第一章 王女継承と蜂起の影 第一節(9)
「さて本題だが、アルテミスよ。女王となった今、まず何をする?」
父は、アルテミスの顔をじっと見つめ、尋ねた。
「えっと、いろんな町に行ってみたいです」
「うむ、さすがだ。私が言おうとしていたことを言った。そう、街を視察して、この国を知っておく必要がある」
「え!行っていいの?」
アルテミスは玉座から飛び上がると、目を見開いて父に言う。
「しかし、一人で視察ということはできない」
「別に、私服で帽子をかぶってしまえば、わからないと思います」
「アルテミスには、まだわからないかもしれないが、街を見てくれば徐々にわかるはずだ。街とは、我々王族ではどうすることもできない問題が、山ほどある。そして、国民は王族よりも強いことを理解してくるのだ」
父はアルテミスに背中を向ける。
「そこで、私の腹心である、このアレスと共に街を視察してきてくれ。こいつは、まだ17歳だが、剣術でこいつの上にいく者は誰一人としていないと断言できるほどの実力を持ち、私のほとんどを知っている。全部と言っても良いだろう。どの親衛兵よりも重鎮よりもこいつを信用している。アレスになら、愚痴を言っても大丈夫だろう。私は、本当にこいつの強さには敬服している。度重なる戦でも鎧に傷ひとつ付けずに、さらには、剣と剣が交わったときにできる剣の傷すらないのだ。これは武力だけではなく、心も強いのだろう」
「とんでもございません。ありがとうございます。感謝致します」
アレスは、父に頭を下げる。
「しかし、趣味も持たぬ、実直で生真面目なやつでな。先を考えて行動する反面、保守的になりがちだから、そこはアルテミスが助けてやってくれ。いろいろ、私の近くに居て、苦労をさせてしまったのだろうな、すまない」
父はアレスに浅く頭を下げた。
アレスに頭を下げるなんてこと、今まで一度もなかったので、アルテミスは驚いた。
アレスも驚きを隠せずにいる。この状況を理解すると慌てて、父の頭の位置よりも下までアレスは頭を下げた。
「とんでもございません。お上げください。でないと私も頭を上げることができません」
父が頭を上げると、アレスもゆっくり頭を上げた。
「まったく。アレスはいつまで経っても実直な鎧の中から心を表すことがないな。少しは私に心を許してくれても良かったであろうに」
「いえ、私から見て最高位であることには変わりません」
「アレス。私はもう最高位ではない。アルテミスを頼んだぞ」
父ははっきりとした口調でアレスに言った。
「はい」
アレスは父の言葉をしっかり受け止め一礼した。
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