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悪の妖精と出会って少しだけ変わった虐げられ子の話

作者: 山田 勝
掲載日:2026/07/18

「お嬢さん。私は怪しい者ではありません!そんなに怯えない事を要求します」



 私はロシアの妖精、灰色の枢軸卿です。ええ、民話の中に繰り返し現われ正義に倒される存在。

 皇帝ツァーリー、赤い皇帝ツァーリーの鬱憤を晴らす役目をしておりました。


 それが、現世で本物が現われて、私は邪魔だと黒魔術でヤポンスキーアニメのように異世界に転移させられたのです。

 まあ、ロシア版の黄色い熊と思えば良いでしょう。


 つまり・・・


「地獄は閉店、何故ならば現世が地獄になったからさ」


 シーン!


「ヒィ」



 私はターニャ、湖に釣りに来たら、変なおじさんがいた。灰色のローブを羽織っている。やせたおじ様のようだわ。

 全く意味の分からない事を言うわ。



「つまるところ。市場経済ではなく、今だけは、共産主義的分配、つまり食べ物を分けることを要求します」

「は、はい!」


 釣ったマスを一尾あげて、私は逃げた。



「はあ、はあ、はあ、魔物かしら・・・」


 家に戻ると、お義母様と2人のお義姉様が待ち構えていたわ。


「ターニャ、遅いわね。さっさと食事の準備をしなさい」

「それが終わったらドレスの準備をしなさい」

「あんたは留守番、私達は舞踏会、その間掃除と洗濯をしなさい」


「・・はい」


 お魚四尾釣って、一尾あげたから私の分はないわ・・・


「何?文句あるの?」

「いえ、ございませんわ」



 義母、義姉を見送った後、床を拭いていたら轟音が響いてきた。段々近づいて来たわ。



 ゴゴゴゴゴゴゴ!シュウ~!


 家の前で止ったわ。


 恐る恐るドアを開けると・・昼間のおじ様が鉄の乗り物に乗っていたわ。上半身を鉄の乗り物から出していた。


「やあ、お嬢さん。お魚をくれたお礼に舞踏会に連れていこう」


「おじ様・・・・私ドレスを持っていませんわ。ダンスも習っていません」


「大丈夫、ドレスをあげよう。ソ連時代の女性兵士の礼服をあげよう。ダンスも教えよう」


「ええ・・・」


 カーキ色の変わった服を着て、ダンスの練習をしたわ。


「はい!ハラショ!お嬢様、足腰強いね。さすが仕事をしていただけはある」


「ララララ~、はい・・・」

 つま先で立ち。腰を落として上下に跳躍しながら膝を蹴り出すダンスだわ。


「コサックダンスだ。初歩だがこれで充分だ。さあ、行こう」

「・・はい。でも留守番が・・・」

「ワン!」

「あら、ワンちゃん」

「うむ。お留守番をしてくれるシベリアンハスキーのオルガ君だ」

「ワン!ワン!」


 私は戦車というものに乗り城に向かったわ。


「ワン!」


 上に乗り。おじ様は中で御者をしてくれているそうだわ。馬がいないわ。本当に魔道士なのかしら。


 ガタガタタ~


「これはT-80戦車、乗り心地最悪の素晴らしい戦車だ」

「はい・・」



 城に行き・・・


「はい!はい!はい!」


 舞踏会場のど真ん中でコサックダンスを披露して・・・

 皆に騒がれた。



「な、何だ!これは」

「王子、危ない。下がって!」

「陛下、外に魔道馬車がおります!」

「うむ。騎士を配置しろ」


 大騒ぎだったわ。


「あら、そろそろ時間だわ」

 私は会場を後にした。


「つ、捕まえろ!」

「逃がすな」


 何故か兵士が追いかけてくるわ。


「キャア!」


 転んだ拍子に靴が脱げた。激しいコサックダンスのせいだろう。

 何とか城門まで着いたわ。


「よし、帰るぞ!」

「はい」



 家に戻ると・・・


「ワン!ワン!ワン!」

「ヒィ、何で散らかっているの?」


 ワンちゃんが家を走り回っていたわ。

 それだけではない。


「ヒィ、泥棒・・・だわ」


 お義母様とお義姉様達の宝石箱やクローゼットが荒らされているわ。

 泥棒が入ったのね。


「ワン!」

「ワンちゃん。お留守番をしてくれたのではないの?」


「おっと、ハスキーは番犬には最も不向きだ」


 そんな。また、怒られる。折檻される。

 すると、心の隙間に入り込むようにおじ様はささやいてきたわ。



「君の父は無関心。義母と義姉に虐げられる人生だった。革命を起さないか?」


「革命・・・?」


「殺すのだよ。ここにAK47・・・カラシニコフがある。銃だ。これで殺すのだ」


 ババババ!と銃と言うものが火を噴いた・・・。


「君が殺すのだ。革命に血はつきものだ。そしたら、父は君に関心を示すのではないか?」


 いや・・・・


「もし、殺さなかったら君は折檻される。更に泥棒も入られたのだ。さあ、今回は何日閉じ込められて何日食事抜きになるのだろうね」


 いやだわ・・・




「さあ、銃を取り給え。革命はこの家から始りやがて村、それから国へ波及するのだ。君は書記長になれるよ。毎日お腹いっぱい食べられて、素敵な殿方から愛をささやかれるだろう。嫌な奴は強制収容所に閉じ込められば良い」



 いやだ。



「革命は君の罪ではない。義母、義姉、放置した父が悪い。さあ、銃を取り給え」



 銃を押しつけてきたわ。

 人を殺すなんて・・・


『ターニャ、まっすぐ生きるのよ』


 お母様の言葉が浮かんで来たわ。



「・・・ぃゃ」


「ほお、聞こえないな」


【いやだ!】


 グスン、グスン、私は泣きながら銃を押しのけた。



「ハラショ!『いや』とやっと言えたじゃないか?君は強い女の子だ。もはや私の助けは必要ない。スパチ!」


 え、今まで助けていたつもりなの?と問う間もなくスパチとの詠唱で眠くなったわ。


 ガタン!



「ワン!ワン!」


 朝、起きたら、義母と義姉がいたわ。


「全く、この子は!」

「どうしてくれようかしら」

「私達の宝石は全て無くなったわ」



 私は・・・


「お義母様、元々その宝石はお父様が私宛に贈ったものです」


「生意気ね。食事抜きよ」


「嫌です。いつも私に食事を作らせていたのに!」


「「「まあ、生意気!」」」

 ぶたれると思ったら父の声がしたわ。


「何をしている・・・」


 途端に猫なで声に変わる。


「まあ、あなた。ターニャが暴れたから」

「お義父様、そうですわ。少し、ほ~んの少し叱っただけです」

「ええ、少しもぶってはいませんわ」


「そうなのか?ターニャ」



 いつも私は義母の話に合わせるが・・・あの無茶苦茶な夜を経験してから怖くなくなったわ。


「お父様、違います!」


 私は今までの虐待を父に報告をしたわ。



「な、何だと!仕事で家を空けるから再婚をしたのに!」

「「「ヒィ」」」


 お父様は私に無関心ではなかったわ。


「すまない。離縁をする。心配だ。一緒について来てくれ」

「大丈夫です。離縁はお父様のお好きなように」

「ターニャが寂しくならないように結婚をしたのだ。未練はない」


「そ、そんな。私達はどうやって暮らしていけば・・・」



 その時、また来訪者が現われたわ。

 ノックもしないでドアを開ける。


「おんどりゃー!女はこの靴をはけ。合ったら王宮へ連行じゃ!」

「昨晩の変なダンスを踊る女を殿下がお呼びじゃ!」


 目が血走っている騎士様達だ。王宮で脱げた軍靴だわ。


「えっ、王宮にいけるの?私よ!」

「何だ、お前か?」


「「私達も連れて行って下さいませ」」


 義母と義姉は馬車に乗せられたわ。

 鉄格子の付いている馬車だわ。


「ワン!」

「あら、ワンちゃん・・・」

「おお、犬か、飼ってもいいぞ」

「お父様、これは・・・」


 あの野郎、犬を置いて行きやがった!


「クゥ~ン」




 ☆☆☆


 聞いた話では義母達は強制労働をさせられたそうだわ。



「君たち、王城前の石畳をあの奇怪な鉄の魔道車が壊して進んだ。3人で直したまえ」


「ヒィ」

「王子様、これは違うのですわ!」

「そうですわ。休ませて下さい」



「なら、休憩時間中は、あのダンスをやれ!」

「「「ヒィ」」」


 王子はおかんむりだそうだわ・・・重い石を運ばせている。



・・・・・・・・・・・・・



「クゥ~ン」

「はい、お散歩ね」


 あれからお父様は仕事で旅だった。

 家政は私が担当する。二度とつけ込まれないようにと少しだけ気が強くなった。


 あのおじ様は今でも本当に助けるつもりだったのか分からない。



最後までお読み頂き有難うございました。

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