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魔法少女☆として戦います《3》

「大丈夫?…な訳ないか」


 今にも倒れそうだったあかりを支えたのは、水色のツインテールに、あかりと同じデザインだが色違いのクリーム色の衣装を身に纏った女の子だった。


「もー!シルの呼び出しはいつも急すぎ!あたしだって忙しいのに」

「それは悪かったわ。ただ今は…」

「わかってる!敵を倒さなくちゃ!」


 あかりを支えていた手を離し、シルに話しかけた女の子ーーバロネは敵と真っ向から向き合った。バロネが登場してから警戒しているのか動きを止めている敵から目を逸らさずに、バロネはあかりに話しかけた。


「あたしバロネ!んーとりあえずあなた呪文なにか使える?」

「わたしはあ…ソルンです。えっと、爆発?するやつなら使えます」

「オッケー!じゃああたしこっちから見て左側の腕狙うから、ソルンは右側の腕に向かって呪文を唱えて!」

「は、はいっ」

「いくよ!《バロネの名の元に切り裂け、バリエル》」

「《ソルンの名の元に弾けろ、ソリュージョン》」


 バロネとソルンは同時に2本の腕にステッキを向け呪文を唱えた。バロネの狙った左側の腕はかまいたちに切り裂かれ、ソルンの狙った右側の腕は弾けるように消えていき、ダークは跡形もなくなった。


「はー終わった!じゃ、あたし帰るね!」

「ちょ、ちょっと待って!いろいろ聞きたいことが」

「あ、そうそうダークのことね!ああいう大きめに2つに分かれているやつは同時に狙うとあっという間に倒せるの!慣れれば同時に当てられるようになるよー」

「なるほど…じゃなくてっ」

「何ー? あ、そうか、自己紹介ちゃんとしてなかったね!あたしは星を司るバロネ。得意なのは風を操る攻撃で、今困ってることはシルの突然の呼び出し」

「あの!!えっと…その、怖くないの…?」


 ダークが消えて早々に立ち去ろうとしていたバロネを、力を使って疲弊していた体をどうにか動かし、腕を掴むことであかりは引き止める。聞きたいことを話す前にバロネが自由に話始めるので圧倒されていたが、どうにか遮って話し出した。


「あのダークっていうやつと戦うの…」

「…え?」


 質問するあかりの声はだんだん小さくなり、足下を見るように俯いている。バロネは掴まれている腕が微かに震えていることに気付くと、そっと両手で握った。


「…怖いよ」

「…」

「戦う力を持ってるってだけで安全な訳じゃないもん。でもね、あたしが戦うことで守れる人がいる。救われる人がいる。その為には戦わなきゃ!って思うの」


 バロネの言葉に顔を上げたあかりが見たのは、強い意志を持った目をしているバロネだった。あかりと目が合いにこっと笑った後、バロネは空気を変えるようにシルに声をかけた。


「シル!心のケアもシルの仕事でしょー。ちゃんとやってよね!」

「これからちゃんと話をするつもりだったのよ」

「なら、あとはよろしく!さすがに帰らなきゃママに気付かれちゃう」

「色々助かったわ。ありがとう」

「はーい。じゃ、シルもソルンもまたね!」


 よっぽど急いでいるのか、バロネはシルとあかりが返事をする前に飛び上がり夜の闇へと消えていった。


「さ、ここにいてもしょうがないから移動しましょう。あかりも聞きたいことがあるでしょう?」

「うん…」


 いつの間にかあかりの横にいたシルは、飛び上がり戻るのかと思いきやあかりの肩に飛び乗った。


「あかりの家にいくわね」

「どうやっ…わあっ!」


 シルへと疑問を口にする前に、気付くとあかりの部屋にいた。


「え!え!瞬間移動!?」

「コンパクトは緊急の時に連絡がくるって言ったでしょ。コンパクトがある場所へわたしは自由に行き来できるのよ」

「へぇー。って、あ!土足!!」

「…変身中は変身を解くまで汚れとかは付いたりしないから、玄関で解いてきたらいいと思うわ」

(どうしてこの子変なところで現実的なのかしら…)


 わたわたと玄関まで行くあかりを見つめながらシルは呆れつつも不思議に思っていた。そんなことを思われているとも知らずに、きちんと靴を脱いで戻ってきたあかりはソファーに座った。フローリングの床の上にいるシルにあかりは声をかける。


「シルもソファーに座る?あ、でも足の裏は拭いてほしいけど」

「…ここでいいわ」

「そっか」


 会話が途切れたことで二人は無言になったが、しばらくすると先にシルが口を開いた。


「先に謝っておくわ、ごめんなさい」

「…どういうこと?」

「あなたがダークと戦いたくないと思っていても、必ず戦ってもらわなくてはならないこと」

「…」


 返事がなくてもあかりを真っ直ぐに見つめながらシルは続ける。


「ダークっていうのは人の心の闇。人が持っている負の感情が集まって出来たものなの」

「心の闇…」

「そう。普通に生活していても見ることのできないカタマリ。戦っている最中、周りに人いなかったでしょう?普通の人は戦っていることに気付かないの。あなたが変身しているのも他の人には見えない。バロネのこともわたしのことも」


 はっ、とあかりは言われて気付いた。いくら夜中とはいえ爆発音などがしていて誰も出てこなかったのはとても不自然であると。


「たとえ見えなくてもダークは存在するだけで影響がある。ダークがいる場所の近くにくると不気味だったり、目眩がしたり。中心の球体が縮小すると更に影響が大きくなるの。特に力のあるダークだと最悪死に至るわ。」

「そんな…」

「大多数はダークの存在に気づかない。だから選ばれし戦士ーーあなたたち光を司る者たちが戦わなければならないの」

「…どうしてわたしが選ばれたの?」


 あかりの質問によって再び沈黙が訪れたが、真剣に見つめてくるあかりを見てシルは躊躇しながら口を開いた。


「それは、まだ言えないわ」

「どうして!」

「わかる時が来るからとしか、わたしには言えない」

「なにそれっ」

「納得行かないのはもちろんわかってる!それでも、少し待ってほしいの」

「…」

「それにあなたに戦って貰わないと、増え続けているダークを倒すのにバロネとマノンだけでは手が回らなくなってしまうわ」


 シルの言葉であかりの頭に浮かんだのは青いツインテールの少女だった。あかりに向かって強い意志を語った少女も戦っている。


「…わかった」

「ソルン…」

「戦う。わたし戦うよ。今にも逃げ出したいくらい怖い。本当は戦いたくなんてないけど…でも守りたい人はいるから」

「そう…」

「昨日の今日で覚悟が決まってる訳じゃない、けど」


 あかりは手をぎゅっと握りしめながらシルに言った。

 そんなあかりを見てシルはほっと息を吐いた。


「サポートは必ずするわ。毎回戦闘に着いていくことは出来ないけれど何かあったら必ず言って」

「うん」

「困ったときはコンパクトを通して連絡が出来るから」


 そう言うなり机の上に置いてあった白いコンパクトをあかりの目の前まで持っていた。コンパクトを手に取ったあかりが中を開けてみるとボタンが3つあり、蓋の裏は鏡になっている。


「星形のボタンはバロネ、三日月の形のボタンはマノン、丸のボタンはわたし。それぞれ押せばすぐに連絡が取れるから」

「わ、なんか魔法少女っぽいアイテム!」


 あかりは子供の頃に集めていたようなアイテムに、目をキラキラさせコンパクトを弄っている。少しテンションの上がったあかりにシルは安堵し、立ち上がった。


「それじゃあわたしはそろそろ行くわ。これからよろしくね」

「うん、よろしくお願いします」


 あかりの返事が終わる頃、シルの体が光ったかと思うとその場から消えていた。

 キョロキョロと見回しシルが完全に部屋から消えたことを確認するとあかりは、はあーと息をついた。


(自分で決めたんだ。逃げたりは出来ないよ、わたし)





 ◇◇◇◇





 通勤の電車の中、あかりの頭は今自分が置かれている非日常的な生活について考えていた。


(昼間にダークが出ないのはまだよかったなあ。仕事中に抜け出したりしなくちゃいけない訳じゃないし)


 戦い始めてわかったが、ダークが出るのは日が落ちている時間のみ。その為呼び出されるのは夜中に集中していた。戦っている間の体の疲労は変身を解くと共に消えるが、精神的には起きているのと変わらず全く寝た気がしないので寝不足に苛まれていた。


(まあ、今日も頑張ろっ)


 ふあーと欠伸をしながら、電車に揺られ職場の最寄り駅に到着するのを待つ。


 あかりの魔法少女としての生活はまだまだ始まったばかりであった。

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