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5話 ハーレルヤ!

「にゃあああああああ!」

「な、なんだ!?」


 お風呂場から響く叫び声がリビングにまで伝わる。直後、ルナが銀髪に泡を乗せ、裸の状態でリビングに転がり込んできた。俺の背中に隠れ、何かに怯えてる。ルナを追って希さんもリビングに駆け込んで来た。洗ってあげていたのか、少し濡れたタンクトップにハーフパンツと着替えられていた。

 

「こら、逃げちゃダメでしょルナちゃん!」

「み、水は怖い!」

「怖くない。洗ってあげるから、大人しくしなさい!」

「いやぁぁぁぁあああ!」


 駄々っ子のようにイヤイヤしているルナを強引に連れていく。


「……アメイジング」


 呟きがリビングに霧散した。

 落ち着いた後に見るルナの裸。最初は恐怖でしかなかったが、今や彼女の裸が芸術に思えた。駆け込んで来た時に左右に揺れていた乳房。あの大きな胸に似つかわしくない均整の取れたスタイルはもはや芸術の領域。胸は大きいのにほっそりとしたスタイル、くびれがあり、まさしく女体の神秘。

 うむ、これはおかずにしなくては。

 二階にある自室に引きこもり、ノートパソコンを立ち上がる。

 いつもお世話になっているサイトを覗く。

 サイト名は、ファザー。

 なるべくルナに似ている女性がいいな。

 検索キーワード欄に、銀髪猫耳巨乳オッドアイと打ち込む。


「なっ……!」


 サイトに表示された一文に愕然とした。


『一致する商品はありませんでした』


 くそ、なんてこった……! 

 けど、よく考えてみたらそりゃそうだ。どれだけ設定を詰め込んでいるんだ、マニアックすぎる。属性の濁流に飲み込まれているぞ。こんな詰め込んたエロ動画なんて、コスプレ物でも中々ない。

 仕方ない、この際贅沢言わず、巨乳だけでいいや。


「隆史ー! 恩返しされたいことを考えたか!」


 いきなり扉が勢いよく開いた。俺は慌ててノートパソコンを叩き閉じる。振り返ると、ルナが裸の状態で部屋に訪れていた。


「ルナちゃんー! 服を着ないとだめー!」


 希さんが慌ててルナの手を引っ張り、そのまま階下に連れて行った。


「…………」


 両手を天高くに広げる。

 ハーレルヤ、ハーレルヤ、ハレールヤ!

 ああ、神よ。自分は愚かでした。なにが巨乳だけでいいや、だ。俺はなんて愚行を犯すところだったんだ。芸術に妥協なんてない!

 先生……!! オ〇ニーがしたいです……!

 自分は諦めません……っ!

 さっさく先生の検索ワードに、銀髪猫耳巨乳オッドアイと打ち込み検索した。すると奇跡的に何件かヒットしサムネが気に入った動画を視聴する。イヤホンから聞こえてくるのは嬌声ではなく、ベッドに座りインタビューを受けている女性の映像だった。

 それを見て、怒りが沸々と込み上げてくる。

 全然、サムネと顔が違うじゃねぇか……っ! いい加減にしろ……無駄に加工の技術だけ上がりやがって! しかも、インタビューなんていらねぇんだよ!

 そのタブを怒りに任せるように閉じた。いい感じと思ったサムネのエロ動画を視聴しては、すぐに消すを何度も繰り返した。

 何度視聴しては閉じるを繰り返したかはわからない。


「…………」


 俺の息子を興奮させる動画に出会わない……このままでは風邪を引いてしまう……。

 ふと、PCに表示されている右下の時計を見て驚愕した。


「な……んだ、と……っ……」


 一時間も経っている……っ! いつの間にこんなに時間が経っていたんだ!

 これは賢者タイムになった瞬間、なんて無駄な時間を過ごしたんだと自己嫌悪に陥るパターンだ。

 もういい、お気に入りに登録しているエロ動画で消化しよう。銀髪猫耳巨乳オッドアイとか知らん!

 お気に入りに登録している動画を視聴すると、巨乳の女性が横たわっているのがノートパソコンに映し出される。

 ふう……まるで実家に戻ったかのような安心感……。

 カチャカチャ、とベルトを外し、ズボンを下す……。


「ふむ、この女性は交尾をしているのか?」

「うわあああああああ!」


 慌ててズボンを上げた。振り返ると俺の背中からPCを覗きこんでいるルナがいた。着替えたのか、希さんの部屋着を着ている。


「入るときはノックしろバカー!」

「む、そうなのか。それはすまなかった」


 男子高校生の部屋に無断で入るとか、何を考えているんだ……っ! 神聖な領域、めちゃくちゃ気を遣う空間なんだぞ!


「隆史、恩返しの内容を考えてくれたか?」


 口を開けばそればかりだな、こいつ。


「……なんでもいいんだよな?」

「ああ、もちろん」

「じゃあ……家族が欲しい……」

「家族……?」


 そのとき、イヤホンから漏れる嬌声が一際高くなった。どうやらクライマックスだったらしい。


「…………」


 どうやらルナもその声が聞こえていたようで、視線をPCに向けていた。


「なるほど、隆史は交尾がしたいんだな。そして子孫を残したいと。しかし、すまない。私は今は人間の姿だが、元々の種が違うから隆史の子孫は難しい」


 いや、家族が欲しいってそういう意味で言ったんじゃないんだけどな。


「よし、私の力を使って適当に女性を操り交尾させよう」


 力を使ってって、希さんのときに使った人を操ることを言ってるのか……?


「それはだめ」

「む、なぜだ」

「そんな人の気持ちを無視しても俺は嬉しくもない」

「わがままなやつだ。交尾できるならそれでいいじゃないか」

「だめったらだめ」


 俺の頑な拒否に、ルナは眉間に皺を寄せ不満を表情に出す。


「なら、わかった。力を使わずに相手が交尾したいと思わせればいいんだな?」

「……まあ、それなら」


 しかし、そんなことが可能なんだろうか。変なことになるまえに別のお願い事を考えておこう。

 俺の部屋が珍しいのか、ルナがキョロキョロと辺りを見回し始める。


「これはなんだ?」


 彼女が指差した方向は本棚。漫画が隙間なく並んでいる。


「漫画だな」

「面白いのか?」

「ああ、面白いよ。なんなら貸してやるよ」

「ほんとうか、ありがとう」


 ぱぁっと、花が咲いたような明るい笑顔を向けてくれる。ルナのようなとんでもない美人に笑顔を向けられ、少しドキリとしてしまった。

 

「もう俺は寝るから、自分の部屋に漫画持って行けよ」


 ルナを客間に案内してあげる。

 布団を敷いて上げると、彼女はピョンとその上に横になる。そして、さきほど貸してあげた漫画を読みふけっていた。


「あんまり夜更かしするなよ」

「ああ、ありがとう。隆史、おやすみ」

「……おやすみ」


 もう欲情も冷めてしまった俺は、自室に戻りベッドの上で横になった。瞼を閉じると、すぐに眠気が押し寄せてきて意識は暗転していった。


     ※ ※ ※


「……ん」


 尿意を感じ、すぐに目が覚めた。鉛のように重い瞼を開け、千鳥足のようにフラフラしながら階下に降りると、リビングから明かりが漏れていた。そっと扉を開け覗き込むと、希さんとルナが話しているのが見える。


「希、頼みがある」

「なーに、ルナちゃん」


 希さんが、まるで全てを包み込んでくれるかのような柔らかい笑顔をルナに向ける。


「さっき隆史の部屋に行ったら、女性が交尾をしている動画を見ていた」

「あらあら」


 希さんの顔が、笑顔から困惑に変わった。


「…………」


 ルナぁぁぁああああ!

 お前、なんてことを報告してるんだー!


「どうやら隆史は交尾がしたいみたいなんだ。希が相手してやってくれ」

「えっと、私と隆史君は親子だからそれは難しいかな……」

「そ、うか。それは残念だ」


 あいつ、本当は恩を仇で返しに来たんじゃないのか……?

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