東京メトロ(営団地下鉄)東西線 ③
作者より。当作品の各路線の状況は基本的に投稿時となります。その後のダイヤ改正や新車投入、駅の改良などで全く状況が変わる場合もあるので悪しからず。
「営団地下鉄、今は東京メトロだけど、その東西線の特徴は長い高架区間や、千葉県内を走るってだけじゃないよ。他にも面白い特徴がある。それが地下鉄では珍しい快速運転なんだよ。つまり、途中の駅を通過する電車があるってこと。このために、途中の葛西や原木中山駅、それに妙典駅には通過線が設けられてる」
「地下鉄で通過電車ですか?確かに珍しいですね」
まだまだ鉄道に詳しくない桜であるが、地下鉄と言うのは全ての駅に止まる普通電車と言うイメージが強い。通過電車があるというのは、彼女にとって驚きだった。
「まあ、最近じゃ同じ東京メトロの千代田線に、相互直通先の小田急のロマンスカーが入ったり、都営地下鉄の新宿線が急行運転したりしているから、オンリーワンってわけじゃないけどね。でも開始された昭和40年代としては、画期的かな」
「でもどうして快速電車を運転したんですか?」
「それは乗客の流動を分離するためだよ。東西線の東の起点である西船橋は、JR総武・緩行線と東葉高速鉄道との接続駅で、つまり、東西線よりもさらに遠くから来る乗客もたくさんいる。そうした遠くから来るお客さんが、東西線沿いの都心部に少しでも早く直行できるようにするためだね。一方で、通過する区間の沿線住民は普通電車に乗ってくださいってことだよ」
「なるほど」
理解して頷く桜。
「こういうふうに速達列車の設定で、乗客の流動を調整するのは全国色々なところで行われているよ。ちなみに、昼間は速達列車が走るけど、ラッシュ時はそうした列車の運転をとりやめて、通過駅の少ない列車や普通列車ばかりのダイヤにするって例もあるよ」
「どうしてですか?速い列車をやめると、遠くから来るお客さんは不便になりませんか?」
便利な速達列車を止める意味を、桜は掴みかねた。もちろん、すぐに木藤が説明する。
「確かにそうだけど、ラッシュ時に速達列車を運転すると、お客さんがその速達列車に殺到したりするんだ。そうすると、その速達列車が遅延を起こして、逆にダイヤを乱して普通列車の運転をさらに遅くするってこともありうる」
「げ!確かにそれは嫌ですね」
「その代わり、鉄道会社は線路容量一杯に普通電車を増発するわけ。よく世界に誇るものとして取り上げられる、2分や3分に1本の過密ダイヤだね。ただそれをもってしても、日本の場合特に東京のラッシュはヒドイのだけどね」
「さっき言った電車の窓ガラスが割れた話ですね」
「そう言うこと・・・とネガティブな話になったね。逆に面白い話をしようか、さっきも言ったけど東西線は15km近い高架区間を持っているんだけど、この高架区間ていうのはとある副産物を産むんだけど、江田さん何かわかる?」
「副産物ですか?・・・ごめんなさい、わかりません」
「それは高架線の下にスペースができて、様々な用途に使えるってことだよ」
その言葉に、桜もハッとする。
「あ!駐車場とか、お店とか!」
「そうそう。で、東西線の葛西駅の高架下にあるのは博物館なんだよ。それもただの博物館じゃない。地下鉄博物館なんだ」
「地下鉄博物館ですか。それってつまり」
「そ、東京メトロの博物館。東京メトロの古い車両や古い資料、それに子供に人気シミュレーターや模型ジオラマもあって、大人から子供まで楽しめる鉄道ファン垂涎のスポットになってるんだ」
「へ~。楽しそうですね。今度東京に行ったら行ってみようかな」
「それがいいよ」
木藤は桜が自分から積極的な言葉を口にしたので、素直に嬉しそうであった。
「さてと、そろそろ時間も迫って来たし。最後にこの東西線で使われていた5000系電車の話をして終わろうか。東西線に投入された5000系電車は、東京メトロ初の20m4扉車として、昭和39年の東西線部分開業と同時に登場した車両だよ。これは乗り入れ先の国鉄の車両サイズに合わせて作られたんだね。そしてその後長く東西線の輸送を支え、最盛期には10両編成の超大編成で東京から千葉への動脈を走り続けたんだ。でも平成に入るとさすがに陳腐化して、後継の05系とかに置き換えられたんだけど、そこから5000系の流転が始まったんだ」
「流転ですか?」
「うん。まず一部の車両が東葉高速鉄道に売却された」
「東葉高速鉄道ですか?」
初めて聞く路線名に首を傾げる桜。
「東葉高速鉄道は平成8年に西船橋から千葉県内の東葉勝田台まで開業した第三セクターの路線で、東西線と相互直通運転している路線だよ。今は新型の2000系に置き換えられたけど、開通してからその新型が登場するまでのしばらくの間は、東西線の中古の5000系を改造した1000形電車を使用していたんだ」
「なるほど」
「でも東葉高速鉄道での使用も終わって、本来ならここで解体の筈だったんだけど、さらに一部が東京メトロに残っていた5000系と一緒にインドネシアに売却された」
「インドネシア!?何でまた!」
「インドネシアのジャカルタ近郊を走る路線は線路の幅も架線電圧も日本と同じで、ちょうど大量の通勤車両が必要になっていたからね。そこで引退する5000系や1000形に白羽の矢が立ったわけ」
「外国に売られるなんて、スゴイですね」
「さらにスゴイのは、インドネシアに売却されたもう10年以上経つけど、まだ現役の車両あるらしいよ」(2018年3月時点)
「ええ!?だって昭和30年代の電車ですよね。今が平成30年だから・・・半世紀以上も昔の電車じゃないですか!」
50年も前の電車が未だに現役だというのに驚く桜。一方の木藤の方は淡々としている。
「メンテナンスすれば、電車はそれくらい走るってことだよ。電車の先頭か後ろには製造年月日のプレート付けた車両もあるから、注意してみるといいよ・・・よし、じゃあちょうど時間だし。今日の活動はここまで」
時計を見て、部活の終了時刻を確認した木藤が、今日の部活動をお開きにする。
「お疲れさまです。先輩」
「お疲れ様」
2人は教室内を片づけると、今日の活動を終えた。
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