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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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異世界恋愛系 作品いろいろ

婚約破棄され衝動的に命を捨てようとしてしまったのですが……色々あって幸せへ至ることができました!

作者: 四季
掲載日:2026/03/29

 数十分くらい前、婚約者だった彼アーダンに関係の終わりを告げられた。


『お前との婚約は破棄とする! 俺はお前より魅力的な女性に巡り会えた、なので、俺はそちらの女性と生きていくことに決めたんだ。それゆえ、お前とはここまでとする!』


 彼は堂々とそんな風に発して。


『ま、お前は精々地味男とでも結ばれるんだな!』


 何の躊躇いもなく二人の繋がりを絶ちきった。


 仕方のないことだ。

 それが彼の決定ならば。


 けれど私は自分で思っていたよりショックを受けていて。


 気づけばここへ来てしまっていた。


 自宅から徒歩数分で着くことのできる海の見える場所。

 人生の終着点を絵に描いたような崖。

 視界を広げれば絶望よりも深い紺色をした海面がどこまでも続く。


(……もう、終わりにしよう)


 息を吸い込んで。

 静寂に吐き出す。


 数秒間だけ目を閉じて。


(さようなら……出会ってきた人たち、ありがとうございました)


 祈りを捧げ、飛び下りた。


 ――だが私は生き延びていた。


「なぜあそこから飛び降りた」

「え……あの、ここ、は……」

「我は海の神」


 崖から飛び降り命を捨てようとした私を救ってくれたのは人ではなかった。

 健康的な肌色、長く伸びた青い髪、魚を想わせるような下半身――どう考えても普通の人間のビジュアルではない。


 ただ、精悍な顔立ちで。


 全体を見た時に明らかに人間族でない、というところを除けば、女性人気もそこそこ出そうな容姿ではある。


「命を捨てるな」

「私は……いいんです、もう。すべてを捨てると決めましたから……」

「馬鹿なことを言うな!」

「やめてください! 私は失ったんです! 大切なものを!」

「……そこまで言うとは。なら聞かせてみよ、一体何があったのか。それから判断するとしよう」


 ここまでの出来事を説明すると。


「その程度のことで死のうとしたというのか!」


 怒られてしまった。


「その程度のことじゃないんです!」

「だろうが」

「違います」

「くだらない男と離れることになったというくらいのことであれば大したことではないだろう」

「貴方にとってはそうでも! 私にとっては大きなことなんです!」


 だがここだけは退けない。


「そうやって……そうやって、大したことではないと言えるのは……貴方が無関係な立場だからです!!」


 私の心を否定はさせない。


「生きるのが嫌になったんです!!」


 すると神は暫し黙り込み、その果てで「分かった。ではそやつに天罰を下そう。……そうすれば生きてゆけるか?」と言ってきた。

 私は少し黙ってしまった、が、十秒ほどの沈黙の後「はい」と答える。

 それを受けて神は「では天罰を下す。だから生きよ。分かったか?」と低い声で発してきた。


「はい、分かりました」


 私はそう返事することしかできなかった。



 ◆



 崖から飛び降りたはずなのに、気づけば崖に倒れていた。


 元いた場所に身体が戻っている。

 風は静かに吹き抜けていっていた。


(神様……ありがとうございました)


 私は海へ祈りを捧げ、帰宅した。



 ◆



 婚約破棄から数日、アーダンと女性の訃報が飛び込んできた。


 アーダンは愛しい女性と共に命を落としたそうだ――しかも、海で。


 その夜、二人は、海へ出掛けていた。砂浜でしばらく遊び、やがて海水がある辺りにまで移動して水をかけあって遊んでいたそうなのだが、その途中でアーダンが急に転倒。しかもなぜか倒れたタイミングでおかしなうねり方をする波に襲いかかられ、彼は海に吸い込まれていってしまった。それに驚いた女性は慌てて陸に上がろうとして足を滑らせ、それによってパニックになり、溺れてしまったのだった。


 二人はあっさりとこの世を去った。



 ◆



 あれから数年、私は今、とても幸せに暮らしている。


「お疲れ! 外行ってたんだ?」

「ええ、洗濯物を干してきたところよ」

「終わった?」

「一旦終わったわ。次は回収ね。まだかなり先だけれど」

「干すの、今日は手伝えなくてごめん。回収は手伝うよ。絶対」


 思いやりのある人と巡り会え結婚できたことは本当に幸せなことだった。


「大丈夫大丈夫、量もそんなに多くないし」

「でも! 任せっぱなしってわけにはいかないよ! 洗濯とかは特に!」

「じゃあ一緒にやりましょ」

「そうしよう! 夫婦だから、一緒に!」


 あの時神様に命を与えてもらえたから今がある。

 そういう意味では神様がいてこその今日という日だ。

 今の私があるのはあの時神様が私を蘇らせてくれたから――そのことだけは死ぬまで忘れないで生きていこうと思っている。



◆終わり◆

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