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01 魔王降臨。


ハローハローハロー!

「召喚されて魔王になりました。」のリメイク!

読んでなくても大丈夫です!

吸血鬼ヒロインが書きたくてこうなりました!







 吸血鬼。それはその名の通り、血を啜る鬼だ。

 近年では、海外で吸血鬼ブームが起きて、以前からゾッコンだった私も再熱してそれは小説からドラマまでどハマりした。世にも美しく、そして血の飢えに葛藤している者。私はそういう吸血鬼に恋していたも同然だった。夢で幾度も見るくらい好き。

 その世界では、滅びた種族。最強の種族でもあったという。

 その世界とは、私に召喚された世界のことだ。

 召喚は、その場に特定の何かを喚び出すこと。

 ベッドに眠ろうとすれば目眩が起きて、ふわりと浮遊感に襲われた。

 気付けば、薄暗い大広間に、座り込んでいる。

 魔法陣の中にいて、私は素っ裸だ。

 肌は陽に当たったことがないみたいに、透き通る陶器のような肌になっていた。とりあえず、大事な部分を隠せば、黒いローブが差し出される。


「どうぞ、吸血鬼様」

「は? え? あ、ありがとうございます」


 わけわからなかったけれども、私はそのローブで変わってしまった身体を覆い隠した。

 青い髪をしている若い男の人だ。でも、角が一つ、右の頭部から伸びている。太い螺旋状の角だった。どうやら人間ではないらしい。


「どういうことでしょうか? 早急に説明をしてください」


 私はローブの下で震えつつも、気丈に言い放つ。


「はっ。誠悦ながら、先ずは自己紹介をさせていただきます。私の名前は、アビゴールと申します。あなた様を召喚させていただいたのは、あなた様に君臨欲しいと切に願ったからです」

「君臨……? 何の話かわかりませんね」

「はい、ご説明させていただきますと、ここは魔物の国です。そしてあなた様に君臨してもらいたい国、名をジョーカーと言います。危機に直面してしまったこの国を救ってもらうために、召喚させていただいた次第です」

 

 ちょっと現実を受け止めるために待ってもらう。でも、すぐに用意された椅子に座り、彼らの事情を聞いてみた。

 次に話してくれたのは、魔物だとわかる容姿だ。大きな一つ目の小鬼。名前は、リセルク。

 世界を救ってもらうべく、異世界から勇者を救う。そんなありがちな物語のネタ。

 この世界の人間達は、危害を加える魔物達を滅ぼしてくれる者を召喚した。彼は人間達を救う救世主となるのだという。

 そんな救世主の存在に、魔物――――つまり、私の目の前にいる彼らは、恐れおののいた。

 ほとんどが腹わたをえぐり出しそうなグロテスクな怪物の姿をしているのに、滅ぼされてしまうとあわてふためき、集まって話し合った結果。

「我々も救世主を召喚しよう!!」となったそうだ。

 魔物には、王はいない。この際だから、魔王になってもらおう。救世主改め、魔王を召喚しよう、という結論に至った。

 そこでもう滅んだ吸血鬼を召喚しようという提案も出たのだという。

 異世界から、自分達を救ってくれる吸血鬼を召喚。

 禍々しい顔立ちで微笑みながら経緯を話してくれるリセルクを見て、私は絶句していた。


「人間が魔物を滅ぼす理由はなんですか?」


 尋ねてみた。

 すると、魔物達は人間に害を加えたことがないと言う。なんでも、別の種族と混合されて忌み嫌われているのだ。同じく禍々しい顔立ちで獣みたいな連中を、魔物達はモンスターと呼んでいる。

 モンスターの主食は人間だという。時々、魔物。

 今まで嫌われていることにしょうがないと割り切っていたが、滅ぼされるとわかりあわてふためきだしたと言うわけだ。

 魔物が魔法を広めた創造者のため、相応しいものを召喚することに成功した。らしい。

 私が果たして、魔王に相応しいのか、謎だ。

 それに私は人間。吸血鬼ではない。

 それは言えなかった。禍々しい顔立ちの魔物達に「違うんです、人間なんです」なんて言ったら、食い殺されるのではないか。そう思ってしまい、怖気付いた。

 勇者の方も魔王を倒すべく――魔王はいると思われている――魔法を学び剣の腕を磨いているのだとか。


「魔王様には、我々の魔法がついております!!」


 勇者に対抗して、私も力をつけるのだと言われた。わぁーと歓声を上げるが、やはり見た目は邪気に満ちている。


「話し合いで解決する気は……あれば、こんなことにはなってないですよね」


 人間側は、聞き耳を持たないらしい。魔物の姿を視認するやいなや、逃げるか攻撃してくるか。

 なんて不憫な魔物達。


「勇者を倒せれば、我々は救われます!」


 勇者さえ消えればいい発言が、さっきから聞こえる。

 わりと見た目通り物騒な連中みたい。

 勇者を倒せば、問題解決ってわけじゃないけど。身を守る術は得るべき。魔法使いたいという好奇心もある。それで逃亡を測ろうか。

 人間である私が説得することも頭に入れつつ、勇者と対抗する力を得ることにした。

 しかし、本当に私でいいのかと問う。


「いいえ! ふんぞり返って説明を求めるお姿、相応しいと思います!」


 リセルクが答えた。

 単に呆然と問い詰めてるだけなんだけど。

 そもそも、召喚は条件に合う者を呼び出すと言う。魔物を救える力が、あるのだと言うのだ。

 次々と私を褒め称えてくる。私をワッショイする魔物達。


「理解出来たでしょうか? お部屋にご案内いたします」

「あ、はい……」


 アビゴールが手を差し出すので、反射的に自分の手を重ねた。

 そしてそのまま誘導されて、長くて広い廊下を歩く。そして巨大な扉の前で一度止まり、手を離された。その手で、アビゴールは扉を押し開く。 

 キングサイズの天蓋付き丸いベッドが、どーんと真ん中に置かれていた。

 他に家具はない。バルコニーがあるだけ。

 それにクローゼットだ。開いたままのそこは、私の一人暮らしの部屋の三倍はあった。クローゼット部屋だ。


「それでは服をお作りします」


 ぞろぞろとついてきた魔物が、前に出た。蛇の髪を持ち、緑の肌をした美女だ。それから、蜥蜴の顔をした女の人。

 ただでさえ布一枚な状況なのに、また素っ裸になれというのか。

 そう思っていれば、クローゼットに畳んで置かれていた布がひとりでに宙に浮いた。黒い光沢の布が、私にまとわりつく。蜥蜴の顔をした女の人が、私からローブを取った。同時に黒い光沢の布が、私の肌を滑る。

 たちまち、スリットの入った黒いドレスの出来上がりだ。下着まで作ってもらった。


「いかがですか?」


 蛇の瞳をした美女が、柔和な笑みで問う。

 いかがも何も、素敵です……。


「鏡を用意しましょう」


 リセルクが言えば、両腕を翳した先に楕円の鏡が出来上がる。ぷるっと震えたから、水か何かだろうか。

 そこに映ったのは、私だけれども、私ではなかった。

 短い髪は白銀で、瞳は真っ赤。ほっそりとしてしまっているけれど、私の顔に身体だ。なんだか吸血鬼らしい。吸血鬼と思われるのも、仕方ないかも。身体のラインにフィットした黒いドレスを着ていれば、余計そう見えた。


「お気に召さなかったでしょうか?」

「いえ、素敵です」


 蛇の美女の顔が曇るものだから、私は微笑んで見せる。


「ただ、もう少し動きやすいものにして欲しいのですが」

「はい、かしこまりました。微笑みが美しすぎて、見惚れてしまいますわ」


 美女に褒められた。それは言い過ぎだけれど、美女は頬に手を添えて恍惚の表情をする。顔が引きつりそう。

 また布がひとりでに宙に浮くけれども、それは美女が操っているものだった。


「お名前は?」

「申し訳ありません、名乗り忘れておりました。わたくしはメデューサと申します」

「自分も申し遅れてすみません。クリスタロです」


 ペコリ、と二人は深々と頭を下げる。


「私も名乗っていないので、お互い様です。名前はアンナです」


 くるくると布が巻き付き、着ていた黒いドレスが脱がされる。落ち着いたところで、私も一礼した。アビゴールとリセルクにも。


「名前を尋ねず、すみませんでした。偉大なる魔王様の名前、記憶に刻みます」

「いいえ、名乗らなかった私が悪いのです」


 アビゴールが謝罪をして、リセルクは「皆に魔王様の名前をお伝えします」と牙が並ぶ口をにんまりと吊り上げて邪悪な笑みを浮かべて、行ってしまった。

 さてどうしよう。私は吸血鬼じゃないって、言いそびれている。

 そうだ。やっぱり人間の国に逃亡しよう。ついでに魔物とモンスターは違うことを進言しに行こうかな。このまま放っておくのは気の毒だ。

 二着目のドレスは、緩いワンピース。


「これで眠ってもいいですか?」

「はい。あと何着か用意しておきますので、どうぞお休みになってください」


 私は眠ろうとしていたのだ。こんな状況でも眠気に襲われている。

 コクリ、と頷いて、私はうとうとした。

 またひとりでに布が浮かび、切れていったかと思えば、繋がってドレスを作り上げる。やっぱり作るのは、ドレスなのか。

 私がベッドに入ってしまえば、作業を終えたメデューサさんとクリスタロさんが部屋を出る。「おやすみなさいませ、アンナ様」と頭を下げた。


「お目覚めになられたら、血を召し上がりますか?」

「……喉が渇いているとは限らないので、用意しなくてもいいです」

「はい、かしこまりました。おやすみなさいませ、魔王様」


 どこから血を仕入れてくる気なのだろうか。恐ろしくて尋ねられない。

 アビゴールはそれだけを聞くと、一礼をしてそっと大きな扉を閉じた。

 一人になった私は、至極ふかふかのベッドに身体を沈めて、現状を考えることを放棄して眠りに落ちる。




 ふと、目が覚めた。

 いつの間にかバルコニーや窓に分厚そうな黒いカーテンで隠されている。

 いつ誰が閉めたのだろうか。眠気たっぷりの重い頭を上げて、素足でペタペタと歩み寄ってカーテンを捲れば目が目が眩んだ。

 朝陽だった。ちょうど山から太陽が顔を覗かせている。

 驚いたことに、そこにアビゴールがいた。

 私と合わせた瞳は、琥珀色だ。静かに私を見据えていた。




 

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