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13話 親睦会(2)

 全員が席を着いたところで、みんながコップを片手に持ち始めた。俺とルナはがぶがぶとジュースを飲み始める。


「こらー、なんでルナっちと隆史は飲み始めちゃうの! これから乾杯するんでしょうが!」

「え、そうなの? なら最初から言ってくれよ、もう半分まで飲んじゃったじゃん」

「む、すまない。それは知らなかった、飲んだ後に乾杯はダメなのか?」

「まあまあ……親睦会なんだし、ルナちゃんそこまで気にしなくていいよ。改めて乾杯しよ」


 乾杯、と掛け声とともにみんなのグラスから甲高い音が鳴り響く。そしてちょうどタイミングよくポテトやらからあげが届いた。みんなでポテトを摘まみながらワイワイと話していると、誰もからあげに手をつけていないことに気が付いた。

 ふむ、ここは気が利く俺がレモンを絞ってあげて、みんなが手を取りやすいようにしてあげよう。

 レモンを絞り、満遍なくからあげにかけてあげる。


「あー! なんで勝手にレモンをかけたりするかな!!」

「なんでって……からあげにレモンをかけるんだろ」


 善意でからあげにレモンをかけてあげたのに、紬が急に声を張り上げ糾弾してきた。


「あたしはレモンが嫌いだからかけたくないの! 勝手にかけるのはマナー違反よ!」

「…………」


 知らんがな! からあげの皿にレモンが添えられてるんだから、レモンにかけるもんだって思うだろうが! じゃあなんですかこのレモンは、テキーラみたいに食べた後に吸うんですか? 吸わねえだろうが! かけるために添えられてるんだろうが! だったら店の意向だと思ってかけてもしょうがねえだろう!!!


「ごめんって、からあげは俺が責任持って食べるから」

「誰も食べないなんて言ってないでしょ」


 食べるんかい! じゃあつべこべ言わず食っておけよ! 我慢して食えるなら最初から我慢しろよ! なんだっていきなり俺を悪者扱いして気まずい雰囲気にしたうえで食うんだよ!! 勝手にかけてしまったから申し訳なくて逆に俺が食いづらいだろうが!!!


「み、皆さんは……サラダは、食べますか……?」

「あ、あたし欲しい! 莉子とルナっちはどうする?」

「欲しい欲しい! 岡田さんありがとうー」

「私も貰おうかな」

「俺はいいや」


 レモンが嫌いだぁ……? んなもんはな甘えなんだよ……嫌よ嫌よも好きのうち、食ってれば好きなるんだよ……。

 数字でも言ってんだ……184(いやよ)も六回足すと、1104(いいわよ)になって、どれだけ嫌ってても許せるんだよ……。


「あ、あそこに彦摩呂が!」

「……え?」


 俺が指差した方向をルナ以外の三人が一斉に向いた。その間に紬のサラダにレモンを素早く六回かける。


「ごめんごめん、気のせいだった」


 不思議そうに首を傾げる三人だったが、さほど気にする様子もなく各々のサラダに手を付ける。


「すっぱぁ……っ! なにこのサラダ、めっちゃ酸っぱいんだけど……っ!」


 紬が梅干しを食べたスッパマンよろしく、唇をすぼめて苦しそうな表情を浮かべた。

 ははは、どうだ紬! これでレモンを好きになっただろう!!


「紬、隆史がサラダにレモンをかけていたぞ」

「る、ルナさん!?」

「た~か~し~……」


 頬に真っ赤な紅葉を作ってしまった。


「……くすくす」

「岡田さん、どうしたの?」

「い、いえ……こうやって、友達と食べたことがなかったので……楽しくて……それに、う、宇上君って……意外と、面白い人なんですね……」

「…………」


 ……距離が近すぎたか、ちょっと自重しないとな。


「それよりもルナ。二人に白鳥とリレーで勝負することになったって説明しないと」

「勝負、なにそれ? 白鳥って、三組の小鳥遊さんのこと?」


 白鳥とグラウンドを賭けたリレー勝負することになった経緯を説明する。それを聞いた二人が驚きの声を上げ、両サイドで結わえられたツインテールを左右に振りながら、紬は指を差してきた。


「隆史、あんたなんて勝負してきてるのよ! あいては陸上部のエースなんでしょ、あたしたたちが勝てるわけないじゃない!」

「勝負を挑んだのは俺じゃねえよ!」

「ああ……岡田っち、ごめんね……ソフトボール部、廃部にしちゃうわ……」

「そ、その……別に、廃部になる……わけじゃ……週に一回くらいは、譲って……くれると、いいな……」


 週に一回しか活動できない部活なんて、もはや同好会レベルなんじゃないか。


「紬、大丈夫だ。私がいれば勝てる」


 ルナはずっとこの調子だ。どこからこんな自信が湧いてくるのか。


「ああ、どうしよう……ルナちゃんが速いのは知ってるけど、私みたいな運動音痴が足を引っ張って負けたら、岡田さんに申し訳なさすぎて……っ!」

「莉子、大丈夫だ。私がいれば勝てる」

「その勝負って断れないかな? 私たちみたいな素人が集まったメンバーじゃ勝てないと思うし、断れるなら今から断って……」

「それはだめだ。それだと石田たちはずっとグラウンドを陸上部に取られたままだ。まともに練習もできない」

「それはそうだけど……」

「ルナさん……岡田です……」


 ルナの熱い言葉に、莉子も紬も口を噤んだ。岡田を助けてはあげたいが、自分たちの力量では勝てるかわからない。それが二の足を踏ませている。

 煮え切らない態度の二人に業を煮やしたのか、ルナが立ち上がる。


「相手のメンバーで速いのは一人だけ。私たちなら絶対勝てる、信じてくれ。みんなで陸上部からグラウンドを取り戻そう」

「ルナちゃん……」


 その説得に心を打たれた紬が、同じように立ち上がった。彼女の瞳には決意の光が宿っているように見える。


「わかった……岡田っちのためにもあたしも頑張る。最初から負けたつもりでいたら勝てないしね!」


 紬に続くように莉子も立ち上がった。拳を強く握り、まるで燃えるような熱い気持ちと揺るぎない決意を離さないように。


「そうだね……岡田さんのためにも私も協力する。大会まで一ヶ月間、私練習するよ」

「み、みなさん……ありがとうございます……っ!」


 岡田も立ち上がり、メンバー一同の結束力が高まった瞬間だった。


「…………」


 やべ、俺めちゃくちゃ疎外感だわ……これって俺も空気を読んで立ち上がった方がいいかな? 

 とりあえず中腰で立ってるか立ってないかの微妙なところで腰を浮かせておこう。

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