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19話 健全です

「んっ……あぁん……ふぁあ……っ……そこ……」

「…………」

「ふぅん……あっ……あっ……んぁ……き、もち……いい……」


 艶めかしい声がリビングに響く。指が彼女を刺激するたびに、気持ちよさそうに悶え、快感の声が喉を震わせていた。彼女の体を指が這うたびに、ビクンッと震える。


「ひゃん……あ、く……くぅん……んんん……っ!」

「…………」


 嬌声を上げているのは希さん。俺はそれを黙って聞いていた。指が彼女の身体に沈み込み、よほど気持ちよかったのだろう、希さんは一際大きな声を上げた。


「はぁあんっ!」


 快感の波が押し寄せているのがこちらもわかった。そこを重点的に責め、何度も何度も同じところを刺激した。


「あひぃっ……あぁあん……そこ、もっと……あぁ、そこそこ……」

「気持ちいいか?」

「うん……ルナ、ちゃん……き、もち、いい……」

「…………」


 ルナが希さんに肩を揉んであげている。ただそれだけのことなのに、どうしてこんな変な気分にさせられなきゃいけないんだ。身内のこういう声は興奮するどころか萎えてしまうし、いたたまれない気持ちにさせられる。


「あぁ……ルナちゃん……すっごく、上手……」

「ここか? ここがいいのか?」

「うん、そこ……そこもっと刺激して……」


 わざとやってます? ねえ、わざとそういう紛らわしい会話をしてますよね?

 仕事で疲れたようすの希さんを見かねて、ルナがマッサージを買って出た。なんでもマッサージのやり方を漫画で得たらしく、疲れを取ってあげると肩を揉みだしたのがこの紛らわしい現状の始まり。


「は、ん……やぁん……くぅ……そこ、もう少し強く押して」

「ここか?」

「んぁぁあん! そ、うそう……あぁ……ルナ、ちゃん……いい……」

「…………」


 これはおかずにはできないな……てか、オ〇ニーするとき、この声を思い出しそうで気が滅入りそう……。


「ああ、ルナちゃんありがとう……すっごく楽になった……」

「希の疲れを取ることができたならよかった」

「うん、すっごく癒された。なんかこのまま寝れちゃいそう」


 俺にとっては地獄のような時間のマッサージがようやっと終わった。ずっとソワソワしっぱなしで、居心地が悪い。

 希さんはあくびを噛み殺しながらリビングから出ていく。たぶん、今日はこのまま寝るんだろうな。

 俺はというと、このどうしようもない気分をなんとかしようと画策し、それをぶつけるためにルナに近付いた。


「ルナ、今度は俺がマッサージしてやるよ」


 あの声を思い出してしまいそうなら、別の声で上書きすればいいのだ。

 ルナよ、俺のテクニックにひーひー言わせてやるぞ!


「……? 私は別に疲れてはいないぞ」

「そんなことないって、さっきのマッサージで疲れたはずだから」 


 無理矢理ソファの上に座らせ、背後に回った。均整の取れたスタイル、透き通る白い肌、それを目前に見せられ、それだけで否応なしに興奮させられる。彼女の肩を掴むと、その細い肩に驚いた。そして指から伝わる女性特有の柔らかい感触。

 うーん、これだけで十杯はいけるな……。


「ほら、揉むぞ」

「う、うん」


 強引な俺に戸惑いながら従ってくれる。親指に力を込めると、彼女の柔らかい身体に指が沈み込んだ。何の手応えもない。つまり、全然凝っていなかった。


「……くっ」


 なんだこの柔らかさ、女性特有とか関係なしに柔らかすぎるぞ。子供の肩を揉んでるかと思うほど抵抗を感じられない。


「くはっ……あは、ぷはははは! く、くすぐったい!」


 ひーひー言わせるどころか笑わせてしまった。エッチな声を出させたいのに、ルナから出るのはそんな雰囲気とは真逆の哄笑。気持ちよさに身を悶えるではなく、くすぐったさに身を悶えさせる。


「あははははは! や、やめ……ぎゃははははは!」

「…………」

「だーははははは! ぬは、ひひひ、うひひひひひ!」


 全然思っていたのと違う……もっとこう、いやーんあはーんみたいな声を出させたいのに……雰囲気ぶち壊しだ……。

 お腹を抱えて笑ってるので、肩から手を離した。笑い疲れたのか、小刻みに身体を痙攣させる。ここだけの状況だけ見れば十分エロいのだが、いかんせん笑ってこうなったと考えると興奮しない。

 うーん、どうしよう。このままだと、オ〇ニーしたとき、希さんの声を思い出しちゃうしな……。

 他の手でルナをいやーんあはーんな声を出させないと。

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