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「此方は編入時に理事長様より『問題行動を起こす可能性のある生徒を炙り出し記録せよ』との指示がありましたのでいつでも出せる状態にしたものです。
特に私はこの学園ではかなり特殊な存在でしてそれを示すためにこのように制服も皆様とは違うものを仕立てる程なんですけど…この意味がわかる方はおられますか?」
「それは編入生だからでしょ?セヴァロス様からはそう伺ってるわ」
「…理事長様?やはり話してませんね?」
困った顔を理事長に向けると理事長も困った顔をしながら口を開いた。
「それは仕方ないことだよ。あの状況で全てを明かす事は出来なかった。
しかし君がしっかりとその能力を皆に示し卒業した今ならこれも開示して問題はないから明かす事を許可しよう」
改めて話されたフォセットと理事長の会話を聞いた周囲の生徒や保護者達は嫌な予感がした。
「承知しました。では改めてご説明しましょう。私は退学扱いとなってましたがその当時に既に卒業までしております。
今回については在校生の扱いではなく卒業生として理事長様から編入せよとのお話でした。
理由の一つは私が一年間しっかりと授業を受けて学園の対面を保つこと。もう一つは既に卒業まで済ませた者を無能扱いして学園の質を下げようとした者の炙り出しとその対処ですね」
会場がざわついて少し騒がしくなったがフォセットは気にせず続ける事にした。
「その私がキャラメツ伯爵令嬢様をきっちり指導したんです。この状況で成績が上がらない方がおかしいとは思いませんか。
これで本来なら学園の体面と彼女の面子も回復した筈なんですよ。それなのに今は彼女が不当に貶められようとしてる。これはどういうことでしょうか。
キルヒホッス侯爵家のミルトネア様でしたっけ?この記録は学園の防犯用の監視魔道具からの本物の映像です。
これによると貴女はあまり勉学に励まれていないように見受けられますが…何も努力をせずにキャラメツ伯爵令嬢様を貶めるならその説得力は皆無。
予想はついてますが私の性格が悪いと言う噂もノエリアお姉様とキルヒホッス侯爵令嬢様でしょう?
理由はそこまでする動機が他の方にありませんしお二人は私の事でそれぞれ妬み等を持ってらしたようですから」
薄い板状の魔道具を床に置くとそこから大きなスクリーンが浮かび上がり問題になりそうな生徒達の映像が流れるとミルトネアとノエリアの映像もしっかりと映っていた。
「やはり貴女は性格が悪いと思うわ。こんな話をこのような場でするべきではないと思うもの…だから妙な噂が立つのではなくて?」
「そうね。わたくしもそう思いましたわ。人柄に問題があるようね」
改めて自分の行動を見せられたノエリアとミルトネアは腹立たしそうにしたが二人からの矛盾した話にフォセットは呆れてしまいやれやれと溜め息が漏れていた。
「どこまでも愚かですね…まずご自分達の現在の行動についてご理解頂いてますか?自分の行いを棚に上げてよくそれを口に出来ましたね。
出来れば私もこのような場で話したくはなかったですけどお二人が用意したこの状況なら仕方ありません。
私が初めに話した事を覚えてますか?私は『ご自分達の行動の結果です』と話しましたしこれはここにいる皆様が聞いてますので証人としては十分でしょう。
全ては貴女方がキャラメツ伯爵令嬢様をこのような公の場で貶めずに人の居ない場所で穏便に話せば良かった話ではありませんか。
それを態々このような形で大袈裟にしたのはご自分達であると今一度ご理解下さい。
いくら位が高かろうが努力して得た人間の誇りや尊厳に対して勝手な妄想で謂れの無い罪を着せてこの場で汚した罪は重いのではと私は考えてますし私が貴女と一緒にいる事を断った理由はそこにあるのですが気付いておられないようでとても残念ですね」
この時に周囲からミルトネアへ向ける視線が冷たくなっていたが彼女は腹立たしさが先に立ち気付いてなかった。
「…でもあの結果には…」
今度は姉ノエリアが悔し紛れに口にしたのでフォセットから呆れた視線を向けられていた。
「まだそんな事を口にするのですか?ではお姉様は自分が順位を落としたのは彼女のせいだと言いたいって事ですよね。
それって私がいるだけで勉強が出来なくなったって言ってる気がするのですけど…私が居ても居なくても出来る人は出来ますし逆に私を抜こうとして励む方もいると思います。
そんな事で他人に攻撃するならとんだ小物ですよね。私は既にお断りしてますが先程は理事長様より教師への打診を受ける程なんです。その私が話す言葉はこの場では教師と似たような重みがあるのはご存知ですか?」
「理事長様これは本当ですの?」
ここはあくまでもまだ学び舎の中。流石にこの場でする彼女の話が学園関係者の言葉と同等なら無下には出来ないのでノエリアはまず理事長に事実確認をする事にした。
「えぇ本当ですよ。即答で断られましたが彼女は最年少で卒業して更に専門分野の権威の方々にも一目置かれてますから彼女に気に入られたら専門家達も協力的になると言われる程に人脈もある方です。
そのような方なら是非とも我が校の教師になってほしいところですがね?」
意味深に向けられた理事長の視線の意図を察したフォセットは苦笑した。
「申し訳ありませんが気持ちは変わりません」
「気が変わったらいつでも声を掛けて下さいね?」
二人の会話を聞きながらここでやっと相手が悪かった事に気付いた様子のノエリア達はばつが悪そうにしていたが時は既に遅かった。
周りからは白い目を向けられていて特にノエリアが今までフォセットをダシにして得てきた信頼は砂上の城の如く脆く儚いものだったために少し突くと一瞬で失うものだった。
この事実は事情を知らない誰が見ても一目瞭然だったので彼女達と親しければ『これ以上の抵抗は止めたほうが良いのでは?』と忠告しそうなものだが誰も彼女達に忠告するものはおらずただ見つめているだけだった。
当事者のノエリア達はこれ以上の言い訳は醜態以外にはならないのだがプライドだけは高い彼女達は自分の事で精一杯で未だにそれに気付いてなかった。
「…申し訳ありません。私も苦手な人間というのはいますから…何分無理はしたくない主義なので諦めて下さいね」
「仕方ないですね」
少しだけノエリアとミルトネアを見て理事長を見ると彼女の言いたいことを察した理事長も困った顔をしていた。
ここまで読んでくださって有難うございます。
ザックリ登場人物紹介。宜しければ。ご利用下さい。
フォセット…ノエリアの妹。やっと全てを明かす事は出来たが複雑。
ノエリア…フォセットの姉。まさかの展開にもう少し慎重になるべきだったと少し後悔。
ミルトネア…キルヒホッス侯爵家の令嬢。どんな状況でも自分は権力者の娘なのでこの場も優位な立場である事を疑わず反省の色なし。
学園理事長…流石にこれは腹立たしい。




