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湯グラドルしる  作者: 織田 涼一
第2章:聖女とダンジョンアタック
19/27

調査

 祖父母に相談し、土日はメルディさんを案内するという目的で、四人で行動することになった。

朝早くからおばあちゃんが弁当を作ってくれたので、ありがたく受け取る事にする。

ボストンバックに色々な物を詰めて、最後に木刀を手にした。


「佐々木さんは、メモをお願いします。柚姉とメルディさんは、動きやすい服装で」

「これって、事前に防弾チョッキとか、用意すべきだったのかな?」

「まだ危険があると決まった訳じゃないです。防弾だろうが防刃だろうが、巨人やドラゴンが出たら一発でアウトですよ」

「最初はゴブリンが良いよね。最初からドラゴンとかフェンリルが出ると、『ゲームバランス悪っ』って思うよね」

「もし仮にゴブリンが出ても、油断しないでください」


 ダンジョンに入ると仮定した荷造りも、あれもこれも足りないと思えてくるから怖い。

懐中電灯に電池で動くランタン。手回し式のラジオっぽいものから、ペットボトルに数本の水。

簡易応急セットに、ブランケット。ビスケットやゼリー状の栄養補助剤などなど。

後は、『明日ダンジョンに行くんだけど、何持っていったら良いかな?』と質問できる場所に投稿したら、胸に分厚い雑誌を仕込んで行けと言われてしまった。これは、何かのフラグなのだろうか?

今日は調査をメインにする為、危険には極力関わらない方針で行くことにした。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「ここだけ崩れてるね」

「柚さん。危ないので、なるべく下がっていてください」

「まことも下がってて。マネージャー、よーく調べるのよ」

「佐々木さん、気をつけてください」


 「優しいのはメルディさんだけ……」と呟きながら、佐々木さんは色々調べていた。

横穴は出入り口だけ埋まったような感じらしい。前回は一番奥まで行かなかければ魔力を感じられなかったけれど、今回は埋まった場所まで魔力が届いていたようだ。その甲斐あって、鑑定で状況を確認することが出来た。

その出入り口は拳大の石がみっちり詰まっていて、振動を与えると崩れそうな感じがする。


「ここで、スキルが使えるかな?」

「マネージャー、そんな崩れそうな壁の近くじゃ危ないよ」

「うーん、そうですね」

「この奥がどうなっているか、気になりますよね」

「問題はどうやって入るか……かぁ」


 そんな事を話していたら、メルディが出入り口まで近付いてきた。

やっぱり、この世界とあちらの世界では何か違うものがあるのか、危なげない感じで石壁に右手を添えていた。

調査をしようと思っていた自分と、いまいち危険度を理解していない柚では、メルディの動きに対して反応が違っていた。

だから慌ててメルディに近付いた柚は、メルディを出入り口から引き離すことに意識を取られていた。


「柚姉、急に近付いたら」

「あっ……」

「柚さーん!」


 柚がメルディの肩に触れた瞬間、二人は石で塞がった出入り口をすり抜けて、あちら側に行ってしまった。

叫んだまま固まっている佐々木さん。ただ、これでメルディと柚が持つ、何かのスキルが発動したんだと確信できた。


「まこと君、どうしよう? 柚さんが、柚さんがー!」

「もう、マネージャーうるさい」

「あの、ただいま戻りました」


 メルディの肩に両手を乗せた柚が、電車ごっこみたいな感じで戻ってきた。

二人は思ったより落ち着いていて、とりあえず中が凄いことになっているので、見に行こうと言い出した。

佐々木さんは車に戻ってボストンバッグを腕に通し、自分は木刀を持って前の人の腰に手を添え、メルディさん・自分・佐々木さん・柚の順番で向こう側に行けるか試すことになった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「うっわぁ」

「当たり引いちゃいましたね」

「ねえ、ここって二人が言ってたダンジョンなの?」

「はい、間違いありません」

「まずは、出入り口の確保をしましょうか。一旦外に出ましょう」


 この場所は、一般的なコンビニの売り場くらいの広さがあった。

ただ外への出入り口は、こちら側から見ても石が敷き詰まったような壁っぽくなっている。

何かの拍子に崩れたり、外に出られなくなったりしたら目も当てられない。


「折角中に入ったのに、もう出ちゃうのかい?」

「佐々木さん。とりあえず崩れないように、壁をどうにかしましょう」

「じゃあ、荷物はここで良いよね?」

「はい、ボストンバッグは置いて行きましょう。短時間で吸収されるなら、このダンジョンに入ること自体危険ですから」


 同じ列で並び、電車ごっこのようにメルディさんを先頭に外に出て行く。

この壁をすり抜ける感覚は、某ハ○―ポ○ターを思わせる。

一瞬の出来事なのに、世界を隔てる壁を越えるイメージだった。


「えーっと。この壁は通り抜けられるものとして、とりあえず固めちゃえばいいのかな?」

「そうですね。さて、どうしましょうか?」

「多分だけど僕のスキルか、まこと君のスキルになるよね。等価交換の漫画でいけば、練成でいけるんじゃ?」

「佐々木さんって、王道ものも見てるんですね」


 錬金術は昨日解散した後に調べてあった。一般的に錬金術と言えば、『ゴールド』を作るのを目的とする学問だ。

胡散臭い魔術でもなければ、眉唾な作り話でもない。それは物理や化学といった、普遍的な学問の一つとされている。

ところが、ここに『不老不死』や『賢者の石』という単語が混ざってくると怪しくなる。

そして、その研究の過程で『人造人間ホムンクルス』が出てきて、胡散臭い魔術として広まったんだと思う。


 等価交換とは言いえて妙なもので、例えば水を電気分解すれば水素と酸素が発生する。

水が水素と酸素から出来ているんだから、それは当たり前の事であり、きちんとした知識があれば分かる話だった。

ちなみに占いは統計学が過分に含まれていて、良いことだけを信じる又は悪いことは気をつける程度ならば、害はない学問のはずだと思う。

二人が持っているスキルで、関係ありそうなものは【付与魔術】【属性の壁】【錬金術】だった。

ちょっと触ったくらいでは崩れない。ただ、少し前に地震があったので、安心するのには不安要素があった。


「メルディさん、スキルってどう使うんですか?」

「はい。私もあまり意識はしていませんが、体の一部に意識を集中したら使えました」

「僕の場合は目かな? 今なら【鑑定】も結構な精度で出来ているよ」


 以前メルディが触れた場所に意識を集中して、右手を石壁に添えてみる。

今はメルディも柚も離れているので、あちら側にすり抜ける事はない。

佐々木さんも同じように、目を閉じていたようだ。


「うん。まこと君、なんとなく出来そうかな?」

「じゃあ、そのまま固定してみてください」

「付与魔法【結束】ってところかな?」


 五分くらいの時間を使って、佐々木さんは壁を固定出来たようだ。

手をグーにして軽く石の部分を叩いてみても、崩れそうな気配はまるでなかった。

とりあえず、崩れる心配もなさそうなので、改めて中の探索に入ることにした。


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