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21話 見ません

 学校の昼休み。紬、莉子、ルナの三人とご飯を食べているときのこと。


「莉子たちは、映画を見たことあるか?」


 ルナが二人に上機嫌に問いかけた。どこか自慢気に小鼻を膨らませるようすは、二人にいいことを教えてあげようとしている感じがする。


「映画? もちろんあるよ」

「む、そうなのか……」


 もちろん映画を見たことがない人などいない。当然のように答える莉子に、ルナは少し残念そうに肩を落とす。


「昨日、隆史の勧めで映画を初めて見たのだがとても面白かったんだ」

「そうなんだ、映画って面白いよね」

「うん、あんなに面白いとは思わなかった」

「隆史のお勧めってのが気になるわね。なに見たの?」

「たしか……サモハンのチンポーを見た」

「ぶぅぅううううう!!」


 思わず吹き出してしまった。なんて間違いをしてるんだ、おい!


「ち……っ!?」

「なんてもの見せてるのよ……映画じゃなくてエッチなの見せられたのね……」


 二人の突き刺さる視線が痛い。まるで犯罪者でも見るかのような、蔑んだ視線、ゴミを見るような双眸に晒され、慌てて俺は訂正した。


「違う、サモハンキンポー! 知ってるだろ!」

「誰よ、それ……セクシー男優の名前?」

「な……っ!」


 サモハンキンポーを、知らない、だと……!?

 よく考えてみればそれもそのはず。海外の役者さんだし、今時の男子高校生でも知らない人が多い。それをましてや女子で知ってるなんて稀だろう。


「あんた、最低……」

「ち、ちが……っ!」


 俺が抗議の声を上げるも、聞く耳を持たないようすで視線を逸らされた。こうやって冤罪というものが生まれるんだな。


「ど、どんな感じだった……?」


 紬とは違い、莉子が興味津々で、映画の内容をルナに聞いていた。


「うーん……速かった」

「は、早い……!?」


 今、漢字が違いませんでした?


「ほ、他には……?」

「太かった」

「太くて……たくましい!?」


 言ってない言ってない。


「それに面白かったぞ」

「気持ちよかった!?」


 言葉変わってるじゃねえか!!

 ルナの言葉に一々顔を真っ赤に染めながら、莉子は色々と質問していた。


「そ、そういえば……紬ちゃんも最近映画とかドラマにハマってるんだよね」

「面白い映画とかドラマが多くて困っちゃう」

「お勧めのとかある?」

「うーん……イ・ソジンがでてる映画とか面白かったわよ」


 イソジン!? なにそのうがい薬がメインの映画って! めっちゃ気になるんだけど!

 風邪がめっちゃ流行りそうだから、それを予防する映画か!? でもそういうのって風邪が流行って人類が対抗するから面白いのであって、それを予防しちゃったら山場なく終わっちゃわない?


「あと、オ・ナラがでるドラマとか」


 おならがでるドラマ!? なにそのイモみたいな効果のあるドラマ!! めっちゃ気になる!

 絶対カップルで見れないドラマだ。隣で恋人がずっとぶーぶー屁をこいてるとか雰囲気ぶち壊しすぎる。


「オ・ナラがでるドラマで、チンチンって呼ばれてるのお勧め」


 おならをチ〇チン!? おなら=チン〇ンってどういうこと!! そういうプレイですか!? コメディドラマかと思ったら実はセクシードラマ!?

 そういう倒錯プレイが好きなカップルにめっちゃお勧めじゃん! おならをチンチ〇にしてるってことはそういう匂いフェチにはたまらないドラマ!


「……それって面白い?」


 もじもじしながら聞いてみる。

 だって気になるじゃん、おならがでるセクシードラマとか。女子に対して聞くのはセクハラだけど、気になって仕方がない。


「面白かったわよ」


 面白いんだ! いやもしかしたら、紬が言う面白いって言うのは文字通りの面白いというわけじゃなくて、実は違う意味があるんじゃないか? なぜなら普通のエッチじゃない、おならを〇ンチンにしてるんだ。これはそういう倒錯的なプレイを見れて面白かったという意味に違いない。つまり紬が言ってる面白いという意味は、気持ちよさそうにしていて面白かったということだ!


「気持ちよかったのか!」

「……なに言ってるの?」


 そんな変な趣向のプレイがあるなんて知らなかった。気になるが見ようとは思わない。なぜなら俺はノーマルだから、そんな変態趣味はもう少し年を重ねてから走るべきだ。若いうちからそんな変な趣味な走ると碌なことにならない。


「今度みんなで見てみよう。おならがでるチ〇チ〇のドラマと、サモハ〇のチ〇ポーを」

「「「見ません」」」


 ルナの提案に三人が一斉に答えた。

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