悪の妖精と出会って少しだけ変わった虐げられ子の話
「お嬢さん。私は怪しい者ではありません!そんなに怯えない事を要求します」
私はロシアの妖精、灰色の枢軸卿です。ええ、民話の中に繰り返し現われ正義に倒される存在。
皇帝、赤い皇帝の鬱憤を晴らす役目をしておりました。
それが、現世で本物が現われて、私は邪魔だと黒魔術でヤポンスキーアニメのように異世界に転移させられたのです。
まあ、ロシア版の黄色い熊と思えば良いでしょう。
つまり・・・
「地獄は閉店、何故ならば現世が地獄になったからさ」
シーン!
「ヒィ」
私はターニャ、湖に釣りに来たら、変なおじさんがいた。灰色のローブを羽織っている。やせたおじ様のようだわ。
全く意味の分からない事を言うわ。
「つまるところ。市場経済ではなく、今だけは、共産主義的分配、つまり食べ物を分けることを要求します」
「は、はい!」
釣ったマスを一尾あげて、私は逃げた。
「はあ、はあ、はあ、魔物かしら・・・」
家に戻ると、お義母様と2人のお義姉様が待ち構えていたわ。
「ターニャ、遅いわね。さっさと食事の準備をしなさい」
「それが終わったらドレスの準備をしなさい」
「あんたは留守番、私達は舞踏会、その間掃除と洗濯をしなさい」
「・・はい」
お魚四尾釣って、一尾あげたから私の分はないわ・・・
「何?文句あるの?」
「いえ、ございませんわ」
義母、義姉を見送った後、床を拭いていたら轟音が響いてきた。段々近づいて来たわ。
ゴゴゴゴゴゴゴ!シュウ~!
家の前で止ったわ。
恐る恐るドアを開けると・・昼間のおじ様が鉄の乗り物に乗っていたわ。上半身を鉄の乗り物から出していた。
「やあ、お嬢さん。お魚をくれたお礼に舞踏会に連れていこう」
「おじ様・・・・私ドレスを持っていませんわ。ダンスも習っていません」
「大丈夫、ドレスをあげよう。ソ連時代の女性兵士の礼服をあげよう。ダンスも教えよう」
「ええ・・・」
カーキ色の変わった服を着て、ダンスの練習をしたわ。
「はい!ハラショ!お嬢様、足腰強いね。さすが仕事をしていただけはある」
「ララララ~、はい・・・」
つま先で立ち。腰を落として上下に跳躍しながら膝を蹴り出すダンスだわ。
「コサックダンスだ。初歩だがこれで充分だ。さあ、行こう」
「・・はい。でも留守番が・・・」
「ワン!」
「あら、ワンちゃん」
「うむ。お留守番をしてくれるシベリアンハスキーのオルガ君だ」
「ワン!ワン!」
私は戦車というものに乗り城に向かったわ。
「ワン!」
上に乗り。おじ様は中で御者をしてくれているそうだわ。馬がいないわ。本当に魔道士なのかしら。
ガタガタタ~
「これはT-80戦車、乗り心地最悪の素晴らしい戦車だ」
「はい・・」
城に行き・・・
「はい!はい!はい!」
舞踏会場のど真ん中でコサックダンスを披露して・・・
皆に騒がれた。
「な、何だ!これは」
「王子、危ない。下がって!」
「陛下、外に魔道馬車がおります!」
「うむ。騎士を配置しろ」
大騒ぎだったわ。
「あら、そろそろ時間だわ」
私は会場を後にした。
「つ、捕まえろ!」
「逃がすな」
何故か兵士が追いかけてくるわ。
「キャア!」
転んだ拍子に靴が脱げた。激しいコサックダンスのせいだろう。
何とか城門まで着いたわ。
「よし、帰るぞ!」
「はい」
家に戻ると・・・
「ワン!ワン!ワン!」
「ヒィ、何で散らかっているの?」
ワンちゃんが家を走り回っていたわ。
それだけではない。
「ヒィ、泥棒・・・だわ」
お義母様とお義姉様達の宝石箱やクローゼットが荒らされているわ。
泥棒が入ったのね。
「ワン!」
「ワンちゃん。お留守番をしてくれたのではないの?」
「おっと、ハスキーは番犬には最も不向きだ」
そんな。また、怒られる。折檻される。
すると、心の隙間に入り込むようにおじ様はささやいてきたわ。
「君の父は無関心。義母と義姉に虐げられる人生だった。革命を起さないか?」
「革命・・・?」
「殺すのだよ。ここにAK47・・・カラシニコフがある。銃だ。これで殺すのだ」
ババババ!と銃と言うものが火を噴いた・・・。
「君が殺すのだ。革命に血はつきものだ。そしたら、父は君に関心を示すのではないか?」
いや・・・・
「もし、殺さなかったら君は折檻される。更に泥棒も入られたのだ。さあ、今回は何日閉じ込められて何日食事抜きになるのだろうね」
いやだわ・・・
「さあ、銃を取り給え。革命はこの家から始りやがて村、それから国へ波及するのだ。君は書記長になれるよ。毎日お腹いっぱい食べられて、素敵な殿方から愛をささやかれるだろう。嫌な奴は強制収容所に閉じ込められば良い」
いやだ。
「革命は君の罪ではない。義母、義姉、放置した父が悪い。さあ、銃を取り給え」
銃を押しつけてきたわ。
人を殺すなんて・・・
『ターニャ、まっすぐ生きるのよ』
お母様の言葉が浮かんで来たわ。
「・・・ぃゃ」
「ほお、聞こえないな」
【いやだ!】
グスン、グスン、私は泣きながら銃を押しのけた。
「ハラショ!『いや』とやっと言えたじゃないか?君は強い女の子だ。もはや私の助けは必要ない。スパチ!」
え、今まで助けていたつもりなの?と問う間もなくスパチとの詠唱で眠くなったわ。
ガタン!
「ワン!ワン!」
朝、起きたら、義母と義姉がいたわ。
「全く、この子は!」
「どうしてくれようかしら」
「私達の宝石は全て無くなったわ」
私は・・・
「お義母様、元々その宝石はお父様が私宛に贈ったものです」
「生意気ね。食事抜きよ」
「嫌です。いつも私に食事を作らせていたのに!」
「「「まあ、生意気!」」」
ぶたれると思ったら父の声がしたわ。
「何をしている・・・」
途端に猫なで声に変わる。
「まあ、あなた。ターニャが暴れたから」
「お義父様、そうですわ。少し、ほ~んの少し叱っただけです」
「ええ、少しもぶってはいませんわ」
「そうなのか?ターニャ」
いつも私は義母の話に合わせるが・・・あの無茶苦茶な夜を経験してから怖くなくなったわ。
「お父様、違います!」
私は今までの虐待を父に報告をしたわ。
「な、何だと!仕事で家を空けるから再婚をしたのに!」
「「「ヒィ」」」
お父様は私に無関心ではなかったわ。
「すまない。離縁をする。心配だ。一緒について来てくれ」
「大丈夫です。離縁はお父様のお好きなように」
「ターニャが寂しくならないように結婚をしたのだ。未練はない」
「そ、そんな。私達はどうやって暮らしていけば・・・」
その時、また来訪者が現われたわ。
ノックもしないでドアを開ける。
「おんどりゃー!女はこの靴をはけ。合ったら王宮へ連行じゃ!」
「昨晩の変なダンスを踊る女を殿下がお呼びじゃ!」
目が血走っている騎士様達だ。王宮で脱げた軍靴だわ。
「えっ、王宮にいけるの?私よ!」
「何だ、お前か?」
「「私達も連れて行って下さいませ」」
義母と義姉は馬車に乗せられたわ。
鉄格子の付いている馬車だわ。
「ワン!」
「あら、ワンちゃん・・・」
「おお、犬か、飼ってもいいぞ」
「お父様、これは・・・」
あの野郎、犬を置いて行きやがった!
「クゥ~ン」
☆☆☆
聞いた話では義母達は強制労働をさせられたそうだわ。
「君たち、王城前の石畳をあの奇怪な鉄の魔道車が壊して進んだ。3人で直したまえ」
「ヒィ」
「王子様、これは違うのですわ!」
「そうですわ。休ませて下さい」
「なら、休憩時間中は、あのダンスをやれ!」
「「「ヒィ」」」
王子はおかんむりだそうだわ・・・重い石を運ばせている。
・・・・・・・・・・・・・
「クゥ~ン」
「はい、お散歩ね」
あれからお父様は仕事で旅だった。
家政は私が担当する。二度とつけ込まれないようにと少しだけ気が強くなった。
あのおじ様は今でも本当に助けるつもりだったのか分からない。
最後までお読み頂き有難うございました。




