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三国志演義

三国志演義・餓狼討滅戦【中編】~虎狩りの謀略家~

作者: 霧夜シオン


声劇台本:三国志演義・餓狼討滅戦がろうとうめつせん【中編】~虎狩とらがりの謀略家ぼうりゃくか


作者:霧夜シオン


所要時間:約35分


必要演者数:最低6~7人

      6:0

      6:1

      7:0


キャスト例:(他に良い組み合わせがあったら教えてください。)

曹操・高順:

呂布:

陳宮:

張遼・張飛:

陳珪・関羽:

陳登・劉備:

ナレ:


※ナレをどれかの役と兼ねさせる場合、兼ねられない役は、

呂布、陳宮、関羽、張飛、劉備、曹操、陳珪、陳登

なので、上手く兼ね役を変えるなどして調整してください。


はじめに:この一連の三国志台本は、

     故・横山光輝先生

     故・吉川英治先生

     北方健三先生

     蒼天航路

     の三国志や各種ゲーム等に加え、

     作者の想像

     を加えた台本となっています。また、台本のバランス調整のた

     め本来別の人物が喋っていたセリフを喋らせている、という事

     も多々あります。

     その点を許容できる方は是非演じてみていただければ幸いです

     。

     なお、人名・地名に漢字がない(UNIコード関連に引っかかっ

     て打てない)場合、遺憾ながらカタカナ表記とさせていただい

     ております。何卒ご了承ください<m(__)m>


     なお、上演の際は漢字チェックをしっかりとお願いします。

     また上演の際は決してお金の絡まない上演方法でお願いします

     。

     

     ある程度はルビを振っていますが、一度振ったルビは同じ、

     または他のキャラのセリフに同じのが登場しても打ってない場

     合がありますので、注意してください。

     なお、性別逆転は基本的に不可とします。



●登場人物


曹操そうそう・♂:あざな孟徳もうとく

     漢王朝かんおうちょう宰相さいしょう曹参そうしん末裔まつえいを称する。現王朝げんおうちょう司空しくうくらいについ

     て、自らの理想とする世をきずくべく、皇帝をも大義名分として

     利用する。人材収集癖があり、有能な人材を愛する事、女性を

     愛するかのごとくである。

     政治、軍事、文化等のあらゆる分野で後世こうせいに名を残す、

     ”破格の英雄”。


劉備りゅうび・♂:あざな玄徳げんとく

     漢の中山靖王ちゅうざんせいおう劉勝りゅうしょう末孫まっそんを自称。

     乱れた世をただす為、義兄弟の関羽かんう張飛ちょうひと共に乱世らんせを駆ける。


関羽かんう・♂:あざな雲長うんちょう

     劉備りゅうび張飛ちょうひと共に義兄弟のちぎりを桃園とうえんに結び、乱世らんせたださんと

     戦い続ける。見事な顎鬚あごひげと酒に酔ったようなあかがおをしている

     。重さ八十二斤はちじゅうにきん青龍偃月刀せいりゅうえんげつとうを自在に操る。


張飛ちょうひ・♂:あざな翼徳よくとく

     劉備りゅうび関羽かんう義兄弟ぎきょうだいちぎりを結び、世をただすために戦う。

     一丈八尺いちじょうはっしゃく蛇矛じゃほこを振り回し、酒を愛する虎髭とらひげにどんぐりまなこ

     豪傑。


呂布りょふ・♂:あざな奉先ほうせん

     五原郡ごげんぐん出身。武芸百般ぶげいひゃっぱんひいで、方天画戟ほうてんがげきを枯れ枝のごとく振るい

     、日に千里せんり駆ける稀代きだいの名馬・赤兎馬せきとばまたがって戦場を駆ける。

     餓狼がろうの様な性質を持ち、背信はいしんと裏切りにまみれた生を歩む。

     現在は劉備りゅうびから徐州じょしゅうを奪い、領主の座に座っている。

     三国志最強と言われ、飛将軍ひしょうぐんの異名や「人中じんちゅう呂布りょふ馬中ばちゅう

     赤兎せきと」とうたわれる。


陳宮ちんきゅう・♂:あざな公台こうだい

     かつては曹操そうそうつかえていたが、次第しだいにその人間性について行け

     なくなり、流浪るろうの身だった呂布りょふに接触、推戴すいたいして曹操そうそうから離反りはん

     。

     以来、呂布りょふ献策けんさくし続け、現在は徐州じょしゅうの実質的支配者とさせて

     いる。


張遼ちょうりょう・♂:あざな文遠ぶんえん

     後に泣く子も黙ると恐れられた武勇を持つ人物。この時は呂布りょふ

     配下で高順こうじゅんと二枚看板をなす猛将。己の意思とは裏腹に、丁原ていげん

     、董卓とうたく呂布りょふと次々につかえる主君を変えざるを得なかった。


高順こうじゅん・♂:あざなは伝わっていない。

     呂布りょふ配下で張遼ちょうりょう双璧そうへきをなす猛将。攻撃した敵部隊を必ず壊滅かいめつ

     した事から【陥陣営かんじんえい】の異名で恐れられる。寡黙かもくで酒は飲まず

     、贈り物も一切受け取らない清廉潔白せいれんけっぱくな人物であったという。


陳珪ちんけい・♂:あざな漢瑜かんゆ

     陳登ちんとう老父ろうふ徐州じょしゅう名士めいし呂布りょふを嫌い、息子と共にひそかに曹操そうそう

     と通じている。


陳登ちんとう・♂:あざな元龍げんりゅう

     呂布りょふの配下だが父の陳珪ちんけいともども、劉備りゅうびから徐州じょしゅうを奪い領主の座

     に居座いすわった呂布りょふ心中しんちゅうひそかに嫌っている。

     はじめは誠実で思慮しりょ深いと評されているが、後年、広陵こうりょう太守たいしゅ

     なった頃は人々に畏怖いふ・敬愛されたと伝わる。ただし、傲慢ごうまん

     うぬぼれていると思われることも多かったようである。

     ひそかに曹操そうそうと通じ、呂布りょふを滅ぼす為に画策かくさくしつつある。


ナレ・♂♀不問:雰囲気を大事に。



※演者が少ない状態で上演の際は、被らないように兼役でお願いします。



―――――――――――――――――――――――――――――――――


ナレ:泰山たいざん一帯を縄張なわばりとする盗賊たちに曹操そうそう軍をむかえ撃たせた呂布りょふだっ

   たが、徐州じょしゅう城にもたらされたしらせは敗北の凶報きょうほうだった。

   陳登ちんとう早馬はやうまからの報告を受けると、内心ほくそみながら城の奥へ

   と向かった。


陳登:申し上げます、将軍。

   …泰山たいざんが突破されました。


呂布:なにっ、孫観そんかんらはどうした!?


陳登:今のところ、生死は不明とのことです。


呂布:ぬ、ぬううう…!


陳登:さらに曹操そうそう軍は徐州じょしゅう四方しほうから囲み、すでに小沛しょうはいへ進軍しつつある

   との報告です。


呂布:なんだと!?

   小沛しょうはい徐州じょしゅうにとっては喉元のどもとにもあたる場所だ。

   奪われてはならん!

   陳登ちんとう陳大夫ちんたいふ、何かよい策はないか!


陳珪:やはりここは、将軍がじきじき々に小沛しょうはいへ向かわねばなりませぬ。


陳登:父の申す通り、先の泰山たいざんの例もあります。

   寄せ集めの兵や山賊どもには任せておけませぬ。


呂布:お前達の言う通りだ。

   俺が出陣するのとしないのとでは、兵の士気も違うだろう。

   よし、小沛しょうはいへ出陣する。


陳珪:それがようございます。


呂布:陳大夫ちんたいふ、お前にはこの徐州じょしゅう城を守ってもらう。

   いいな。


陳珪:承知しました。

   命にえましても。


呂布:他の者は俺と共に小沛しょうはいへ向かう。

   すぐに出陣の準備をしろ!


陳登:ははっ、ただちに!


ナレ:徐州じょしゅう城内はにわかにあわただしくなった。

   その中、陳珪ちんけい陳登父子ちんとうふしは、いつも密談みつだんの場所と決めている

   真っ暗な部屋に隠れ、何事か話していた。


陳登:父上、ついに呂布りょふの滅亡も近づいてきましたな。


陳珪:うむ、わしら親子の待ち焦がれている日がやって来た。


陳登:さいわい、私は呂布りょふに従って小沛しょうはいへ行きます。

   むこうで策を用い、呂布りょふがこの城へ退却せざるをない状況を作り

   出します。


陳珪:ふむ…それで…?


陳登:その時父上は、この徐州じょしゅう城の門すべてを固く閉じ、

   呂布りょふを決してこの城へ入れないようにしてください。


陳珪:………。


陳登:父上、何故なぜご返事が無いのです?


陳珪:せがれよ、それは無理だ。

   この徐州じょしゅう城はわし一人だけで守るのではない。

   呂布りょふの一族がおる。

   わしが開けるなと言ったところで聞かぬじゃろう。


陳登:確かに…この城から呂布りょふの一族を遠ざけておく必要がありますな。

   それに関しては私が手を打ちましょう。


陳珪:うまくやれるか?


陳登:お任せを。

   ! そろそろ出陣です。

   ぐずぐずしているひまはありません。


陳珪:そうじゃな。

   お前は先に戻れ。

   …うまくやれよ。


陳登:では。


   【三拍】


   将軍、遅れて申し訳ありませぬ!


呂布:陳登ちんとう、何をしていた!

   曹操そうそう軍は進撃を待ってくれんぞ!


陳登:はっ、実は父が徐州じょしゅう城の留守るすあずかる大役たいやくをとても心配しておりま

   した。それゆえ、はげましていた次第しだいです。


呂布:? 徐州じょしゅう留守るすがなぜそんなに心配になるのだ?


陳登:なにぶん、こたびのいくさ曹操そうそう軍が四方しほうより攻めてきております。

   万一まんいちこの徐州じょしゅう城に危機がせまった時、たくわえられた金銀兵糧きんぎんひょうろう、そして

   将軍のご一族をどうしたものかと、父はひどく案じておりました。


呂布:なるほどな、確かにそのうれいもあるか。

   ふーむ……。

   よし、陳大夫ちんたいふ


陳珪:ははっ、ここにおりまする。


呂布:お前は糜竺びじくと協力して、我が一族と金銀兵糧きんぎんひょうろうを全てヒの城へ移し

   ておけ、よいな。


陳珪:ははーっ、かしこまりました。


呂布:陳登ちんとう、これで万全であろう。


陳登:さすがでございます、将軍。

   これでうれいなく出陣できるというものです。


呂布:よし、出陣だ!

   小沛しょうはいへ急げ!


陳登:【呟くように】

   (…ふふふ呂布りょふめ、なんと他愛たあいのない…。糜竺びじく殿も我らと心を同じ

   くする者だというのに…。)


ナレ:呂布りょふは気づかなかった。

   おのれの足元にすでに大きく、黒い穴が口を開けていることに。

   小沛しょうはいへ向けて進軍途中、伝令でんれいから前線の蕭関しょうかんが危機にさらされている

   という報告をもたらされてきた。


呂布:曹操そうそう軍がもう蕭関しょうかんまでせまったのか!

   おのれ、さすがに早いな…!

   ともあれ、軍の向きを変えねばなるまい。


陳登:将軍、お待ちください。


呂布:なんだ、陳登ちんとう


陳登:蕭関しょうかんへはなるべくお急ぎになりませぬよう。


呂布:!?バカな、それでは陥落かんらくしてしまうぞ!


陳登:それは分かっております。

   現在、陳宮ちんきゅう殿や臧覇ぞうは殿も向かっているとの事ですが、

   蕭関しょうかんを守る兵は孫観そんかん配下の山賊や氏素性うじすじょうの知れぬ者…つまり、

   寄せ集めのやからがほとんどです。


呂布:確かにそうだが…。


陳登:彼奴きゃつらは忠誠心ちゅうせいしんも薄く、利にころぶ可能性もございます。

   それゆれ、まずはそれがしが先に向かって関内かんない様子ようすを調べて参り

   ましょう。


呂布:おぅ、よく気が付いた!

   そのこまやかな気配きくばり、お前こそしん忠臣ちゅうしんというものだろう。

   よし、行けッ!


陳登:ははっ、では将軍は後から。


   【三拍】


   …よし、ここからが正念場しょうねんばだ。

   失敗すれば自身はおろか、徐州じょしゅう城に残っている父上の命もない。

   む、蕭関しょうかんが見えて来たな…。


   開門! 開門せよ!


陳宮:何者だ!


陳登:徐州じょしゅうから参った陳登ちんとうだ!

   至急しきゅう蕭関しょうかんを守備する将に会いたい!


陳宮:おう、陳登ちんとう殿か!

   指揮しているのはこの陳宮ちんきゅう臧覇ぞうは殿だ!

   今、門を開ける!


   【二拍】


   急にどうして参られた?


陳登:その前に、曹操そうそう軍の動きはどうなっています?


陳宮:あれを見られよ。

   すでにこの蕭関しょうかんを攻めるべくあの山の付近に布陣ふじんしている。

   だが、まだ戦闘には至っておらぬ。


陳登:なるほど…。

   それでなのだが…貴公きこうらは何か、呂布りょふ将軍に疑われるような覚えは

   ござらぬか?


陳宮:なに? どういうことか?


陳登:将軍はなぜかここに参られぬ。


陳宮:なっ…ではこの蕭関しょうかんはどうなる!

   いったい将軍は私たちの何をお疑いなのだ!?


陳登:それはわかりませぬ。

   ともかく、将軍はここに参られぬことを知らせに参った。


陳宮:そんな…将軍がおいでにならねばどうやって戦えと言うのだ。

   今この蕭関しょうかん現兵力げんへいりょくでは防ぎきれん。

   下手へたをすれば全滅しかねぬ。


陳登:私はただの使いに過ぎませぬ。

   そう申されても、返答に困ります。


陳宮:陳登ちんとう殿、貴公きこうは将軍に気に入られている。

   ここの現状を伝え、将軍みずから参られぬでも援軍をなんとか

   よこしてもらえるよう、説得せっとくして下さらぬか。


陳登:むう…わかりました。

   やってみましょう。

   ではひとまず私はこれで。


   【二拍】


   よし、最初の仕込しこみの仕上しあげだ…。

   この矢文やぶみを……ッ!

   見ておれ、凄惨せいさん同士討どうしうちを演じさせてくれる…!


ナレ:陳宮ちんきゅう達に疑惑のくさびを打ち込んだ陳登ちんとうは、おのれの策を記した矢文やぶみ

   曹操そうそう軍の陣地へ向かって射込いこむと、その足で急ぎ呂布りょふの元まで駆け

   戻って来た。


陳登:【馬のいななくSEあれば】

   どうッ!

   将軍、ただいま戻りました!


呂布:おう陳登ちんとう蕭関しょうかん様子ようすはどうだった?


陳登:…あんじょうまことうれうべき状態です。

   すでに陳宮ちんきゅう殿、臧覇ぞうは殿に曹操そうそう軍の手が回っているとは…!


呂布:!? ぬう、では彼奴きゃつらはやはり裏切りの準備を進めていると言う

   のか!


陳登:孫観そんかんら山賊のやからならばともかく、将軍のご恩を受けていたはずの

   陳宮ちんきゅう殿までもが裏切ろうとしているとは思いませんでした。

   人の心ははかりがたいものです…。


呂布:いや、陳宮ちんきゅう近頃ちかごろ、自分の献策けんさくれられない事で、不満を持って

   いるように見えた。

   何も知らずに蕭関しょうかんへ進んでいたら、今ごろたれていたかもしれん。

   よくやった、陳登ちんとう


陳登:ははっ、ありがたきお言葉…!


呂布:だが陳宮ちんきゅうめ、俺を裏切るというなら目にものを見せてやらねばな。

   陳登ちんとう、ご苦労だがもう一度いちど蕭関しょうかんへ引き返し、何でもよいから陳宮ちんきゅう

   話題をってときついやし、酒でも飲ませて酔いつぶさせろ。

   そして矢倉やぐらから火の手を上げ、いぬいの方角の門を開けておくのだ。

   俺が自身で突入し、彼奴きゃつをこの手で成敗せいばいしてくれる。


陳登:おお、素晴すばらしき策でございます。

   さっそくそのように。


ナレ:夕闇ゆうやみせまる中、陳登ちんとうは再び蕭関しょうかんへ引き返すと、わざとあわただしく陳宮ちんきゅう

   を呼び立てた。


陳登:陳宮ちんきゅう殿ッ! 陳宮ちんきゅう殿はおられるか!


陳宮:いかがされた、陳登ちんとう殿。

   それよりも援軍の件はどうなったであろうか?


陳登:そんなことを言っている事態じたいではなくなりました!

   今日、曹操そうそう軍がいきなり方角を変え、泰山たいざん間道かんどうから徐州じょしゅう城へ

   攻め込んできたのです!


陳宮:なっなにッ!

   曹操そうそう軍が徐州じょしゅう城へ!?


陳登:もはやここを守っていても意味はありませぬ。

   お二人ともすぐに兵をまとめ、徐州じょしゅう救援きゅうえんに向かえとの将軍からの

   めいにござる。


陳宮:むむむ曹操そうそうめ、作戦を変えて来たか…!

   これはぐずぐずしてはおれん。

   陳登ちんとう殿、我らもすぐに救援きゅうえんに向かうゆえ、一足先ひとあしさきに将軍にお伝えく

   だされ!


陳登:承知しょうち

   では御免ごめん


   【二拍】


陳宮:我らはこれより徐州じょしゅう城へ向かう!

   将軍に加勢かせいせねばならぬ。

   全軍、続けッ!


   【多数の馬の駆け出すSEあれば】


   【二拍】


陳登:…行ったな…。

   呂布りょふへの合図の火の手を上げて…よし。

   これで陳宮ちんきゅう呂布りょふ同士討どうしうちさせることができる。

   そしてもう一度いちど矢文やぶみ曹操そうそう軍の陣へ射込いこめば…!


   【矢を射るSEあれば】


ナレ:陳登ちんとうは矢を放った方角を、目をこらしてながめていた。

   すると松明たいまつの光が彼方かなたに現れ、大きく振って返事の合図を送ってく

   る。

   間もなくしてからになった蕭関しょうかんに、おびただしい兵馬が海のしおの満ち

   るように音もたてず、明かりもつけずに入って来た。


曹操:陳登ちんとうよ、思った以上に事がうまく運んでおるな。


陳登:これは曹司空そうしくう殿。

   先ほどここを出た陳宮ちんきゅうは、必ず呂布りょふとぶつかるでしょう。

   暗闇ゆえ、互いに敵と思い込んでの同士討どうしうちは必至ひっしでございます。


曹操:さすがは陳登ちんとう殿だ。

   して、その後はどう動く?


陳登:同士討どうしうちが収まれば、呂布りょふたちはひとまずこの蕭関しょうかんへ戻ってくるで

   しょう。

   そこをさら奇襲きしゅうすれば、より打撃を与えられるかと存じます。


曹操:ふふふ、陳登ちんとう殿の前では呂布りょふ赤子あかご同然であるな。

   して、蕭関しょうかんを失った彼奴きゃつらの退却する地はどこと見る?


陳登:おそらく、徐州じょしゅうの城へ退却するでしょう。

   小沛しょうはいでは城の規模きぼが小さすぎて、すべての兵が入りきれませぬ。

   しかし徐州じょしゅうの城では、すでに我がちち陳珪ちんけいこころざしを同じくする者たちを

   かたらい、城を乗っ取っている頃かと思われます。


曹操:ううむ、みごとなものだ。

   時間をかけただけあって、れするような策だな。


陳登:ありがたきお言葉…。

   呂布りょふ徐州じょしゅうへ移動しているその間に、私は小沛しょうはいへ向かいます。

   そして守将しゅしょう張遼ちょうりょう高順こうじゅんいつわって徐州じょしゅうへ向かわせますゆえ、

   からになった城へ兵を入れて下さいませ。


曹操:うむ!

   これで徐州じょしゅう小沛しょうはい蕭関しょうかん要所ようしょはほぼ全て押さえることができるな。

   呂布りょふに残された退路たいろヒの城のみ…。

   では、小沛しょうはいの件は頼むぞ、陳登ちんとう殿。


陳登:ははっ、まずはここへ引き返してくるであろう呂布りょふ軍をたたいてから

   ですな。


曹操:我らも敵軍を奇襲きしゅう後、一部の兵を残して出発する!

   陳登ちんとう殿が小沛しょうはいの敵軍をおびき出したら、すぐに後を乗っ取るのだ!


曹操・ナレ役以外全員:おうッ!!【SE代用可】


ナレ:そのころ、蕭関しょうかんを出た陳宮ちんきゅうもなくして正体不明の軍とぶつかる

   。

   味方の軍だとは知るよしもないままに。

   かたや呂布りょふは、陳登ちんとうの上げた合図の火の手を見て動き出していた。


呂布:おう、合図だ!

   陳登ちんとうめ、うまくやって陳宮ちんきゅうらを酒に酔わせたようだな。

   全軍進め! 裏切り者共を残らず討ち取るのだ!


呂布・ナレ役以外全員:おうッ!【SE代用可】


陳宮:急げ! 徐州じょしゅうの味方を救うのだ!

   むっ!? 前方に軍が…敵か!?


呂布:うっ、あれは…もしや泰山たいざんに陣取っているという曹操そうそう軍だな。

   一気に蹴散けちらせ!!


陳宮:徐州じょしゅうへの救援きゅうえん阻止そししようとする曹操そうそう軍に違いない!

   者共ものども、正面突破するのだ!!


【喚声:SE代用可】


ナレ:目隠しをされた状態でやいばを振るう者ほど愚かなものはない。

   互いが味方同士とも気づかぬまま、呂布りょふ陳宮ちんきゅう凄惨せいさんなほどの

   同士討どうしうちを徹底的てっていてきに演じてしまう。

   だがさすがに違和感を覚え始めたか、双方の動きがにぶり始めた

   。


陳宮:ほこを引け! 者どもしずまれ!

   もしや相手は味方ではないのか!?


呂布:はてな…おかしいぞ。

   !! あ、あれは味方の旗ではないか!?

   待てッ、お前達は何者だ!!

   俺は呂布りょふだぞ!!


陳宮:なっ!!?

   こ、これは将軍!

   何故ここに!?


呂布:陳宮ちんきゅうではないか!?

   おのれ、やはり裏切っていたな!


陳宮:?何のことでございます。

   我らは徐州じょしゅうが攻められているゆえ、すぐに救援に向かうよ

   うにとのご命令に従って、こうして向かう途中だったのです。


呂布:な、何ッ!?

   誰がそんなことを言った!?


陳宮:陳登ちんとう殿がそう伝えて来ましたが…。


呂布:なんだと!?

   俺にした話と全然違うぞ…いったいどういうことだ!?


陳宮:前から疑ってはいましたが、もしや曹操そうそう内通ないつうしているのでは…。


呂布:まさか、そんなはずは…。


陳宮:ともあれ、ひとまずは蕭関しょうかんへ戻りましょう。

   くわしい話はそれからでも。


呂布:う、うむ。

   全軍、蕭関しょうかんへ入る! 拠点きょてんからにはしておけん!


ナレ:呂布りょふ陳宮ちんきゅうの部隊と共に蕭関しょうかんに入ろうとした。

   だが開け放たれた門へ近づいた刹那せつな、弓矢が雨のように降りそそいで

   きた。


呂布:なっ、こ、これは!?


陳登:それっ、突っ込め!!


【喚声:SE代用可】


陳宮:ぬうぅいかん、すでにかんは乗っ取られていたか!

   将軍、暗闇の中攻め込むのは危険です!

   ひとまず退却を!


呂布:くそっ、退けッ! 退けェーーーーーッ!!


   【二拍】


陳登:ははは呂布りょふめ、思い知ったか。

   …では曹司空そうしくう殿、次は小沛しょうはいにて。


曹操:うむ、またのちほど会おう。


ナレ:蕭関しょうかんを奪われた呂布りょふはやむなく態勢たいせいを立て直す為、徐州じょしゅう城へ転進てんしん

   る。

   いっぽう、徹底的てっていてきに追い詰めるつもりでいる陳登ちんとうは、馬を飛ばして

   小沛しょうはいの城へ向かった。


陳登:小沛しょうはい城が見えて来たな。よし、張遼ちょうりょう高順こうじゅんを城から出さねば…。

   開門、開門ッッ!!


張遼:何者か!

   ッ陳登ちんとう殿ではないか!? どうされた!


陳登:一大事いちだいじでござる!

   曹操そうそう軍が間道かんどうを抜けて徐州じょしゅう城に不意に現れ城を包囲、

   総攻撃を受けております!

   急ぎ救援に向かってくだされ!


高順:なんと…曹操そうそう軍本隊が徐州じょしゅう城に…!?


張遼:高順こうじゅん殿、急ぎ向かうべきだ!

   今なら城を攻め立てているであろう曹操そうそう軍の背後をつ事が出来る

   !


高順:うむ…!

   陳登ちんとう殿、我らはすぐに徐州じょしゅうへ向かう。

   一足先に戻って将軍にお伝え願いたい。


陳登:心得こころえました。

   では!


張遼:我らは徐州じょしゅうの救援に向かう!

   続けーーッ!!


高順:将軍、今すぐ参ります…!


   【喚声:SE代用可】


   【二拍】


陳登:…くっくっく、馬鹿な奴らだ。

   これで我らの策は、なか成就じょうじゅしたと言えよう。

   父上、そちらは頼みましたぞ。


ナレ:小沛しょうはいを守っていた張遼ちょうりょう高順こうじゅんも、陳登ちんとうの言葉を信じ、全軍をひきいて

   城を出ると徐州じょしゅうへ向かった。

   遠くからそれを確認した陳登ちんとうは、合図を送って曹操そうそう軍を小沛しょうはいへ招き

   入れ乗っ取ってしまう。

   それより少し前、呂布りょふ主従しゅじゅう徐州じょしゅうの城をのぞあたりまで辿たどり着いたが

   、同時に彼らの動きは、城内の陳珪ちんけいの元にも伝わっていた。


陳珪:そうか、呂布りょふが引き返してきたか。

   せがれ上手うまくやったとみえる。

   ならば今度はわしの番じゃな。

   皆の者、よいか! ぬかるでないぞ!


陳珪役以外全員:おうッ!!【SE代用可】


陳珪:この徐州じょしゅうには、我らの本当のあるじに戻ってきていただくのじゃ。

   おお、見えてきたわい。

   血にえた狼めが…!


陳宮:開門、開門ッ!

   呂布りょふ将軍のお戻りだ!


陳珪:それッ、弓兵ゆみへいども放てッ!!


   【矢が大量に降り注ぐSEあれば】


呂布:!? な、なにッ!

   これはどういうことだ!

   俺はこの城のあるじだぞ!!


陳珪:はははは、呂布りょふッ!

   この徐州じょしゅう城のあるじなんじなどではない!


呂布:おお、そこにいるのは陳大夫ちんたいふではないか!

   これは何事だ!

   我らを曹操そうそう軍と間違えたわけではあるまい!

   早く門を開けろ!


陳珪:たわけめ!

   呂布りょふよ、血迷ちまようのも大概たいがいにするがいい!

   今は前太守ぜんたいしゅ陶謙とうけん様が頼み込んでこの徐州じょしゅうゆずられたのは

   なんじではない!

   劉備玄徳りゅうびげんとく殿だ!


呂布:な、何を言うか!

   乱世らんせの時代、力で奪い取るのは当たり前ではないか!

   今はこの呂布りょふ徐州じょしゅうあるじだぞ!


陳珪:まだわからんのか!

   その昔、陶謙とうけん様の部下が曹操そうそう殿の父君ちちぎみを殺して財宝を奪って

   逃げた際、曹操そうそう殿は烈火のごとく怒って大軍を差し向けて来た。

   誰も援軍要請えんぐんようせいに応じない中、信義を重んじる劉備りゅうび殿ただ一人だけが

   、五千の兵と共に来て下さったのだ!

   この時の我らの感激、なんじなどにはわかるまい!


呂布:ぐ、ぐぬぬぬ…。


陳珪:なんじ徐州じょしゅうの領主と認める者など、誰もおらんのだ!

   この地は元通り、劉備りゅうび殿におさめていただく!

   なんじにもはや用はない!

   どこへなりと消えせるがよいわ!!


呂布:ええぇいおのれェ! 攻め落とせ!!


陳宮:う、うう…

   (ここまで劉備りゅうび徐州じょしゅうの臣民の信望しんぼうを得ていたとは…。)


呂布:ッ何をぐずぐずしている!

   城を奪い返せ!!


陳珪:ええい目障めざわりな!

   弓兵ゆみへい放て! 追い散らすのじゃ!! 


   【矢を大量に放つSEあれば】


呂布:ぬうううッ!

   こ、これでは近づけん!


陳宮:将軍、このままでは被害が増えるばかりです!

   態勢たいせいを立て直すためには小沛しょうはいへ向かい、張遼ちょうりょう高順こうじゅんの軍勢と合流す

   るべきかと!


呂布:し、しかし、しかしこの怒りと口惜くやしさをどうやってしずめる!


陳宮:これ以上打撃を受けると、曹操そうそう軍に太刀打たちうちできるか分からなくな

   ります!

   一軍の将が、冷静さを失ってはなりませぬ!


呂布:ぐ……ッぬううぅうぅうう!!


ナレ:ついに呂布りょふ赤兎馬せきとば馬首ばしゅを返すと、小沛しょうはいへ向かって走らせた。

   その背後から、城内でどっと笑う声が風に乗って流れてくる。

   歯噛はがみして屈辱くつじょくに耐えながら、呂布りょふ達は馬の足を速めた。

   ところが、ちょうど徐州じょしゅう小沛しょうはいの中間あたりまで来ると、

   彼方かなたから一団の騎馬が土煙つちけむりをあげて向かってきた。


呂布:うっ、あれは…!?


陳宮:曹操そうそう軍が先回りしていたのか…?

   いや、違う! あの旗印はたじるし張遼ちょうりょう殿に高順こうじゅん殿ではないか!?


呂布:な、ば、バカな!

   小沛しょうはいを守っているはずの二人がなぜここにいる!?


陳宮:止まれーーっ!!

   お前達は張遼ちょうりょう高順こうじゅんの軍か!?


張遼:!? 貴公は陳宮ちんきゅう殿ではないか!?

   何故ここに!?


陳宮:それはこちらが聞きたい!

   貴公らは小沛しょうはいの城を守っていたはずではないか!


高順:それが先刻せんこく陳登ちんとう殿が馬を飛ばしてきて、

   将軍が徐州じょしゅうの城で曹操そうそう軍に包囲されたゆえ、すぐ救援に向かうよう

   にと告げて来たので、こうして全軍で徐州じょしゅうへ向かってきていた所で

   す。


陳宮:!!ッ……!

   将軍、お聞きになりましたか。


呂布:ぬうううううまたしてもちん親子のはかりごとか!!

   もう許せん! 

   彼奴きゃつらを八つきにしてやらねば気が済まん!!


陳宮:将軍、おやめなされませ。

   恥をかさねるだけです。おそらく陳登ちんとうはすでに曹操そうそう軍を引き入れて

   祝杯をむさぼっている事でしょう。


呂布:黙れッ!

   これほどコケにされては我慢ならん!

   全軍、小沛しょうはいへ進軍しろ!!


ナレ:呂布りょふわれを失うほど激怒し、小沛しょうはいへ軍を進めた。

   しかし陳宮ちんきゅうの予想した通り、城には曹操そうそう軍の旗がひるがえっていた。


呂布:陳登ちんとうッッ、いるなら出てこいッッ!!


   【二拍】


陳登:おぉあれを見ろ、赤い馬に乗った物乞ものごいが現れたぞ!

   飢えているのか、何かえているわ!

   石でもらわしてやれ!


呂布:俺があれほど目をかけてやったと言うのに、よくも裏切りおったな

   ァ!!


陳登:黙れ!!

   我ら父子ふし漢王室かんおうしつの臣、なんじごとき粗暴そぼう悪逆あくぎゃくな賊などの家来けらいではな

   い、おろか者め!!

   それにこの徐州じょしゅうあるじ劉備玄徳りゅうびげんとく殿だ!

   留守るすを乗っ取っただけのなんじなど、誰があるじと認めるか!!


呂布:ぐぬぬぬぬ…!!!

   かかれ!!

   一気に攻め落とせェ!!


陳登:それっ弓隊!

   今こそ呂布りょふち倒す時だ!!

   放てェッ!!


   【大量の矢が降り注ぐSEあれば】


呂布:ぬううおのれェ!!

   ひるむな! 進め!!


陳宮:将軍!

   後方に敵軍が!


呂布:何ッ!?

   ええい曹操そうそう軍め、城の外にも陣取っていたか!

   後方の高順こうじゅん鶴翼かくよくの陣でむかつよう伝えろ!


張遼:ははっ!

   行って参ります!


   【二拍】


   高順こうじゅん殿! 将軍から鶴翼かくよくの陣で迎撃げいげきするようにとの事だ!


高順:承知!

   者ども、ここを突破させるな!

   …? なんだ? 曹操そうそう軍にしては装備が雑多ざったな……!?


張遼:うっ、あ、あれは!


関羽:この時を待っていたぞ!

   先の小沛しょうはいでの借り、今こそ返させてもらおう!!

   雑兵ぞうひょうに用はない、呂布りょふはいずこだ!


張飛:おらおらおらァッ! 張飛ちょうひ様のお通りだ!!

   出てこい呂布りょふッ、その首をもらい受けに来たぞ!


高順:なっ、関羽かんう張飛ちょうひだと!?

   ではあれは劉備りゅうび軍の残党ざんとうか!


張遼:くそっ、数は少ないが何という勢いだ!


高順:く、食い止めねば…!

   待てッ張飛ちょうひ! ここは通さん!


張飛:ああ!?

   雑魚ざこはすっこんでいろ!!


高順:雑魚ざこかどうか、この陥陣営かんじんえい高順こうじゅん手並てなみを見てからほざけッ!

   ぬうんッ!


張飛:ハッ、なんだその軽い打ち込みは!!

   今度は俺様の蛇矛じゃほこでも、らってみろォッ!


高順:!! ッぐぅぅぅぅなんて重い一撃だ!


張飛:そォら、もいっちょォォ!!


高順:うっぐぅぅ!!!

   ま、まだまだッ!!


張飛:おっと!

   ふん、それなりにやるじゃねえか!

   だがまだまだだなァ!

   そらッ!

   そらァッ!

   そらそらそらァァッ!!!


高順:ぬっ、ぐっ、うぐっ!

   だ、駄目だ、ささえきれん…!

   勝負は後日!


張飛:けッ、邪魔するんじゃねえ!

   呂布りょふはどこだ!! 


ナレ:数も少なく、装備も整っていない軍隊と言えど、ひきいる将が関羽かんう

   張飛ちょうひとその名を世にとどろかせた豪傑ごうけつであれば、すなわち精鋭せいえいとなる。

   高順こうじゅんの部隊が蹴散けちらされ、その動揺は呂布りょふ中軍ちゅうぐんにも波及はきゅうしていた

   。


呂布:ちいぃ、なんという無様ぶざまだ!

   急ぎ態勢たいせいを…!!


張飛:見つけたぞ、呂布りょふッ!!

   この張飛ちょうひ様がその首をもらい受けるぞ!!


呂布:何ィ!? 俺を甘く見るな!!

   返りちにしくれるわ!!

   おぉうッ!!


張飛:ッぐう!

   やるな! おらあァッ!!


呂布:ッえぇい!!

   貴様こそな!


関羽:そこにいるのは呂布りょふではないか!

   自慢の赤兎馬せきとばはまだ健在けんざいか!?


呂布:!ちいい、関羽かんうか!

   張飛ちょうひ一人に手こずっている時に!

   さすがにこの場はが悪い…!

   ッッ!


張飛:あっ、待ちやがれ!!


関羽:ぬうう逃げるな、呂布りょふ!!


呂布:貴様らの首をうつのは後日だ!

   勝負はそれまで預けておいてやる!!


関羽:くっ張飛ちょうひ、追うぞ!!


張飛:分かってらァ!

   

呂布:貴様らの凡百ぼんびゃく駄馬だばが、この赤兎馬せきとばに追いつけるとでも思っている

   のか!


関羽:~~ッ駄目か!

   あの名馬にはとても追いつけん…!!


張飛:くそっ、いまいま々しいがどうにもならねぇ!


関羽:ともあれ今は曹操そうそう軍に合流し、兄者にお会いしよう。


張飛:そうだな!

   どうせ呂布りょふにもう逃げ場はねェ。

   兄貴、小沛しょうはいの城へ行こうぜ。


関羽:うむ。

   全軍、城へ入る!


ナレ:呂布りょふ関羽かんう張飛ちょうひ両雄りょうゆうを前に不利をさとると退却する。

   関羽かんうらは曹操そうそう軍と合流すると、劉備りゅうびに再会。

   互いの無事を喜び合った。


劉備:そういえば小沛しょうはい落城らくじょうの際、二人はどこにのがれたのだ?


関羽:それがしは海州かいしゅうの田舎にひそんでいました。


張飛:俺はやむなくボウ蕩山とうざんに逃れて山賊をしていた。


劉備:はっははは、正直だな翼徳よくとく


曹操:劉備りゅうび殿、この徐州じょしゅうは元々貴公の城だ。此度こたびいくさが終わったら、

   また領主の座に戻られるがよい。

   陳珪ちんけい殿、ご子息しそく陳登ちんとう殿と共に呂布りょふ軍内部の攪乱かくらん、実に見事であっ

   た。貴公には十の県の俸禄ほうろくを与え、ご子息しそくには伏波ふくは将軍のくらいを与え

   る事とする。


陳珪:ははーっ、ありがたき幸せに存じます。


陳登:ついに呂布りょふを追い詰める事が出来でき、我ら父子ふしの念願がようやくかな

   た心地ここちがします。


曹操:よし、今宵こよいは大いに飲んで食べてくれ!


ナレ:陳珪ちんけい陳登ちんとう父子ふしによる内部攪乱ないぶかくらんの計略が図に当たり、意気いき上がる

   曹操そうそう劉備りゅうび連合軍。

   一方、小沛しょうはいから追われた呂布りょふ達は唯一残された拠点きょてんヒ城へ向け

   て馬を急がせていく。

   餓狼がろうはついに、おりの中に入った。

   



【三国志演義・餓狼討滅戦がろうとうめつせん【後編】~生と死の白門楼はくもんろう~に続く】





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