第一章 王女継承と蜂起の影 第一節(6)
到着すると、集まっていたたくさんの人の視線がアルテミスの顔に集中する。
そこには、各町の町長である重鎮、城の衛兵、親衛兵、父の腹心、城のお世話係が集まっていた。
全員、アルテミスがよく知っている人たちだった。アルテミスの顔を見かけては、必ず話しかけてくれて、重たい荷物を持っていると快く(こころよく)代わりに持ってくれる素敵な人たちばかりだった。
皆の視線は優しかったものの、眠気は一気に覚め、父の近くへ駆け寄った。
整った長い黒髪が、アルテミスの動きに合わせて、さらさらと流れ始める。
父は、玉座には座らず、その横に簡易的な椅子を用意して腰を掛けていた。
「遅れたが、本日より女王となったアルテミスだ。よろしく頼む」
父は、ゆっくりと腰を上げ、アルテミスの一歩後ろで言った。
「よろしくお願いします」
アルテミスは、いつも皆と話すように言い、頭を下げた。
「まだまだ未熟な女王であるから大目に見ることもあるだろう。しばらくの間は私と女王で王務を務めることとする。では、皆は任務に戻ってくれ。アルテミスは、お説教が待っているぞ」
「え?!はい…。」
アルテミスは、肩から気を落とし、しょぼんとしている。
皆は微笑みながら、玉座の間から退出した。
玉座の間は父とアルテミス、父の腹心の3人だけとなり、少しひんやりとする。
壁際に備えつけられている暖炉のぬくもりが顔を温める。
父は、何か言わんとばかりにアルテミスの前に立つ。父は思っていたよりも小さく見えた。
「アルテミス」
「はい…」
アルテミスは、うつむく。
「部下に頭を下げないよう、心しておくのだ」
「え?」
うつむいていたアルテミスは、父の顔を見上げる。
「王は、あくまで国をまとめる最高位だ。腰の低い、頭の上がらない王となると、この座を狙う者が現れる。例え、衛兵であろうと、重鎮であろうと。頭を下げるときは、この王という立場を捨てる覚悟のときに使いなさい」
「わかりました…」
再び、アルテミスはうつむく。
「以上だ」
「え?それだけですか?朝寝坊怒られるのかと…」
「叱るも何も、いつものことだからな」
父の腹心が微笑みを浮かべる。
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