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それから時が経ちフォセット達もそろそろ大人としての対応を求められるような年頃になると双子の姉のノエリアもやっと大人しくなっていた。
フォセットもこれでやっと家の中が落ち着いたと思えて安堵の日々を送っていたある日。
最近では特に問題はなかった筈なのに何故か父キリアックの書斎に呼ばれたフォセットは不思議に思いつつ訪ねてみると既に待っていたキリアックに座るように促されたので素直にテーブルを挟んで座り不思議そうにしていると黙ったまま書類を差し出された。
「……はい?」
その封筒の差出人を確認すると目を疑いながらキリアックを見ると無言で頷かれてしまい彼女はわかりやすくあからさまな態度で嫌そうにしつつその表情も態度と同様に面倒臭そうにしていた。
「とりあえず制服は仕立てるから」
「どう見ても面倒にしか思えなんですけど?どうせなら研究院のローブで良くない?」
応接セットのローテーブルの上には一通の書類。それは学園からという紋章入りだった。
開封する前からそれを一目見て嫌そうにしていたが父からは『まずは読め』と無言の圧があり仕方なく内容を読み進める間に本当に面倒臭そうにしていて遠い目になっていた。
「どうしても高等部らしい」
「これは…一体誰の差し金ですか?この時期なら面倒事以外では特に何もありませんよね?」
「既に仕立て屋の日時まで指定されているから断れないよ」
「…うわぁ…強制って…尚更嫌ですよ」
「決定事項だからね」
話を聞くほどに拒否権はないと言うことを嫌という程に理解した。この諦めるしかない状況にやはりとてつもなく嫌そうな顔をしていた。
『なんとか打開策を…』と足掻こうとしたがやはりどうやっても拒否権はないとわかると渋々受けることになり指定された日に指定された服飾店に向かいオーダーメイドで仕立てる事になった。この時に更に嫌な予感がしていた。
「ねぇ、お父様?これ…やはりなんかおかしくないですか?これを着たら凄く面倒な予感しかしないのは確定ですよね。
あと『このアイテムも着けなさい』って贈られてきたから開けて確認したけど……これはもう確実にもの凄く面倒事の予感しかないよ?」
やはり勘の良い娘を何も言わずに動かそうとするのは無理があった。
「…本当は黙って現状を見て貰うつもりだったらしいんだけど…仕方ないかぁ…実はね…」
キリアックがとても気不味そうに前置きをして重い口を開くとフォセットには迷惑以外の話でしかなく盛大な溜め息と共に苛立たしそうに髪をくしゃくしゃにしていた。
「どつきたい…迷惑だぁーーー!」
「でも決定事項らしいから頼むね?」
フォセットはとりあえずやり場のない思いを思いっきり咆えてみたがキリアックが困った顔で頼むとフォセットも困った顔をした。
「…確かに仕方ありませんよねぇ。気が進まなくても我が家のためにもやれるだけの事はしてみましょう…本当に凄く気は進まないけど…」
「頼んだよ」
少し疲れた様子でポソリと話しながらフォセットはまたもや盛大な溜息混じりに遠い目をして気が進まない事を強調して嫌そうにしていた。キリアックはそんな娘を見て困ったように眉尻を下げていた。
そんなキリアックを見て彼女も困った顔をして事を起こす前から既に疲れていた二人からはまた重い溜め息が漏れ出ていた。
「ああ…夢であって欲しい…」
「…」
なんとなく呟かれたフォセットの一言にキリアックは困った顔をしたまま頷いていた。
ここまで読んで下さって有難う御座います。
一応登場人物紹介です
キリアック…双子の娘の父親。シャルダン男爵家の当主。
フォセット…双子の姉ノエリアの妹。
(裏話:シャルダン家の三人は某名前製作サイトから引用してます。特に意味を持たせてませんので気楽に読んで頂けると有り難いです)