表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ストップ ザ ロック

作者: 羊谷れいじ


台所で食器を洗っていた彼女が、急に叫んだ。

「その喧しい音楽を止めて!」

そして、二人で選んだお気に入りのパスタ用の皿を、床に叩きつけて割った。僕は突然の出来事に呆気に取られてポカンと口を開けてしまった。

 一体どうしたことだろう?突然怒り出した彼女。涙をぼろぼろ流しながら、自分の部屋にこもってしまった。


「一体何があったんだい?」僕は戸越に彼女に、出来るだけ優しく語りかけた。

「全部、あなたが悪いのよ!」彼女はそう言ったきり沈黙してしまった。


 状況が全くわからない僕は、タバコを吸おうとした。しかし、タバコを切らしてたことを思い出した。次第に僕までイライラして混乱してきた。

小銭を握りしめて、近所のコンビにまでサンダルを履いて出かけた。


「セブンスターひとつ下さい」

「・・・・。」店員は沈黙した。

「あのセブンスターを・・・」

「あなたに売れるものは当店にはありません!」

「え?・・・」

「だって、あなたが悪いんだもの」店員はキッパリとした口調で言った。

視線を感じて振り返ると、店内の客や他の店員の誰もが、僕をにらむように見ていた。

僕は状況がわからず、混乱したまま店を出た。


「お前が悪いんじゃ!」

杖を突いた老人が吐き捨てるように僕に向かって叫んだ。

「あんたが悪いんだよ!」

学校帰りの小学生たちが、少し離れたところから僕に向かって叫ぶと走って逃げていった。

見渡すと誰もが僕をにらんでいる。婦人たちはお互いに何かを耳打ちしながら言い合っている。

 やがて、どこからか警官が遠くからやってくるのが見えた。きっと警官なら、この事態を何とかしてくれるだろうと、哀願するように見つめていたら、警官はおもむろに腰に下げた拳銃に手をやろうとしていた。


 僕はもうだめだ・・・!

 一体僕が何をしたというんだ?!


 僕は必死に走り出した!警官が追ってくる。銃声も数発聞こえてきた。僕はこのままでは、理由もわからず殺されてしまう。路地を駆け抜け、大きな通りへ飛び出したところに・・・

トラックが突っ込んできて僕は跳ねられた。


・・・と、体をビクッと、すくめて目を開けると、それは夢だった。台所では彼女が何事もなかったかのように食器を洗い続けていた。ステレオからは相変わらず、ガンガンのロックが流れていた。

 僕はソファから転げ落ちるようにして、ステレオのスイッチを切った。部屋は穏やかな午後の静かなときを刻むように静まり返った。

「全部、僕が悪かったよ・・・。」

「どうしたの? 急に」彼女はクスクスと笑った。

「いや・・・ただ、僕がしてきたことが悪かったって思ったんだよ」

「あら、何か悪いことでもしたの?」

「うん・・・。君が嫌いなロックをかけてた」

「うふふ、そんなのいつものことじゃない。今更どうしたのよ。でも、まぁいいわ。よくわからないけれど許してあげる」彼女は笑いながら、子供をあやすように僕のおでこをそっと撫ぜた。

「よかった・・・。」僕は何だかホッとして胸を撫ぜ下ろすと、彼女が入れてくれたコーヒーを飲んだ。

不意にチャイムが鳴った。

「あら?誰かしら」

「僕が出るよ」僕は彼女に微笑むと玄関を開けた。



するとそこには、さっきの警官が拳銃を構えて立っていた・・・。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ