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賢者のイシ  作者: 駿河甲斐
act4 導き
19/98

18 教えてもらった教授の真名。シオンって呼んでいい?

それじゃあ今日は休むからと、自分の部屋に戻ろうとした蒼は、ふと思い出した。

(さっき見た、変な夢のこと)

それから、今までにも何度か見ている、不思議な夢のこと。

伝えた方がいいだろうか。

けれど、口でうまく説明できるほど鮮明には覚えていない。

「ねえ、教授」

「なんですか」

「えー、っと」

蒼は悩んだ末、不思議そうにこちらを見ていた教授に、他の話をふることに決める。

「シオンって呼んでもいい?」

「だめです」

余りに早い返答に、蒼は思わずぽかんと口を開ける。

「そ、即答」

「当然でしょう。許可できるわけがない」

彼は「ジェイラ」と、何かを試す様な表情と口調で言った。

勉強成果を試されていると気づいた蒼は、慌てて知識の倉庫をひっくり返す。

言霊使い(ジェイラ)

確か、暗示の力で他者を操ることができる存在。

そして、暗示をかける際必要になるのが、対象の真名(ほんみょう)だったろうか。

「えーと、言霊使い(ジェイラ)に知られたくないから、本名呼ぶなってこと?」

「その通り。いつ災種(カリク)に憑かれた言霊使い(ジェイラ)と相対するかもわかりません。そんな相手の前で真名(ほんみょう)を連呼されても困ります。だから外では決して、オレをシオンと呼ばないで下さい」

一瞬、顔を苦痛に歪ませたような教授を、蒼は怪訝に思う。

言霊使い(ジェイラ)に出会う事は滅多にないって本に書いてあったけど、それでも駄目なの?」

しかも相手の同意がなければ、動きを止めるとか思っている事を口に出させるとか、せいぜいその程度の事しかできないはずだ。

強い暗示をかける事ができるのは、相手がそれを望んだ時だけ。

一方通行では成り立たない。

並はずれて強い力を持った言霊使い(ジェイラ)の場合は、その限りではないらしいけれど、そんな言霊使い(ジェイラ)は滅多にいないはず。

だから何もそこまで慎重になることはないのではないか、と蒼は思う。

しかし教授は、厳しい表情を崩さなかった。

「これはオレだけの問題じゃない。例えば予言者(リテル)が操られ、真実とは違う予言をばらまかされたら、周囲はどうなると思います」

「……混乱する?」

「それですめばいい。大規模な混乱の先には、いつだって死の影がちらつく。それらを避ける為にも、オレの様に特殊な力や役割を持つ者は、言霊使い(ジェイラ)を警戒しなくてはいけない。

義務なんですよ。大地(アストリア)の常識です」

蒼は、うーんと唸る。

彼を教授と呼ぶことは、蒼が「おい、人間」と呼ばれることと同じだから、名前があるのなら呼びたいと思ったのだけれど、どうやら彼は頑なだ。

「……わかった。教授が嫌なら、これまでどおり、教授って呼ぶ」

「そうして下さい。言霊使い(ジェイラ)の力は――色々な意味で厄介ですから」

教授の言葉にやや釈然としないものを感じつつも、蒼はお休みと言って扉を閉めた。



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