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魔法少女☆として戦います!

今日から魔法戦士として戦います!の連載版です。1話は短編と内容は変わりません。

 通勤ラッシュに巻き込まれながら今日も妄想する。携帯をいじることも出来ないくらいの混雑の中でひたすら非日常について考えるのが日課だった。


(あー、突然電車が止まったと思ったら怪獣が襲ってきてどうしようっ!ってなったときに突然変身できたりしないかな)


 そんなことを考えているうちに、あっという間に職場の最寄り駅に到着した。駅から徒歩5分の職場につき、終業までひたすらデスクワーク。毎日同じような仕事をこなす生活に慣れてきた頃、その日は突然やってきた。


 いつもと同じようにデスクワークを終え、帰路についていた。大学卒業と共に始めた一人暮らしの住まいは、駅から少し離れたアパートの2階。ファミリー世帯の多い住宅街のためか、日が暮れた時間は人の気配はあるものの人通りは少ない。あとは突き当たりを曲がればアパート、という時に須藤あかりは不思議な物を見つけた。


「ボールペン…?」


 電灯の明かりに照らされ地面に落ちていたのは15センチ程の細長いボールペンのような物。先の方には太陽をモチーフにしたような飾りが付いている。だがボールペンにしてはペン先もノック部分もなかった。そしてその不思議な物に触れようとした時。


「やーっと見つけたわ」

「…え?」


 後ろから聞こえてきた声に振り向いたあかりの前に居たのは、真っ黒な毛に青と黄色のオッドアイの猫だった。


「いやいや。まさか猫が喋ったりなんて…」

「するわよ?失礼ね」

「う、嘘…」


 猫が口を動かすのと同時に聞こえるのは紛れもない女の人の声。驚きで言葉をなくしているあかりを見ながら猫は続けた。


「わたしはシル。あなたたちを導くもの。簡単に言ってしまえば連絡係かしら」


 そういってシルと名乗った猫はあかりに近付いてきた。


「とりあえずそのステッキを手に取って。そしてこう唱えて。《マジカル・マジカル・マケオベル》」


 不可思議な状況に困惑しつつも、常日頃から思い描いていた非日常に引き込まれたあかりは戸惑いつつ、ステッキと呼ぶには些か短いものを手に取った。そしてシルに言われるがまま唱えた。


「《マジカル・マジカル・マケオベル》っ!」


 そう言った瞬間、あかりの全身は淡い光に包まれ、気付いたときにはピンク色の衣装を身にまとっていた。袖はレースのパフスリーブ。胸元には大きなリボン。そのリボンの中央にはステッキと同じく太陽をモチーフとしたブローチ。ウエストは絞られていて、そこからふんわりと太股まで裾が広がったスカート。靴は膝下までのぴったりとしたブーツで、レースのリボンがあしらわれている。

 手にしていたステッキもいつの間にか1メートル程の長さになっており、キラキラと光を放っている。


「な、な、な、ナニコレ!!」

(え、うそ、変身した!?っていうか、これ現実!??)

「まあまあ似合ってるじゃない。今のその姿ならあの子たちと同じくらいだし…これなら大丈夫ね」

「あ、の子たち?」

「ええ。あと二人あなたと同じ選ばれし少女いるわ。二人とも年は…14歳だったかしら?」

「え、14歳って…わたし今中学生に見えるの!?」


 鏡がないのであかりには確認できないが、変身後のあかりは身長はそのままだが顔は幼くなり、ミディアムボブの黒髪は毛先がくるくると巻かれた金髪になっていた。


「その姿のあなたは《ソルン》。太陽を司る者。」

「わたしは、ソルン…」


 その名前を聞いた時、あかりは何か大切なことを忘れているような気がした。

 思い出そうとしても思い出せないが、どこか引っ掛かっている。

 考え込んでいるあかりを見つめていたシルは、切り替えるように話し掛けた。


「さて。そろそろ行くわよ」

「何処に?というか、今まで着てた服とか鞄はどうなったの?」

(あのスーツ結構高かったからなくなると困るんだけど…)

「この状況でそういうことを気にするって…あなた変わってるわね。」

「…現実的と言って。」


 投げ掛けた質問に対してどことなく呆れた雰囲気を感じたあかりは少しの恥ずかしさを隠すようにステッキを弄る。

 あかりを一瞥したシルは、出かけた溜め息を止め、吐き出すように説明した。


「今あなたが着ている服は、あなたが今まで着ていた物を媒介にしているの。だから変身を解けば元通り。」

「そうなの。よかった。」

「色々気になることはあるだろうけど今は時間がないわ。質問には後で答えるからとりあえず急いで行くわよ。ついてきて」


 そう言ってシルはいとも簡単に民家の屋根の上まで飛びあがり地面にいるあかりを振り返った。

 あかりはその光景を呆然と見つめたが、すぐに気を取り直し後に続こうと足に力を入れ、助走をつけて地面を蹴る。体が羽のように軽くなったかと思うほど簡単にあかりは屋根の上まで飛んだ。


(と、飛べた…)

「さあ、こっちよ」

「あ、待って!」


 飛べた感動に浸る間もなく、シルを追い掛けていく。

 前を行くシルが止まったのは、あかりが飛ぶのに慣れた頃。建設途中のビルの屋上に着いたかと思うと突然声を張り上げた。


「来る!とりあえず出来る限り避けてっ!!」

「えっ!?わっ」


 状況を把握する前に、あかりの足を目掛けて黒い蔓の様なものがビルの様々な方角から現れる。

 よくよく見てみれば、ビルの外側に、蔓と繋がっている黒い球体が浮かんでいた。

 蔓の動くスピードは早くないが、本数が多いので避けるのも精一杯。シルともどんどん距離が離れていく。


「マノンもバロネも戦闘中だから当分来れないわねっ…仕方ないわ」

(マノン?バロネ?14歳の子たちの名前…?誰でもいいけど誰か助けてっ…)


 憧れていた魔法戦士になれて嬉しかったのは少しの間だけ。あかりはこのピンチな状況に置かれて、とてつもなく後悔していた。


「ソルン!こいつを倒すにはあなたが戦うしかないわ!」

「いや、ムリムリムリムリ!」

「つべこべ言わずに言った通りにやるしかないのよ!!ステッキを蔓の中心に向けて唱えてっ!《ソルンの名の元に弾けろ、ソリュージョン》」

「っもう!どうにかなるって信じてるからね!」


 やけくそになりながら、あかりはシルに言われた通りに呪文を唱えた。


「《ソルンの名の元に弾けろ、ソリュージョン》!!」


 あかりが呪文を唱えた直後、黒い球体と蔓は光に包まれたかと思うと、弾けるように消えていった。


「き、消えた…!よかった…!」


 消えたことで安心したあかりは、ビルの屋上にへたりこんだ。

 逃げ回っていた疲労と、恐怖から解放されたことで足がガクガクと震え、立つこともままならなかった。


「お疲れ様。よくやったわ。1発で消せるなんて大したものよ」

「シル…。っていうか!あれなに!あんなのと戦うなんて聞いてな、い…よ……」


 いつの間にか目の前まで来ていたシルに文句を言おうとしたあかりだったが、激昂した瞬間すぐに意識が薄れていった。


「ごめんなさい、力に慣れてないうちに使うのはとてつもない負担になるのよね…文句は目が覚めたら聞くわ」









「…っ!」


 目覚めた時あかりがいたのは、一人暮らしをしている部屋のベッドの上だった。


「夢…?」

(いやまさか。あんなにはっきり覚えてるのに?)


 帰宅途中だったことは間違いないが、自室で寝た記憶はあかりにはなかった。だがあの不可思議な出来事が起こった後どうやって部屋に帰ったかどうかも分からなかった。


「そういえば今何時…わ、嘘!遅刻しちゃう!!!」


 慌てているあかりはまだ気付いていない。

 テーブルの上に太陽をモチーフにしたステッキと、白い小さなコンパクトが置いてあることを。

 そして魔法戦士ーーソルンとして戦う生活が始まったことを。


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