表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

No.-

No.31 噺買1

作者: 夜行 千尋

出されたお題を元に、一週間で書き上げてみよう企画第三十一弾!

今回のお題は「帽子」「骨」「共同作業」


3/23 お題出される

3/29 まさかのプロット未完成で締め切りを過ぎる ←!!

3/30 なんとか書いて投稿


本格的に難産でした。筆の進まないことの恐ろしいことったらない……

 いつの日からだったか……俺の特異体質が発生したのは。


「知ってる? こんな話があるの」


 そんな特異体質の事を知らない俺の想い人、遠野が“今はまだ作り話でしかない”話しをする。


「友達の友達のそのまた友達から聞いたんだけどね」


 このパターンは……俺は嫌な予感がして割り込んだ。


「遠野さん、それって都市伝説か? もしかしなくても怖い話?」

「え? 夢野くんってこういう話好きじゃないの?」

「全っ然! 全っっっっ……然!!」


 全力で拒否するのだが、毎回気にせず話すのが彼女、遠野とおの 志桜里しおりだ。


「んとね」

「拒否権ないの? 俺それ聞かなきゃダメ?」

「だって他の人みんな聞いてくれないんだもん」


 そら苦手な人も居るし、ばかばかしいと思う人も居るし、進んで聞きたがる人のが少ないだろう。で、ここで強く拒否しても良いのだが……惚れた弱み、という奴だ。








「で、まんまと今回も話を聞いてしまったということじゃな?」

「うん……」


 俺は祖母の家で、安楽椅子で揺れながら茶をたしなむ老人口調の幼女にじっとりとした目で見られる。

 結局、最後まで遠野の話す都市伝説を事の顛末まで聞いてしまった。そういう時、俺は決まって祖母の家に泊まり込み行く。曰く、祖母は“そういう職”の人らしい。つまり、怪奇現象とか、怪談とか、妖怪とか……そう言うのへの対処を専門とする職の人間らしい。このいかにも胡散臭い職なわけだが、彼女の外見を見ればそれが事実ではないかと思えてくる。そう、今この目の前に居る外見年齢10歳ほどの幼女が……俺のばあちゃん、祖母である。御年86歳。この外見は俺が物心ついた時から変わってない……まさに、魔女である。


「今わしの事をBBAとか思ったか?」

「なんで!?」

「……魔女とは思ったんじゃな?」

「……な、んで!?」

「……まぁよいわ」


 大きな湯呑を小さな手で口に傾けながら、ばあちゃんはお茶を啜る。

 そして一息ついてからニヤつきながら俺に言う。


「相変わらず遠野ちゃんには弱いのう、魁人かいとは。散々な目に毎回あってるのにのう」

「め、面目ない」

「惚れてれば性のないことやもしれんがな……」


 ため息をつきながら、幼女が懇々と老人口調で俺に説教してくる。端から見ると兄妹でこういう遊びをしているかのようだ。


「魁人は『噺買はなしかい』の性質を持ってると云うたじゃろう? それは聞いた話を追体験してしまう恐ろしく危うく、愉快で稀有な能力じゃというたはずじゃな?」

「今愉快とか言わなかった?」

「ともかくじゃ、今日は匿ってやるから、後日気を付けえよ。わしとて神や仏じゃないんじゃからのう。面白い孫の頼みじゃからこそじゃぞ」

「そこはかわいい孫じゃないの!?」


 目の前の幼女がニヤつきながら俺をからかってくる。なんでこんな外見幼女にからかわれなきゃならないんだ。


「なんじゃお主、おのこのくせに自信を可愛いと思おておるのか? 確かに小さい頃は可愛かったのう。女装させておったし」

「あれはばあちゃんの指示だっただろ!?」

「可愛かったのにー」


 ぱっと見は可愛らしい幼女が頬を膨らませながらふてくされているだけである。中身は86歳だが。


「今わしを87歳とか思おたか?」

「なんで!? 86さ……」

「……」


 あ゛……



「で、今回はどんな噺を聞いてしまったのじゃ?」

「あい、話しまふ。おばあひゃま」


 俺は幼女に足蹴に頭部を踏みつけられながら、今回話された話を話した。




―― ロシアの童話にはババヤガーという魔女が良く現れる ――


 それは『鬼婆』のように人を喰う魔女だが、『ホレおばさん』のように勤勉で正しい者には優しい魔女らしい。そのババヤガーが、第二次世界大戦後のシベリア抑留の兵士に憑いて日本に渡ってきているらしい。帰り道を見失った老婆の姿で現れ、人に道を聞く。

 それに対しぞんざいに扱った場合、老婆の持つ骸骨が火を吹いて焼き殺されるか、石臼が降ってきて潰されてしまうという。

 それに対し真摯に対応しようにも、老婆の家はロシアの森の奥地。家に送り届けなければ老婆に食い殺される。生きたまま……。家路までの道のりが長いと我慢が出来なくなった老婆に食い殺される。生きたまま……。

 出会ってはいけない。出会ったら殺される。対処方法はない……。


 そのババヤガーが、この周辺に現れたらしい。たとえば、学校からの帰り道。駅のホーム。夕方の坂道。公衆トイレの入り口。あるいは、今こうして話を聞いている人の背後に……。

 出会ってはいけない。だが出会いに来る。向うから、臼に乗って、会いに来る。骸骨をぶら下げた老婆が、会いに来る……



「なるほど。対処法無しのタイプと……」

「うん、で、困っちゃったわけにゃんだけど、それよりしゃ」

「なんじゃ?」

「足をどけてくれましぇんかにぇ?」




 俺は『踏むのが楽しくて聞いてなかった』というばあちゃんに今一度話を聞いたままに話した。今度はちゃんと、お互いにちゃんと話が聞ける姿勢で。ばあちゃんは安楽椅子に座り、そこから1m離れたところに俺は正座した。

 そして、話しを聞き終わってばあちゃんは一言。


「よし、やはり泊まっていけ」

「ってことは、やっぱり、来るの? その老婆」

「誰が老婆じゃ!」

「ババヤガーだよ!」


 間髪入れずに答えた結果、返ってきたのは舌打ちと残念そうな顔だった。なに、そんなに俺を踏みたいの?


「で……その、ババヤガーが来るかも、って?」

「……」


 幼女は安楽椅子から飛び降り、俺の顔に手を当てて、その愛くるしい顔で俺の両目を覗き込みながらゆっくりという……


「明日の朝はハンバーガーが食べたいのじゃ。駅前で買って来てくれ」

「朝っぱらからヘビーだな、ばあちゃん!」





 とか何とか言いつつ、俺が泊まった場合することは決まっている。


「よし、んじゃやりますか」


 俺は流しに乱雑に置かれて汚れがこびりついた食器と鍋に向かって言った。

 どちらかというとこれがメインな気がして仕方がない。他にも洗濯物は溜まり、お風呂は湯垢とピンクぬめりが酷い。あと排水溝の髪の毛。台所の御釜はカピカピのご飯粒がついたまま放置されているし、前回俺が置いて行ったきんぴらごぼうが腐海に呑まれながら鍋の中でセカンドライフを謳歌していた。

 そう、家事全般を一挙に引き受けることである。


「おう、やっておるな。風呂は沸いとるかの?」


 マスクをして緑色になった元きんぴらごぼうを捨て、洗剤という味方を得て鍋と格闘している最中、背後で声がしたため、ぶっきらぼうに返した。


「うん。さっき風呂掃除は終わったから、湯船にお湯張ればいけるよ」

「ん、解った」


 俺はなんとなく予感がして釘を刺した。


「あ、風呂で遊んだらだめだからね。のぼせてもすぐ助けらんないよ」


 ともあれ、ばあちゃんの家なら多分安心だろう。いままでだってそうだったのだから。

 と思っている背後で声がする。


「おや、よくやっているね。関心関心……」


 俺は前身の毛が逆立つ思いがした。

 ばあちゃんは外見幼女だ。つまり声も外見並みに幼い声である。聞き間違うはずが無い皺枯れた声……

 その声が、振り返ろうとしない俺に言う。


「すまないねぇ……家への帰り道を忘れてしまったんだけど……教えてくれないかい?」


 俺はどうすべきか考えていた。

 出会ってはいけない。出会えば、死ぬ……


「どうしたんだい?」


 次の瞬間、俺の耳元で声がする。その吐息が耳にかかる。


「耳が聞こえないのかい、坊や」


 思わず洗剤がついたままの両手から皿が零れ落ち、盛大な音をたてて床で弾け、俺は濡れた手でささやかれた耳を抑えながら声の主を見た。

 皺だらけの老婆だ。魔女によくある三角帽子をかぶり、その帽子には骸骨、人の頭がい骨が括りつけられている。温和な笑みを浮かべ、小さな鼻眼鏡をその大きな鷲鼻にかけている。樹皮の様なその肌にまっすぐナイフで切れ込みを入れたかのような口が真一文字に引かれ、その両端がほんのりと上がっている。

 老婆、ババヤガーは笑いながら言う。


「はは、これはすまないね。驚かせてしまったかしら?」


 どう答えるべきか、どう対処すべきか困っている俺の目の前で、老婆は懐から銀色の円形の物体を取り出す。それは手品師の出す各国の国旗が括りつけられた紐のように様々な物が括りつけられている。兎の足、赤い液体の入った小瓶、干した植物、黒いトカゲ、錆びた蹄鉄、ミイラになった人の頭……それらと共に老婆の懐から出てきた銀の円形の物体は、上半分が横にスライドし、中から薄黄色の塗り薬の様な物が現れるのが見える。その塗り薬は強烈な刺激臭を発し、鼻の奥の水分を吸い取られるような臭いがした気がした。

 次の瞬間、俺は割れていない皿を手に持ち、老婆の前に膝をついていた。頭がぼうっとする。目の前が薄暗く、妙に眠い。

 そんな中老婆が、ババヤガーが件のセリフを言う。


「坊や……私の家を知らないかい? 送ってもらえないかね?」


 ぼんやりとした頭のどこかで咄嗟に逃げようとするも、足は力が入らず、眠気に似た脱力感が思考力を奪う。

 そして、視界に映るのは、温和な笑みを浮かべた老婆の口が、彼女の腰まで裂けて巨大な赤黒い虚をのぞかせる光景だった。灰のような臭いがする。その臭い吐息の湿り気が肌にこびりつく感覚が有るのに、動けない……

 そして、うごうごと蠢く口の化け物についている老婆の腕が、俺の肩を握りつぶさんばかりの力で掴んでくる。めきめきと音をたてて、その爪が食い込むのが解る。痛みを感じるのに声さえあげれない。視界の全てが、その口の中に消える。


 食われる! 食われる!


 そして、その口が膝から上を飲み込み、湿り気と共に足に激痛が走る。なお体は動かない。口の中で舌で転がされ、目の前で右腕が噛みつぶされるのを見る。骨の拉げる音がして、血が噴き出しながらもげる中、頭を左右から白い歯が噛みつぶし始めるのを感じる。生きているのに、今、俺は……食われてる。痛いのに体が動かない。気が狂いそうな痛みが有るのに、食われてるのに、動けない頭蓋が音をたて噛み砕かれ……


「起きんか阿呆」


 の前に俺は幼女の足が顔面を蹴る感覚に襲われた。そして、鼻を蹴られた痛みと共に床でおれはのたうち回った。

 みれば、俺は両足も右腕も、ついでに頭も無事であることに気づいた。


「え? あれ? あれ? な、なんともない? なんともない?」

「『魔女の軟膏』じゃ。メジャーな術にかかりおってからに。なさけないのう」


 目の前にはやれやれと首を振るタオル一枚の幼女(実年齢86歳)と尚も温和な笑みを浮かべるババヤガーが居た。俺の足元には洗剤まみれの割れた皿。

 ばあちゃんはババヤガーに向きなおって言った。


「すまんな。おまえさんは『魔女ババヤガー』になりそこなっとる。おまえさんでは不十分じゃ。夢にお帰り」


 そう言って、ババヤガーの額に指を突き立て、言った。


「都市伝説付いてきたババヤガー、お前さんは、人を殺すことは無い。なぜなら、ババヤガーは勤勉な者を殺さぬ。会えば絶対に殺す都市伝説には、その姿じゃ似合わん。出直しんしゃい。おまえさんは……詰まらん」


 ババヤガーは温和な笑みを浮かべたまま、霞のように消えていった。その魔女のとんがり帽子を残して。

 タオル一枚の幼女姿の魔女は、そのとんがり帽子を拾い上げて俺に向きなおり言う。


「よし、あとは翌朝ハンバーガーを買ってくれたら、もう帰って大丈夫じゃ」





 その後、なんてことは無く朝を迎え、早朝からハンバーグを焼き、パンにレタスとトマトとチーズと一緒に挟んで、ばあちゃんに出しながら俺は聞いた。


「で、なんでババヤガーはそのまま去ったんだ? 会えば殺してくる都市伝説じゃないの?」

「最近の都市伝説は『必ず死ぬ』というのばっかりでのう。じゃから、噺としての本質『つまらない』という存在意義の否定で、お引き取りしてもらったんじゃ。あれがマジ者のババヤガーじゃったら、わしは礼節を欠いてはならんし、そもそも、ババヤガー自身人の背後に現れるような存在ではないしのう」


 お茶を注ぎながら、更に疑問を聞いた。


「あの妙な……『魔女の軟膏』って?」

「要するに麻薬じゃ。あれで幻術をみせるんじゃよ。しかし、あの都市伝説は『精神を食い殺す』幻術をあの麻薬で見せる、という性質に変わっておったようじゃ。妙なところにこだわっとる癖に『ババヤガーの頭がい骨』はただのアクセと来たもんじゃ……期待外れじゃのう」


 期待はずれって……


「もしかしなくても、俺、囮にされてたの?」

「何を今更」

「……信じられない。俺死にかけたんですけど?」


 思わずばあちゃんからハンバーガーを取り上げる。目の前で幼女が必死に跳ねて取り返そうとする。

 ばあちゃんはそれに対して言う。


「仕方なかったんじゃ。他に犠牲者が出る前に、なんとかしたかった故に、の? 共同戦線というやつじゃよ!」

「ばあちゃん……そういう大義が有ったならしかたない」


 俺はばあちゃんにハンバーガーを返した。気のせいか、ばあちゃんが「ちょろ」とかなんとか言った気がした。


「ともあれ、もうババヤガーは出て来んぞ。根本から否定してしまったからのう。ま、手の込んだ設定のくせに素人丸出しの噺じゃったな」


 そう言いながら、幼女86歳は出されたハンバーガーにご満悦の様子だった。




 そんなこんなで命の危機を乗り越えた朝、俺はばあちゃん家から学校に登校した。


「おはよー! 夢野くん、昨日は寝れた?」


 と背後から明るい声がかかる。


「ああもう全然寝れなかったよ。怖がらせすぎなんだって、遠野さんは」


 同級生、俺の想い人である遠野 志桜里だ。

 あの後なんとか寝付こうと努力したが、あんなことの有った後でそう簡単に寝れるわけもなく、仕方なくハンバーグの仕込みを、ばあちゃんに見張ってもらいながら(途中でばあちゃんは寝てしまったが)、しょっちゅう背後を向きながら頑張った。

 そんな俺を知ってか知らずか、彼女が笑う。


「ごめんごめん。ついつい、夢野くんを見てると怖い話したくなるんだもの」

「どうせなら、もっといい話をしてくれてもいいじゃんか」


 そしたらその噺も買えるとばあちゃんが言ってたし。


「そうね。じゃあ……友達の友達のそのまた友達から聞いた話なんだけどね」



遅れすぎて申し訳ない(血の涙)


いやもうね

「帽子」と「共同作業」がかみ合わなくて

もう仕方ないので無理やりねじ込みましたハイ……


ぶっちゃけ

某怪奇漫画の影響を色濃く受けております

こんなのでいいのだろうかと頭を抱えながらも投稿


ちなみに

本来のババヤガーは

鬼婆にして魔女であり人食いの化け物だが

勤勉に家事をこなしたり言いつけや仕事を真っ当に行う者などにはマジックアイテムなどで支援するおばあちゃんでもあります

ババヤガーの骸骨は意地悪を働くものを焼き払う、日が落ちると自然と眼窩に火がともる骸骨として有名?です

そもそも、鶏の足が一本だけ生えた、飛び回って落ち着きのない家に住む魔女なのですから、人に会いに行くことも人に憑いて行くこともあり得ない存在です


次回は……まともに筆が進むといいなぁ(しみじみ


ここまでお読みいただきありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ