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練習試合

「もっと右だ! 西岡ぁ! サイドちゃんと見てろよ! 白岩はもう少し前に出ろ!」


 普段から寡黙なDFの二人に豪快に指示を出すキーパーの清水。

 そして今は練習試合の真っ最中。

 前の大会で知り合いになった米田さんから連絡を受けた俺たちは、今こうして練習試合をしている。名波坂高校で。

 対戦相手は米田さんの新東高校ではなく、その知り合いのいる篠津(しのつ)高校が相手だ。米田さんの知り合いの小早川(こばやかわ)さんはFWの7番だ。田辺や似鳥先輩とは違うタイプのFWで、長身で楔の働きをする選手だった。そのため、篠津側のフォーメーションは『4-2-3-1』となっていた。最前線の小早川さんにボールを放り込み、そのポストプレーでボールをMFの三人に落としていく攻め方だった。

 コーナーキックなんかではその長身は目立っていて、白岩先輩よりも高いように見えた。しかし白岩先輩はガタイが良い分、小早川さんをフリーにさせることはせず、身長差でのミスマッチとなる俺の代わりに小早川さんのマークにつき、俺が最終ラインを任されることもあった。

 そして先ほど指示を飛ばしていた清水である。

 『試合中だと先輩後輩は関係ない』という清水は、先輩のことは呼び捨てにし、敬意という言葉をどこかにぶん投げていた。それを反対する人間は誰もおらず、DFの白岩先輩と石見先輩は『指示出すのが苦手だから逆に助かる』と言って、清水の指示をむしろ喜んでいた。

 試合中にキーパーからの指示が入るだけで、ここまでディフェンスラインが落ち着くとは思っていなかった。思えば中学の時もキーパーからの指示があったからこその守りのしやすさだったのかもしれない。

 今回の練習試合で二校を名波坂に招いたのには理由があった。

 練習試合とはいえ、一応本気の試合をすることになるのだが、一度本気を出し切ってしまうと、疲れてすぐに次の試合を行うことができない。そこで、一軍と二軍まである新東と篠津を招いて、リーグ戦方式で試合をこなしていくことにした。試合時間は通常の時間よりも短い30分ハーフで行っていた。こう説明をしているのは俺だけど、全部米田さんと桜井が決めたことだった。

 

「ナイスカット!」

「よこせ!」


 俺がボールをカットすると、後ろからは清水が褒め、前の試合の時よりも余裕のある小笠原先輩がボールを要求する。

 俺は悩むことなく小笠原先輩にボールを渡すと、ハーフウェイライン付近で先輩はターンして前を向いた。そして前に空いていたスペースを埋めるようにドリブルで少し持ち込むと、敵のボランチが寄ってきて、無理にドリブルで行くこともないので、斜め後ろにいたフリーの桜井へとパスを落とす。

 桜井は顔を上げて前を見ると、小笠原先輩の横に空いた右のスペースにドリブルで切り込み。右DFが飛び出してきたタイミングを見計らって、その後ろにスルーパスを出す。そこに走り込むのは菊池で、ライン際から走ってきて、スペースに出されたボールに追いつくと、CBが寄ってくる前にダイレクトでセンタリングを上げた。とはいえ、菊池にセンタリングの精度はまだ期待できず、大体ゴール前に飛んでいった。

 ゴール前では似鳥先輩、田辺、小笠原先輩が待っていたが、身長で勝てずに割とあっけなく返されてしまった。

 そこで俺の出番だ。

 セカンドボールを拾うのが俺の役目で、相手選手がキープしようとしたところへ厳しめにチェックへ向かい、プレッシャーをかける。今回はその役目が俺だけではなく、桜井も同様の仕事をすると自ら宣言をしていたので、そのチェックは二人で向かい、倍のプレッシャーを与える。

 そして割とあっけなく返されたボールを割とあっけなく取り返し、再び攻めへと転じた。


ピッ、ピッ、ピー。


 しかしここで試合終了。

 0-1という惜敗で、11人での初試合としては上出来だったと思う。

 これが公式戦ならこんなことを言う余裕はないが、練習試合なのだから負けから学ぶこともできるだろう。


※ポストプレイと楔の役割

「ポストプレイ」と「楔」はほぼ同じ意味で、前線にきたボールを他の選手へ渡すために中間管理職の役目である。


ヘディングでボールを落としたり、カウンターするには人数が少ない時に攻めの人数が整うまでキープしたり、下がってボールを受けに来て他の選手へとボールを回したりと方法はさまざまである。

名波坂でいうところの桜井がそれにあたるが、桜井はパス回しをするよりもドリブルでかき乱す方が多いように感じるので、ちょっとちがうかもしれないけどあってるかもしれなようにかんじるくーぽんまがじんほっとぺっぱー

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