第一章 王女継承と蜂起の影 第一節(11)
お世話係も退室し、日も傾き始めた頃。
「女王。入ってもよろしいでしょうか」
自室の扉の外からアレスの声がして、アルテミスは手を止めた。
「アレス。ちょうどいいところに来てくれた!入って」
アルテミスの招き入れる声を聞くと、アレスは静かに扉を開けた。
「アレス、これも持っていったほうがいい?」
アレスは目の前の光景に思わず言葉を失った。
「あれ?アレスどうしたの?」
アルテミスは、全身が映るくらい大きな鏡を両手で抱えてながら言った。
「女王。これはいったい…」
アルテミスの部屋にはアルテミスの身体より大きな荷物がいくつも転がっていた。
「え、準備してるの…。あれ!?もしかして、お父様の気が変わって、外に出るなーって言われてきてます?」
「いえ、先代王からはそろそろ出発しなさいとお話を受けました。しかしながら女王。これだけの荷物はさすがに持っていけません」
「でもみんな必要なものだよ」
アルテミスは、ガサガサと荷物の中身を取り出してアレスに見せ始める。
手鏡や髪を整えるくし、更には衣類の数々。
布団なども敷布団からすべて。
可愛そうなくらいベッドが骨組みだけになっている。
「あ、アレス、これ覚えてる?」
すると、アルテミスは動作を止めて、アレスに一枚の賞状を見せる。
「覚えておりますよ。それは初めて先代王から勉学で認めてもらった時ですね」
「そう!私は頭がいいんだから」
「はい、そうですね。女王は素直な方です」
「それじゃあ、頭良さそうに聞こえないー」
「すみません、素直で聡明な方ですね」
「そうね。それで許してあげる」
賞状を丸めると、再び袋の中へと入れる。
次から次へと袋の中の物を出す度に、アルテミスは満面な笑みでアレスを見た。
アレスもそんなアルテミスを見て、自然と笑みがこぼれた。
「女王、そんなにお持ちになられては、乗っていく馬もかわいそうですよ。思い出も大切ですが、旅先で落とされては一大事になります。持ち続けなくても覚えていればそれが思い出になります」
「んー、確かにお馬さんがかわいそう…」
渋々、袋から出していく。
時々、これは絶対に持っていく。と言いながら、大きな袋の中を仕分けていく。
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