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9、

フォセットの特別授業です。

飛ばしても問題はないと思いますが…ゆるーくお楽しみ下さい。


 そして放課後。約束通りフォセット達は魔法練習場に来ていた。


「明日もテストなので手短にしますね」

「そうだね。では早速頼むよ」

「なんだかワクワクするわね」


  楽しそうな二人にフォセットは軽く微笑みながらまずは右手を出して掌を上にすると少し集中した。すると魔法陣が浮かび上がったので右手はそのままにして左手で陣を広げるような動作をしながら分かり易くするために見えやすい大きさに広げた。


「これが今日使用した陣です。これは授業で習うものと同じなので特に説明はいりませんよね。まずはこれを頭の中で思い浮かべてこのようにしっかりと出来上がっていれば後は…」


 今度はフォセットが意識をするだけで魔法陣が彼女の手から消えると的が全て破壊されていた。


「もう一度だけ的を宜しいですか?今のは先程の魔力測定用で手加減なしでしたから」

「わかった」


 フォセットが頼むと教師は頷きすぐに杖を振ると的が出てきたのでフォセットはまた右の掌を上にしたのだが今度は先程とは少し違う魔法陣が現れたので二人はすぐにそれを読み解こうとしていたのでフォセットは見やすくするためにまた左手で広げるような仕草をして陣を大きくしていた。


「わかります?先程とは威力と座標の部分が違います。では放ってみましょう」


 話し終えると魔法陣がまた消えていて今度は的の前で小さな炎が止まって現れた。


「なるほど…この状態の一斉放射か。これはとてもわかり易いな」

「フォセットって器用ね…」


 正確な位置で止まる炎を見て二人は素直に感心していた。教師の視点でこれは授業でも使えそうな気がしていて今後の参考になった。

 一斉放射のやり方はほぼ的に当てて壊れる様子を見せていたのでここまでやることはない。それは生徒達も家庭教師から教わっているであろう事が前提だったのでやる必要もないと感じていたからだった。

 しかし実際に見せた方が確かに理解も早いので当たり前でもしっかりとやるのも良いと感じていて来年からそうしてみようと頭のメモに記録した。

 

「この魔法陣には障害物に当たればそれを壊すように指示を示すものを組み込んでありましてこれは通常の授業で習う事と一緒ですから後は魔力で押し出すイメージですね。

 しかし魔法陣に少しだけ細工して威力、属性、形状、座標、この全てを仕込むとこの様な形で留まり相手がぶつかる時に爆発するような罠の状態になります」


 次にフォセットは何も無い空間をノックする仕草をするとボールが出てきた。これは亜空間魔法一つで収納魔法と呼ばれるもので魔導具で言うと小さくても沢山の物が入るアイテムバッグ等に当たるものだった。


「これは先程購買で売ってた普通のボールです。試しに投げて炎に当てて下さい」


 教師とエビーチェに一つずつ渡して当てて貰った。パンッ…大きな爆発音ではないがボールは炎に当たった途端に破裂した。


「これがこの魔法の可能性です。これがあれば討伐等で逃げないといけない時等の足止めにもなりますから有効な手ですね」

「確かにそうだね」

「そして魔力で押し出すと…」


 今度は掌を的に向けた。パンッ…先程よりも威力を弱めたので破壊音も小さく全ての的に軽く穴が空いていた。


「今のは魔力を放出しただけで魔法が魔力とぶつかった形になります。先程のようにこれを全て無詠唱ですると…」


 軽く指を鳴らしただけで残っていた的が全て破壊されて消滅した。


「こんな感じですね」

「フォセット…凄いわ!」

「なるほど…わかり易かった」

「それは良かったです」


 二人の反応を見てフォセットはなんとか理解して貰えたことにホッとした。


「次に瞑想ですね」


 今度は近くにある背もたれ付きのベンチに腰掛けて体の力を抜いて自然な状態になった。


「こんな感じで全身の力を程よく抜いてリラックスして下さい。そして外なら風を感じて穏やかでいるように…この時に静かに自然と一体になる気持ちでいると効果的でしょう。

 後は魔力制御と同じ要領で自分の全身の魔力を一定にするんです。少しずつそれをして常日頃から魔力を出し過ぎないようにして意識的に心掛けてみてください。そうすることで…」

「???」


 説明が終わりフォセットが目を閉じるとスウッと何かが消えたような気がすると彼女の魔力と気配が感じられなくなり二人は驚いた。


「嘘でしょ?」

「見事だね」

「これで強い魔力を感じて警戒する無害な魔物達も大人しくしてますから余計な戦闘にはなりません」

「なるほど。これは冒険者の知恵だね」

「はい」


 教師はこれで納得した。それは冒険者達は無闇に戦わず体力を温存する術に長けた者達だからだ。そうすることで彼等はいざと言う時に全力を出せるのでその知恵と技術を覚えたくてギルドに入る者は少なくなかった。

 教師はフォセットから聞く話は先程から魔物を相手にした実践に役立つ話をしているのに気付いて『もしや本職では?』と気になっていたがそれを聞かずとも彼女の様子を見る限りでは恐らく冒険者もしていたのだと察した。


「一応こんな感じですね」


 これで終わりといった様子で話すとそれからは教師とエビーチェからの質問タイムが始まりフォセットはわかる範囲は答えていたがわからない事は誤魔化さずにわからないと答えた。

 下手に隠さないので逆に無駄な知識が入らず簡潔で分かり易く教師は感心していた。


「有り難う御座いました。とても有意義な時間でした」

「いえ、此方こそ有り難うございました。私も良い刺激となり有意義な一時でした」


 珍しく教師が年下の者に頭を下げる姿にエビーチェはまた驚いたが確かに相手が素直になるほどにフォセットは惜しみなく言葉を尽くしていたので納得もしていた。


「今日は有り難う。なんだかコツが掴めそうな気がするわ」

「それは良かった。また明日」

「ええ。また明日ね」


 エビーチェを寮まで送ってからフォセットは自分の寮に向かい部屋に着くとソファーに凭れて伸びをして深呼吸した。


「さて、これで役目は果たせただろうか…」


 フォセットが条件を達成する時には必ず報せが入るようになっていた。


(まさか、卒業までやらせないよね?)


 しかし翌朝になっても報せは来ない。これでまだ続行らしいと察して肩を竦めた。




ここまで読んでくださって有難うございます。

登場人物紹介。

フォセット…シャルダン男爵家の妹

エビーチェ…キャラメツ伯爵家の令嬢。

学園の教師…実技担当。フォセットの才能の噂を知っていたが実際に話を聞きながら更に興味が湧いている

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