表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/45

新規部員確保作戦

「なによりもサッカーは十一人いないと戦力に大きな差が出る。その欠点を埋めるためにもやはり、少なくてもあと二人は欲しいところだ」

「それなんだけど、今度新入生にやる部活動発表会があるから、それでなんとかすればいいんじゃないかな」

「ふむ。この学校にもあるんですか」


 顎に手を当ててふむふむと考える桜井。

 俺は石見先輩に聞いてみた。


「この学校ってそんなに部活あるんですか?」

「いや、そんなに多くないよ。なんせ新設校だしね。五人から部活動を作れて、同好会みたいのは認められないから、えっと……信也くん、わかる?」

「文化部と運動部を合わせて十七か八だったはず。運動部のほうが圧倒的に少ないし人数が揃ってないところも多いけどね。今年の一年が入ってきたからそれでちょっと事情は変わるだろうけど、僕が知ってる限りだとこの数」

「さすが信也くん!」

「褒めても何も出ないぞ」

「へー。じゃあその部活動発表の時間って結構取れるんですか?」

「んー、ところがそうでもないんだよね。ウチの学校ってそこまで部活に力入れてるわけでもないし、どっちかっていうと進学校みたいなところだから、結局一時間ぐらいしか発表の時間をとってなくて、逆算すると、一つの部活はだいたい五分くらいしか時間ないかな。って昨日の部長会議で言ってた」

「五分、スか」


 短いな。やっぱりサッカー部なんだからサッカーをした方が良いんだろうけど、サッカーってシュート以外は地味なところあるし、テレビとかで活躍を取り上げられるのもゴールを入れた選手だ。DFなんて経験者でも上手さがわからないなんてこともある。

 あとは個人技でヒールリフトとかリフティングで大道芸みたいなことをすれば『魅せる』ってことはできるんだろうけど、それだとサッカー部じゃなくてパフォーマンス部って感じになっちゃってコレジャナイ感が出てしまう。

 どうするのかと思って桜井を見ると、桜井がこっちを見ていてびっくりした。


「な、なんだよ」

「なんか考えてそうな顔だったからさ」

「まぁ一応部員だし」

「それはいい心がけだ。助かるよ」


 こいつ、わりと素直に物事を言うのな。


「で、何かいい案は思いついたか?」


 俺は今さっきまで考えていたことを簡単に言ってみた。


「でも結局俺たちサッカー部だろ? だったらやっぱりサッカーした方がいいよな」

「そうだな。サッカーで、誰でも知ってることをした方がわかりやすさもいいと思う」

「そういうお前はなんか思いついてるのかよ」

「もちろんだ」


 口元をニヤリとさせて得意げな笑みを浮かべる桜井。

 ちょっとぞくっとした。


「で?」

「俺が考えてるのは、サッカーマンガの再現だ」

「再現?」

「何それ! 超面白そうじゃん!」


 意外にも小笠原先輩が食いついた。横から身を乗り出してきた。

 そんな小笠原先輩の声で、他の部員の目線が小笠原先輩、桜井の順で集まった。


「そんなに不可能なものはやりませんよ? あと怪我するやつ」

「俺マンガの技とか練習してた時期があってさー、キャプテン翼とかホイッスルとか読んでたし」

「そっち派かー。俺はシュート派だったなー」

「えーファンタジスタ派はいないのかよー」

「懐かしいなー」


 先輩たちの中でサッカーマンガ談義が始まりそうだったので、桜井がその流れにのらせないようにと早めに切り出した。


「その再現ももちろん成功率ってなってくるとだいぶ低いと思うんですよ。なので、動画を撮りましょう」

「動画? どっかのサイトに投稿でもするわけ?」

「今の時代、ネットは怖いですからね。インタビューとか来たら困るじゃないですか」


 何でまんざらでもない顔して言ってんだ。台詞と顔が一致してないっての。


「発表の時に上映するだけですよ。高校生がCGなんて作れるわけもないですし、ナレーションで何かその時の苦労エピソードを入れれば、立派な発表になると思いませんか?」

「それはおもしろそうだな。でも部活発表は明後日だぞ? そんな一朝一夕(いっちょういっせき)でできるもんなのか?」

「それをみんなで考えましょう。できるやつを選別したり、何回かやってできそうなやつならやってみましょう」


 一気に盛り上がる部室内。

 そんな中、田辺が疑問を投げつけた。


「ってゆーかさ、動画にするって言ってもさ、俺はそんな編集とかできないぜ? パソコンだってないし」

「あっ、そう言えば僕の家もない」

「問題はそこになるんだ。誰か身内でも友達でもそう言うことができる人はいませんか?」


 そんな中、秋田先輩が手を上げた。


「それは僕がやろう」

「秋田、お前そんなことできるのか?」

「昔妹に頼まれてちょっとだけ勉強したことがあるんだ。だから動画の切り貼りくらいで良いならできるぞ。その代わり、僕はマンガの再現なんてできるようなテクニックはないから編集を担当ってことで勘弁してくれ。それでいいか? キャプテンさん」

「十分です。じゃあ録画のカメラは俺が用意するんで、編集は秋田さんにお願いします」

「合点」

「じゃあ今日は……って、まだ残ってても大丈夫ですか? 初日からこんなに仕切っちゃってアレですけど」


 窓の外を見ると、傾きだしていたはずの日が、夕暮れを通り越していい感じに暗くなりつつあった。

 他の人の顔を見ると、いろんな人とチラチラと目が合い、全員考えていることは同じようだった。

 そんな全員の意見を代表してか、似鳥先輩が笑顔で言う。


「楽しくなってきたんだからダメなわけないだろ!」


 桜井はそれを聞いて、笑顔で返し、カバンからノートを取り出した。


「じゃあ再現したいやつを決めましょう」


 その言葉と共に、部室内にマンガの技なりの名前が飛び交った。

※サッカーマンガ

世の中にはたくさんサッカーマンガがあります。

有名なやつから超次元なやつまで。

サッカーは国境と次元を超える。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ