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ノエリア②


「お姉様は本当に何やってるの?」

「何?馬鹿にしに来たの?」


 不名誉な事で退学か留年か…迷ってる私の様子を見に来たのか珍しくフォセットが私の部屋を訪ねてきたので私は思わず睨んでいた。


「そうだねぇ…愚かでしかないよね…」


 やはり馬鹿にしに来たようだわ。なんて意地悪な妹をもったのかしら…こうして腹立たしくなるのも仕方ないと思えた。


「だってお姉様って少し要領が悪いだけで能力は高いからやれば出来るのに周りの意見にばかり振り回されてそればかり気にして結局はこうして自滅してるでしょ。

 もっと自分を大事にすればよかったのに本当に勿体無いよね。だから私は貴女が愚か者にしか見えないよ」


 私の能力は高い?妹にこんな風に思われていたとは今まで思ったことがなくて驚いた。

 そんな私の心境を察したのかフォセットは少し困った顔をしていた。


「私はね。ずっとノエリアが私の話を聞いてくれるまで待ってたんだけど貴女はいつも私を比較する対象としてしか見ようとしなかったよね。だから今まで何も言えなかったんだよ。

 本当は目立つなって言った時に『そんなに周りの意見に囚われてるといずれ面倒な事になるよ』って言いたかったんだけどその当時から全く聞いてくれそうになかったから仕方なく諦めたんだよ」


 確かに今までも今も私はずっと周りの目を気にしてたような気がする。

 もしあの時に自分の欲望に気付いて上手く自分の感情を制御出来たらどんな未来になってたのだろうか…今更だけどその可能性に気付いた。


「…だって私は姉だし…」

「だから何?姉だからなんでも出来ないといけないの?人間誰しもが得手不得手があっていいと思うけどノエリアは数分の差で姉になったからってそんな差を大切にしてなんになるの?私にはその辺りが理解出来ないんだよ。

 だって私達は折角双子として生まれて来たならそれを活かして『縦の繋がりではなくて横の繋がりで協力してお互いに出来ないことを補い合って一緒にやっていこうね』っていう関係で良かったんだよ。私は今でもそう思うし個人的にそっちの方が素敵だと思うよ」


 縦ではなく横の繋がり…こんな考えは初めてだった。確かにそう考えると素敵に思えた。


「誰かのために誰かが犠牲になるよりは皆で犠牲にならない方法を考えた方が余程結束は強固になると思う。

 わかりやすく話すとそうだなぁ…権力者と平民で話してみようか。この世界に反乱の歴史は結構あるよね。その時に権力者の一個人の力は平民よりも強いよね。それは権力は集団の力で周りの人がいるから発揮出来るもので平民は個人の力だから弱い。それは貴族や権力者達が一致団結するのを恐れてるから結束をさせないようにしてるんだよ。

 でも彼等がお互いを認めて協力関係を結めばそれは命令等の力ではなくて自分達の決断の力で自分の意思の力なら互いの利害が一致してそれが一つの意志となって集まった結果の力となるからこれは横の繋がりの力なんだよ。

 その横の力が小さな波紋のように広がると他も応えて大きくなっていったことで国を揺るがす反乱の歴史が起こった。これは権力者が己の欲で縦社会を強制した結果なんだ。

 人は虐げた分だけその報いを受けるようになってる。それが国レベルで起こったら反乱になるんだよ。

 縦社会は誰かが力を持ちすぎるから弊害が起きやすいけど横社会は皆が出来ることをやるからそれなりに自由なんだ。出来ない人は経験が無いだけの場合もあるから出来ないなりの事をすればいいし出来る人がそれを助力して出来るようにすればいい。

 これは家族にも当てはまって主に縦社会で見られがちだけど長男長女が優秀なところってどれだけいる?要領がいいのは大抵が次男次女以降だから彼等は身近な上の人を見て立ち居振る舞いを学ぶんだよ。

 これについては良くも悪くも見本がいるから上手くいくんだから下より出来ないって悩むのは違うと思うし年取れば皆弱って何も出来なくなるけどその時にその人達には苦労した経験や生きる上での知恵はあるからそれだけでも敬えるよね。これについては物は考えようだと思う。

これなら私達はあまり上下に拘らなくてもいい関係でもよくないかな。個人的にノエリアが勝手に暴走して一方的にあんなくだらない事さえ言わなければなんでも二人で一緒に楽しく取り組むことも出来てたと思うんだけど?」


 表情は淡々としていたがその目は本気でそう思っていたようでその口調もとても残念そうにしていて『その辺りはどう思ってる?』と言いたげだった。


「…」


 私は謝りたいけど今までこの子に対してずっと反発していたので言葉が見つからず謝り方がわからなくなっていた。


「…もしまだ卒業資格を諦めてなければ淑女学校で卒業したら?」


 私が俯いているとフォセットが少しだけ溜め息を吐きながら口にした言葉は『もし未だに学園での卒業に固執してるならそれは今更だから学校を選ばず卒業資格だけにしろ』という意味を正確に理解すると確かに留年も嫌ではあるけどこれはこれでなんだか惨めな気分になった。


「…ねぇ…」

「なに?」

「…なんでもない…」


 どうしても素直になれずまた俯くとフォセットがそばに寄って来てそっと私の頭を撫でた。


「ノエリアって本当に意地っ張りだよねぇ…」


 その声はどう聞いても眉尻を下げながら呆れてる気がして顔を上げるとやはり困った顔をしていた。


「なによ」

「まぁ女性ならまだ可愛いんじゃない?男性ならちょっと面倒そうだけど…もう過ぎた事ではあるけどさぁ…何もしなければ折角卒業出来たのに勿体無いことしたよね」

「わかってるわよ」

「そうなんだ?」

「その辺りは反省したもの」

「そっか…ちゃんと能力はあるって証明が出来ても人格面で問題があれば仕事や社交では問題になりやすいのはわかってたんだよね?」

「ええ…」


 確かに私の間違いはそこにある。その辺りも理解していたからこれまで表向きは品行方正で通して能力面も問題なく発揮出来ていた。そのための努力もしてきた。それなのに最後で間違えた。この子が話す内容は全て身に覚えがありすぎて耳が痛かった。


「まぁ今回はまだ学園の中だったから責任とかもこれで済んだけど…もしこれが社交の場なら責任とかは大変な事になってたよ」


 これも理解出来た。フォセットが改めて私に何を話したいのかなんとなくわかってくると惨めに思えてきて感情が溢れるのと同時に涙も溢れてきた。

 この子は『まだ取り返しのつく間の失敗で良かったね』と言っていて別の視点もあることを私に示そうとしていて飄々としながらいつも先を行っているような妹に対して悔しくなった。


「…泣けたなら大丈夫そうだね。感情を抑えても良いことはない場合もあるから拗らせる前に泣きたいだけ泣いてその後はしっかりと反省してお父様とお母様に頭を下げてね」

「わかってる…」

「そっか…」


 フォセットはまた私の頭を撫でてから離れるとそのまま退室した。その後の私は泣けるだけ泣いて悔しさや無念を表に押し出していた。

 それから少しだけすっきりして両親に謝罪すると「もっと早くに気付いて欲しかったけどちゃんと気付けて良かった」と言われて複雑ではあったけど何か大切なものを得たような気もしていた。






ここまで読んでくださって有難うございます。

一部こじつけ感が……と思った皆様。軽く流して下さい。

軽く登場人物の心境の紹介。

ノエリア…今まで苦しかった気持ちもやっと表に出せて泣けてきた

フォセット…やっと姉とやり直せそうで安堵した。なんだかんだ言っても家族は大事

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