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青空の章 7(完)


「降ろすよ・・・?」


 そっと壊れ物を扱うかのように地面に降ろされる。

 城の門から少しだけ離れた場所の林の中。まだ兵士がウロついていたり門の中へと走りぬけていく中、城壁の死角になっていて木々も邪魔していることから注目を浴びることはなかった。


「怪我は・・・ないよね?」


 彼はもう泣いていない。ただ心配そうに青の瞳を揺らしながら私を見ている。それをボンヤリと見ながら頷いてみせた。

 そしてゆっくりと城を見上げる。彼女は―・・・もう処刑されてしまっただろうか。


「陛下なら、大丈夫だよ」


 スっと言葉が入ってくる。どういうことかと彼へ視線を戻せばサミエルドは確信しているようで、安心させるように笑ってみせた。


「大丈夫」


 そっか。なら・・・良かった。

 強張っていた体から力が抜ける。そして目の前にいる彼に集中することが出来た。


 うん、やっぱり私はサミエルドが好きだ。


「私のこと、好きだったの?」


 問いかければ、彼の顔が一瞬にして赤く染まった。でも目は逸らさず「うん」と言ってくれる。

 同じ気持ちが返される。ああ、なんて幸せだろうか。


「いつから好きになってくれてたの?」


 正直、サミエルドの態度はほぼ変わっていなかったと思う。どこら辺で意識してくれていたんだろう?

 興味津々で彼の顔を見れば今度は目を逸らされた。でもウロウロと視線をさ迷わせた後、困ったように見下ろされた。かわいい。


「その・・・自覚したのは、コウちゃんに好きって初めて言われた時、かな」

「フったのにー」

「だってコウちゃん14歳だったんだよ?!可愛いし、僕なんかより良い人は沢山―」

「私は、サミエルドだから好きって言ったんだよ」


 うぐ、と言葉を詰まらせた。かわいい。

 ん?待って?


「自覚したのは?」

「・・・・・・・・・」


 いや、そこまで言ったのなら黙秘権はありません。

 さぁ話してくれるまで目を逸らさないぞとじっと見つめていれば、彼は観念したのか少しだけ距離を詰めてきた。

 そっと、大きな手のひらが優しく頬を包む。


「孤児院で初めて君と会った時、暗闇のような真っ黒な瞳を持った子だなって思ったんだ」


 そうだね、私の目は黒い。

 しかも孤児院にいた頃はこの世界に特に絶望していた。さぞかし表情のない不気味な子供だっただろう。




「だから、僕が抱きしめた時、ありがとうと告げた時に、目に光が宿ったんだ。

 キラキラ、まるで夜空が閉じ込められているみたいに」




 それに魅入られたと、彼は笑った。




「2年後再会した時、目を見て分かったよ。夜空の目は変わってなかった。それで、僕を見るときだけその目が見れることも知ったんだ。僕だけが、気づけたんだ」




 私の目は、今も彼のいう夜空のようにキラキラ輝いているのだろうか。

 私の見る今の世界が、輝いているように。




「好きにならないはずがないよ」




 へにゃりと、私の好きな彼の気の抜けたような笑み。

 ああ、これ以上の幸福を私は感じたことがあっただろうか。

 前の世界でも今の世界でもきっと、彼が居なければ知らなかった。


 だから、つられたようにへにゃりと笑ったのだ。



「私も、愛してるよ。サミエルド」



 夜空から零れ落ちた流星が頬を伝い、彼の手を伝って消えていった。



コウの視点の話はこれにて完結です。お付き合いありがとうございました。

次は夜空の章です。後日またアップしていきます。

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