第一章 王女継承と蜂起の影 第一節(8)
「困ったな、一日目で弱音を吐かれては、私も先行きが心配になるではないか。さて、もう話は良いだろう。アルテミス、今日から王女ではなく、女王になったのだから、まずは、玉座に座ってみよ」
「あ、はいっ」
アルテミスは、黄色で染色された生糸で全体が仕上がっている玉座を見つめると、ゆっくり肘置きに手をかけ、徐々に腰を掛ける。
さらさらとした手触りに、ふんわりとした感触がお尻を包み込んでいく。
「ふわふわ~」
アルテミスは思わず、顔がほころんでいく。
「この玉座は、代々この城に受け継がれる平和の証である。金の装飾もなければ、宝飾もされていない。この玉座には、常に部隊や国民と平等な立場であり続けるという志を示しているそうだ」
アルテミスは父の話を半分に、ふわふわした玉座を堪能している。
「このお城は、お父様みたいな人がずっと守ってきたのですね」
ふわふわを堪能していたアルテミスは、次第に王座の細部が気になり、目を凝らして肘置きを見つめながら言った。
「うむ…」
「あ、ここ、ほつれてる」
肘置きに綻びを見つけると、アルテミスは摘まんでいじくっている。
「かなり年期の入ったものだからな。…これこれ、あまりいじると、ほつれが大きくなってしまうではないか」
父は、すかさず止める。
アルテミスは綻びから手を離すと、天井を見ながら、ふわふわの弾力を利用して、身体をぽんぽん跳ねて遊んでいる。
「お父様、この天井の綺麗な女性は誰なのですか?」
「…これか。これは、私が一番愛している最高の肖像画だ」
父もアレスも天井を見上げる。
「とても綺麗な方ですね。長い髪に小さな顔立ち、すごく優しそう」
アルテミスは天井に描かれている女性の肖像画の全体を見渡して言う。
「そうだろう、まさしく絶世の美女だな。アルテミスに少し似てはいないか?」
父は腕を組むと、にこやかな表情で言った。
「え?私ですか?私はこんなに美人ではないです」
「いや、似ているであろう。アルテミスも絶世の美女であるからな」
「私、素直に受け取ってしまいますよ、お父様」
「お世辞ではないのだがな。これ以上言うと、アレスに親ばかと言われてしまうから止しておくか」
聞いていたアレスは、優しい眼差しでアルテミスを見ている。
ご試読、誠にありがとうございます。
こちらのページは、ケータイ、パソコンのどちらからも読むことができます。
(画面の大きさに合わせて、見やすい最適な状態に自動設定します)
本書は、Amazon kindle(電子書籍)にて好評販売中です。
ぜひご覧ください♪
http://urx2.nu/gtRL
本書は、定められた管理機関において、著作権を保守しております。
著作権についてはこちらをご覧ください。
http://moonpj.com/#copyright
コメント:毎週日曜日の21時に更新します。また来てくださいね♪
ツイッターでも待ってますっ!
https://twitter.com/MoonProject_45