魔女と占い師1
此処ぐらいしか楽し気な所がない…ちょいシリアスに進みます。
――まずい。寝坊した。
空に煌々と輝いている太陽。窓から外は人々が楽し気に行き交っている。絶望的な気分で壁に掛けてある時計を見れば昼を指示していて私は小さく悲鳴を上げ、また布団をかぶった。
だって。夢だ。これは。眠れば起きる。などと分けの分からないことを考える。振るえる肩。そうだ病院に行って何か病名を付けてもらえば――。
「残念。もう遅い」
ギシリ。軋むベッド。声に視線を動かしてみればスカイブルーの双眸と目があった。
――笑っていらっしゃる。笑って。目が笑ってないけど。
サラリと青銅色の髪の毛が頬に一房落ちてまるで叩かれているような気分になった。ひいいっと声にならない声を上げて私はベッドから飛び降りる。
ジワリと涙が浮かんだ。
「ご、ごっごめんなさ……」
「待ったんだけど、俺。すげぇ待った。新記録っと思う程に」
厭味ったらしくエスは『うんうん』と頷いている。だから、ごめんなさいって。
いつもりカッコいいとか褒めればいいのか……確かにおしゃれしているようで、キラキラしている様に見えるけれど――でもそんな言葉なんて出てこなかった。
『はぁ?』とか威圧されたら嫌だし。此処はしたてにでるしかない気がする。
「うっ、ごめんなさい」
「大体誘ったの華羅だよな。――人形劇来てるから行きたいっていったの。信じられない。全然来ないと思ったら寝てるって」
だって人形劇見たかったんだ。でも一人じゃ淋しいからエスを誘ったんだけど――この通りです。ごめんなさい。
疲れていたので。と言い訳は口から出てくることはない。だって約束破ったのは事実だし。『ごめんなさい』としか言いようがないのだけれど。
「えっと、もしかして楽しみにしてた?」
人形劇。一人でも見てよかったのに――と付け加えたらまた睨まれた。舌打ちまで……。えぇ。
「……寝すぎると横に育つぞ? ただでさえ良く食うのに」
怒り過ぎたためか何なのか、ぴしりと何か的確に踏み抜いて来る。私は顔を上げていた。
「ぐっ。ふっ、太ってないですぅ! 私は太らない性質だもん」
というより魔女が太らない――はずだ。体重は測ってないけど。言うとエスは『ふうん』と小さく呟いてからおもむろに私を抱き上げた。
足が宙に浮く感覚。それが不安で思わずエスにしがみつく形になってしまう。
「重――」
「重くないってば。体重――っ。は、か、るな――っ量らないでください」
お願いします。
声はすごく不満そうで、顔は見えないけれど――その雰囲気は何故そんなに嬉しそうなのか疑問だった。