表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/8

@3 三姉妹

まだ書けるって事は時間に余裕があるんだな~・・・。コレがいつ消えるか、不安でどうしようもありません・・・。

 妖怪には様々なヤツが在る。動物の妖怪やら物の妖怪やら、はたまた人間から生まれた妖怪も在る。風子と賢治は共に動物の妖怪、前回追っ払った化け狸も動物の妖怪だ。妖怪の大半は人間を憎み、殺して食ったりするヤツらが多い。オレはどっちでも無ぇ半端者、人間と妖怪においては異端であり中立を立てている存在だと自負している。それは風子も解ってくれてるけど、賢治は断固として認めない。


「キミは愚かだ、妖術をまともに使えない妖怪もどきが中立を謳うなんて・・・。風子、あまりコイツを持て囃すんじゃない。すぐ図に乗って、こんな発言をするんだ」


「負け犬が言うな、負け犬が」


賢治はカッとなって、オレに飛び掛る。やる気なら、全力で相手してやるぜ!


「やめなさい!」


ブワァァッ


風子の仲裁で、この場は収まった。でも吠哮刃のせいで、部屋の押入れがぐちゃぐちゃになっちった。


「そーだ、あの後狸はどうなったの?」


風子の言う『狸』とは、前回オレ達自警団の初仕事で死の交差点を創り上げ、何人もの人間を殺した化け狸の事だ。あの後、狸は遺族を回り、そして一軒の遺族の里子になれたのだという。


ブ~、ブ~、ブ~


「お、狸からだ」


狸はケータイを持っていて、アドレスを先日交換していた。二人もケータイを持っていて交換済みだが、中々使い方が解らず苦労してるみたいだ。


「どーした狸、遊びの誘いか?」


『狸じゃない、『優斗』ってちゃんとした名前をつけてもらったんだよ!』


人間らしい名前をつけてもらってるところをみると、上手く生活できてるみてーだ。


『イヤ~、今日は合コンあってさ~。カワイイの用意してるって言うから、メンバーの穴埋めに来てほしいんだよ~』


この狸、大学生に扮して女を垂れ込んでるのか・・・。しかし、カワイイのがいるって事はそれほどまでに合コンのレベルが高いという事。マジでいかないと何もアピールができない。


「おっし、行くぜ合コン。ぜってーその人達カワイイんだろーな?」


「「合コン?」」


しまった、後ろに二人いるのを忘れてた・・・。仕方ない、三人で行こう・・・。

 合コンの場所、デニーズにオレ達は先に行って狸が来るのを待っていた。とりあえずドリンクバーを頼み、コーラをぐびぐび飲んだ。


「あ、あの人達が例の三人です」


狸が女子大生を連れて到着し、合コンを始める事になった。なんという可愛さに美しさ、ホントに人間なのかコレ?・・・もしや狸なのではあるまいな?そんな冗談は御免だぜ。


「私は沙耶、このコが真紀でその一番カワイイコが達子。本日はよろしくお願いしま~す♪」


(妖気は無い、ホントに人間だ)


賢治が妖術を使い、話しかけてくる。とりあえず狸じゃない、人間の女子大生で間違いなしだ。


(ううん、この人達は間違いなく妖怪よ)


風子が割って入ってきた。風子を見てみると様子がおかしい、何かに怒っているみたいである。オレは覚えたての、通信妖術を使って風子を落ち着かせようと試みる。


(風子、妖怪なのかどうかは何れ解る。でも、何でオマエ今怒ってんの?)


(ふん、鼻の下伸ばしてるヤローにムカついてるだけよ)


嫉妬だ、早くも嫉妬で険悪ムードが起こりそうな予感だぜ・・・。あっちの女子大生も、風子の険悪ムードに気付き始める。コソコソと、オレ達に聞こえないように話し出した。


「もう気付かれたんじゃない?ワタシ達三人とも、妖怪だって・・・」


「え?でも、気付いてるなら攻撃してくるんじゃ・・・」


「案ずるな。コレの最中に油断したら、一気に殺してしまえば・・・」


風子は少し口元を上げ、オレ達に伝える。


(やっぱり、あの三人は妖怪だわ。自分達で話してたし、どうやら性格も危険よ)


(流石に狼の妖怪、鋭い聴覚を持ってるね)


(んじゃ、狸もヤバイんじゃねーか)


オレ達三人と、向こう側の三人の見えない駆け引きが始まった。狸はまったく気付かず、合コンの幹事として場を盛り上げていく。くっそ、コレじゃいつ攻撃されるか読めねーぞ・・・。


(狸に通信するか・・・)


(ムリだよ、ボク達の通信と違って狸の通信妖術は特別なんだ)


狸にも通信ができない、ずっとココから動けない。それは向こうも同じだが、狸が実質人質になっている分、確実に不利だ。もう、ココは賭けだ。


「やっべ~、緊張でトイレしたくなった。ちょっと失礼するぜ」


「あ、ワタシも~」


オレがトイレに行くのと同時に、真紀って女が立ち上がる。トイレで始末する気か、上等だ。


(上手くやれとは言わない、敵わないと思ったらすぐに逃げるんだ)


賢治が励まし、オレと真紀の闘いの幕が開けた。

 トイレに着くなり、真紀は本性を現し変化した。顔は醜く、腕や体が棒切れの如く細い。


「ワタシは高女三姉妹の末っ子、真紀。オマエの命、ココで食らってくれる!」


「テメーに食われる命ほど、オレの命は柔くねーぜ!」


オレは妖気を発し、妖怪化する。高女は少し驚くが、不敵に笑った。


「オマエ半妖か?忌まわしい存在め、骨の髄まで食らってくれる」


「テメーのそのイカレ思考、片っ端から食い潰す!」


ちなみにオレは半妖じゃねぇ、人間だ。人間だが実験のせいで妖怪化できる、どこにでもいる高校生なんだよ。高女は体を自在に伸縮させ、オレを翻弄した。


「ふん、高女とは人間から生まれ人間の男を憎む事で存在する妖怪。だから食らうのは、若い男だけだと決めてるのさ!」


「体を伸び縮み、気色悪いからやめろブス」


高女はカッとなり両腕をこっちに伸ばしてきた。オレはすかさず印を練り、何かしらの妖術を使ってみる。今回は口から、大きな火球が吐き出された。


ゴウウウッ


「ぐえええっ!」


高女は耳を塞ぎたくなる声をあげ、苦しんでいる。この術は『火気弾』、と命名した。高女は立ち上がり、腕をまた伸ばす。だが、今回はオレのほうへ伸ばさず逆方向へ伸ばしていった。


「こうなれば、他の人間を食らい力を増幅させてやる・・・」


ガシッ


トイレ近くの席のカップルを捕まえ、自分の前に運んでくる。コイツ、まさかその人達を・・・。


バクンッ、ガリガリ、ガブゥ・・・ゴクン


「ヒャヒャヒャ!力が湧いてくる、湧いてきよる~!」


高女の妖気が爆発的に、体中から放出した。人間を食らってパワーを増すなんざ、イカレてんぜ。


「テメー、今何した?」


「何だと?ヒャヒャヒャ、人間を二人ほど食らっただけさ」


コイツ、ぜってー許せねぇ・・・。コイツは殺してでも止めるべき相手、勝つしかねぇ。


「ヒャヒャヒャ、潔く生を諦めな!」


ググッ・・・


高女のパンチをオレは顔面で受け止めた。高女は怯み、後ろへ仰け反る。血がボタボタ垂れてしまってるが、まだまだ動ける。


「オマエ、一体・・・」


「喰らえクソアマ、二度と生き返んな」


ズドンッ


オレの拳を胸に受け、高女は光となって消えた。妖怪の末路は、光となって消える。死体は残らないのが、妖怪の特徴だと賢治が言っていた。少し虚しさを覚えたが、コイツのした事を考えるとそんなものはすぐに頭から無くなった。


「ぎゃあああっ!姉さん、何で・・・ぐああっ」


あっちから悲鳴がする、早く戻らないと戦況がヤバイ!


「人間だけじゃ飽き足らず、妹までも食うなんて・・・。醜いにもほどがあるわ・・・」


戻ってみると、高女の妖気が馬鹿高い。コイツ、かなりの人間を食らったに違いねぇ・・・。


「死ね!狼娘に百足男が!」


バキィイイイッ


高女は暴れだし、店はどんどん崩壊していく。客は既に半数以上は逃げたが、一部は瓦礫に潰され、死んでしまった。


「バーーークスラッシュ!!」


ブオオオッ


風子の吠哮刃が高女に直撃し、動きを封じた。それに乗じて賢治は、視入毒を突き刺そうとする。


「視入毒、キミの命は後五分だ!」


「甘いぞ、闘いを知らぬ青二才が粋がるでないわ!」


ドガッ


高女は首を伸ばして、賢治に頭突きを喰らわせた。賢治は後ろへ飛び退り、片膝を突く。風子は賢治にすぐさま、医療妖術を施そうとする。高女は、そうはさせまいと風子に腕を伸ばしてきた。


「ムダだムダだ!どうせ死ぬ、今更足掻くでない!」


ズドォオン・・・


オレは風子の前に立って、高女の凶手を受け止めた。


「早く治療しろ、コレもそうは持たないぜ」


オレは自分の妖気が下がってる事に、薄々気付いていた。風子もオレの妖気の減り具合を察し、賢治を早急に治療してくれた。


「何だ!?何故こんな、人間の血を持つ輩に!」


「消えろクソアマ!妖術、火気弾!!」


ゴオオオオオッ!!


オレは最大パワーで、高女に火気弾を放った。店内は業火に包まれ、高女はその炎に苦しみだす。


「うぎゃああっぁ!」


高女は完全に焼き尽くされ、オレ達は業火に包まれた店内を走り抜けた。途中蹲っている狸を見つけ、一緒に外に出た。


「アレが妖怪のスタンダード、人間を憎み食い殺す・・・。オレ、人間と妖怪の中立とか言ってたけど甘いな・・・。オレは中立どころか、関係を更に悪くしちまった・・・」


「イヤ、キミはちゃんと役目を果たした。キミの今の立場は、中立の立場だよ」


賢治はオレの肩をぽんと叩き、微笑んだ。


--------------------------


 ココは滋賀の大江山、悪鬼の総本山でありかの有名な酒天童子が住み着いた場所である。今は酒天童子に代わり、部下であった茨木童子が頭として数多の悪鬼と共に根城としていた。


「高女三姉妹、任務に失敗し倒されたようです」


「そうか、ご苦労だN☆A。朱の盆、下がっていいZ☆O」


茨木童子の前にいる血の瞳を持つ男は、茨木童子の部下一の情報屋、朱の盆である。茨木童子は情報を聞くなり、声を出して笑い始める。


「ククク、朱の盆よ。次はキサマが行ってみR☆O、様子見程度にしとけY☆O」


「様子見ではなく、ヤツら三人の首を持ち帰りましょう」


朱の盆は茨木童子の前から、フッと消えた。


 

今回の登場人物


化け狸(19?)...前回の自警団初仕事で、悪さを働いていた。遺族の一軒の里子となり、優斗と名乗っている。結構女好き。


高女(?)...化け狸が開いた合コンの、化け狸が連れてきた三姉妹。人間を憎み食い殺す事で、妖気を増幅させる事ができる。体を自在に伸縮できる。なお、この高女は鬼女の類に入る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ