」」」


 一階に戻り、少ないスケルトンを掃除してダンジョンを出る。

一階の脅威度を考えると、二階に割いているリソースのアンバランスさが伺える。

魔法の訓練ということで、あのゾンビで経験値を上げたらどうかと提案してみたら、メルディからそれは止めた方が良いと指摘をされた。どうやら、一箇所で無意味にダラダラ狩っていると、名前つきモンスターが発生するようだ。

この一箇所で無意味にが厄介なようで、場合によっては一匹でもトリガーになるらしい。


「ネームドって奴だね」

「佐々木さん、ノリノリですね」

「だって、ドロップ品も期待出来ないかな?」

「そもそも、ドロップ目当てでやってないじゃないですか。却下です、却下」


 少しがっかりした佐々木さんをよそに、名前つきモンスターが通常個体と、どれほど強さが変わるか質問をした。

しかし、メルディの答えは「分かりません」としか言えないそうだ。

某ゲームの雑魚キャラであるスライムで例えると、ノーマルがベスになった程度らしい。

スライムも世界観によって強さは変わるが、スライムを倒せるならば概ね誤差程度のようだ。

ところが、これがゴブリンになると変わってくるらしい。職業や役職持ちなら誤差で済むが、地位になってくると別の個体と考えた方が良いようだ。ロードやキングとなったら、引き連れる雑魚も含めて災害級にまで及ぶらしい。


「今の僕達なら、一匹相手だと良い所までいけると思うけど……」

「この木刀じゃ、魔法を掛けても心許ないですよ」

「そこはほら、まことくんの騎士パックで」


 少し考えてみたけれど、正直一階二階は雑魚だ。

下がっていっているので地下と書くべきだけど、面倒なのでそれは割愛しよう。

もとい、出てくる敵がアンデットなので、敵の姿が判明すればやりようがある。

不幸中の幸いか、まだお化け系が出ていないので、物理で押せているからだ。


「佐々木さん。もし次の階層に行けたとしたら、何が出ると思いますか?」

「怖いのはゴーストかな? レイスとか物理が通じない奴」

「そんなのが出るの?」

「柚さん、あくまで可能性です」


 佐々木さんの予想は、次第にエスカレートしていく。

中身が空っぽの包帯男マミーや、特殊なギミックがある吸血鬼バンパイヤ

力押しで来るならフレッシュゴーレムも、アンデットと言えばアンデットだ。有名なのはフランケンシュタインで、「優しく、フンガーと言ってきたりして」という佐々木さんは、多分年齢を誤魔化していると思う。


 何も西洋にこだわる必要もない。

柳に幽霊のように、和風なら「うらめしや」もその一つだろう。

足がない分、どうやって移動するとか攻撃してくるかは分からないが、怖いものは怖い。

中国でいうと、足を揃えて飛ぶ死体もいるし、世界各国でそういうモンスターは存在する。


「とりあえずは、二階の攻略かな?」

「そうですね、少しずつ準備を整えましょう」


 佐々木さんの提案に、みんなが頷く。

まだ出来たばかりのダンジョンなので、脅威が実感出来ないでいるのは確かだ。

しかし、階層を隔てる何かの存在に、しばらくは放置してても問題ないと思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ