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勝利報酬と罰ゲーム

 桜井がキャプテンになってから初の練習らしい練習。

 フットワーク練習から始まり、念入りにストレッチ、そしてパスにトラップ。それからシュート練習をした。その後、三対二で攻めと守りをし、『制限時間二分以内に決められなければグラウンド一周』という罰ゲーム付きだった。

 それが終わって、昨日みたいなミニゲームをして、最後に軽く走ってストレッチして締めた。もちろんミニゲームで負けたほうがグラウンド整備という罰ゲーム付きだった。

 俺のチームが負けた。桜井と似たような性能を持つ俺が、なんだか桜井の劣化みたいになってきて、しかも疫病神みたいになっている。……二日目でそれはネガティブすぎるか。

 グラウンド整備をしてから部室に入ると、なにやら田辺の声が聞こえてきた。


「こんなこと考えながら動けばいいのか」

「知っているのと知らないのとでは天と地ほどの差だからな。知っておいて損はない」

「ふむふむ。勉強になった」


 田辺が勉強?

 そう思って近寄っていってみると、桜井が戦術盤のマグネットでいろいろと教え終わったあとみたいだった。近くにいた似鳥先輩と菊池ものぞき込んでふむふむと頷いていた。


「何してんの?」

「ん? マークの離し方と相手ディフェンスの動き方」

「田辺ならできてるじゃん」

「俺ってば今まで本能的に動いてたところあるから、改めてこうやって言葉とコレで説明されると、なんかなるほどなーって思ってたわけ」


 田辺は桜井の戦術盤を指さして言う。

 たしかに、ウチの中学の監督は『マークを外せ』とか『裏に抜けろ』とかっていうことは言っていたけど、方法までは教えてくれていなかった。そういうのは個人個人で考えたり本を読んだりすればわかることなのだが、今思えば田辺はよく器用にやっていたものだと思う。ストライカーとしての嗅覚が備わっているということなのだろうか。


「桜井は教えるのが上手いよな。なんか聞き込んじゃうって感じ」

「そんなことないさ。この辺はテレビで解説の人も言ってる程度のことだ」

「って桜井は謙遜して言うけどさ、俺はもっとこういうのを知りたいなー」


 初心者の菊池は、まだまだ知らないことが多すぎる。そう言うこともあってか、桜井が基礎的なことを丁寧に教えているのが良いのだろう。


「なぁ桜井。俺にもなんか教えてよ」

「ダメだ」

「なんで!? 同じチームメイトじゃん」


 まさかの拒否だった。


「これは勝ったチームの特権だからな。勝利報酬さ」

「おいおい嘘だろ?」

「本当さ」


 ニヤリと笑みを浮かべて言う桜井。

 じゃあ俺、しばらく教えてもらえないってことじゃん。


「っていうのは冗談で、翼は俺が言わなくてもわかると思ってるんだ」

「は? 何が?」

「なんていうか、思考回路が似てるっていうか、なんていうか。おんなじこと考えてそうってこと」

「そんなことないだろ。俺はお前みたいに頭良くないしテクニックだって、その、負けてるだろうし……」


 くそっ。なんか自分で言うと敗北感が半端ない。

 しかし桜井は『そうじゃなくて』と俺の言葉を遮った。


「個人個人での考えじゃなくて、試合の流れを見ることだったり、次はこういうところにパスを出したらいいんだろうな、っていうイメージが似てそうってこと」

「マジで?」

「篤志ならわかるんじゃないか?」

「俺? なして?」

「中学で翼のパスを何回も受け取ってきたんだろ? だったらこんなところにパスを出すだろうなぁっていうのがわかるだろ?」

「まぁなんとなくは」

「今日のミニゲームはどうだった? 欲しいところにパスが来たんじゃないか?」

「言われてみれば……」

「ほらな?」


 そうドヤ顔でいう桜井。ホントか?

 隣で似鳥先輩がアハハと笑った。


「あのさ、欲しいところにパスが欲しいとか、アイコンタクトとかっていうのは試合中に本当にあるもんなん? 目を合わせただけで欲しいところがわかるなんてテレパシーじゃん」

「そのへんはこの二人のホットライン組に聞いてみたら?」


 そう言って俺と田辺に話を振る桜井。菊池の視線がこちらを見たので、田辺と顔を見合わせ二人でほぼ同時に『わかる』と答えた。その答え方に、笑いが起きた。




「おつかれっしたー」


 着替え終わり帰ろうとしたとき、桜井に呼び止められた。


「翼。ちょっとだけ残ってくれないか」

「俺?」


 コクリと頷く桜井。

 俺は田辺と西岡に先に帰るように言い、先輩たちも帰ってしまった部室に桜井と残った。

※シュート練習


基本的にはドリブルしてからシュート。

そのほかに、ゴール前に一人立たせ、その選手にパスを出し、ダイレクトで横に出したボールをそのままシュート。いわゆる壁パスからのシュート。

また、ディフェンスが一人ついた状態で、その選手を振り切ってからのシュート。

あとは打つ距離の問題で、ロングシュートだったりミドルシュートだったりと分かれる。


ちなみにロングシュートはハーフウェイラインとペナルティエリアくらいの距離からのシュート。

ミドルシュートはペナルティエリアの枠の外くらいの距離からのシュート。


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