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23話 今日はさっさと寝よう

 夕闇がどんどん深淵の色に変わっていき、辺りを照らすのはお店からこぼれる明かりと、道路に点在する街路灯の明かりのみ。最後と決めたお店で見た時計でタイムリミットの時間を確認し、莉子の家に向かった。

 周辺一帯のお店を駆け巡り、足が棒のようになっていた。全てのお店が快くチラシを張らせてはくれなかった。時にはぞんざいに扱われたこともあったが、それよりも協力してくれるお店の方が多かったように思える。

 汗でシャツがピッタリ肌に纏わり気持ち悪い。それは俺だけでなくルナや莉子も同じように見える。彼女たちも無我夢中で走り回っていたのが、肩で息をしたようすや汗で濡れたシャツからうかがい知れた。


「隆史、手に持ってるのはなんだ?」


 俺の両手に食い込むビニール袋。協力してくれたお店から買い物をしていたら、ビニール袋一杯に詰まった飲み物を提げることになってしまった。

 当分飲み物に困ることはないな……。


「はい、二人にあげる」


 ビニール袋から適当に飲み物を選ぶよう二人に渡す。


「ありがとう……」


 へとへとになった莉子が力なく答える。それは走り回って疲れているためなのか、猫を見つけることができなかった徒労感のせいなのか。


「今日はここまでにしよう。これ以上は見つけるのが難しいし、俺たちが事故に合うかもしれない」

「うん……二人ともこんな時間までありがとう……」


 それでも莉子は笑顔でいた。不安や焦りで一杯なはずなのに、それでも俺たちを労おうと笑顔でお礼を告げる。


「お礼は見つかったらでいい。見つかるまで私は協力するから」

「うん、ありがとう……」


 とぼとぼと家に入る莉子を見送った後、俺たちも帰路に就いた。

 全身を襲う疲労感がやばい。全身の中で一番辛いのが、足よりも腕。ペットボトルが十本以上はあると思われるビニール袋を提げながら走り回ったおかげで、腕がパンパンに張っていた。


「隆史、片方持とう」

「大丈夫……」


 ルナの細腕ではたぶん持てない……。

 家に帰った後、ご飯を作ってお風呂洗って……いや、無理だ……今日はお弁当でいいや……。

 途中でスーパーに寄ってお弁当を買い、それをルナに持ってもらった。


     ※ ※ ※


「それで今日はお弁当なのね」


 家に帰宅した俺たちは真っ先に風呂に入り、疲れや汚れを落とした。そのあと、希さんにも協力をお願いしたくて、仕事から帰ってくるのを待っていたのだ。

 家事をサボり気味な俺を、聖母のような笑みを浮かべて許してくれる希さん。出前やらお弁当やら、最近はまともに家事をこなせてない。それでも怒らず、こうやって許してくれることに今は甘えよう。

 

「はい。もし希さんも猫を見かけたら教えてくれませんか?」

「うん、私も協力するね」


 チラシを一枚渡すと、快く受け取ってくれ協力を引き受けてくれた。

 ちなみにルナは疲れていたのか、ご飯をさっさと食べて自室に寝に行ってしまった。

 俺も今日はさっさと寝よう……。

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