第一章 王女継承と蜂起の影 第一節(5)
次の日、城下街の朝は、少し印象が変わっていた。
アルテミスが継承の儀で振る舞った、右手を胸におく行為が、お辞儀の代わりとなり、通常の挨拶になり始めていた。
一人がその挨拶をすると、受けた相手も興味本位に同じ挨拶で返す。すると、自然と笑みがこぼれ、挨拶が挨拶を生み、瞬く間に広がっていった。
「おはようございます。お父様」
おぼつかない足取りで、父のいつもいる玉座の間に着いた。
アルテミスは、ぼさぼさの髪に、柔らかい角に似た寝癖を生やし、目もしっかり開かぬまま、父を見つけると、父のもとへと玉座の間の奥へ進んでいく。
微かに映る視界には、たくさんの人のようなものと、その先に父の姿が見えた。
ただ、父を目指して歩いていく。
「アルテミス。今日から、アルテミスが女王なのだ。身支度をして、また来なさい」
「ふぁ~い」
父の声がアルテミスに届くと、くるっと反転し、来た道のりを戻り始める。
「まったく…。皆、許してやってくれ。今日が女王の初日だからな」
父は頭を抱えながら、アルテミスの後ろ姿を見ている。
よたよたしながら自室へ戻っていく。
「すまないが、二度寝しないよう付き添ってくれるか?」
父は困った顔を見せながら、お世話係に伝える。
お世話係は優しく微笑みながら一礼をして、アルテミスの後ろをついていく。
「全く二度寝なんてしませんよーだ…」
戯言をごにょごにょ言いながら、自室にある鏡の前で、腰まである透き通った長い黒髪を束ねる。
時折、するんと通る手ぐしに満悦しながら、身支度を済ませていく。
徐々に目も開き始め、光が射し込む自室が鏡に映り込む。
今日もしっかりと髪がまとまったことに喜びの笑みを浮かべると、玉座の間に向かった。
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