17、
再び学園に戻ります。
楽しい夏季休暇が終わり退屈な日々が戻って来たのでフォセットとしてはモチベーションが上がらず困った。
この学園は一年を二学期制で分けていてそれぞれを春学期と秋学期と呼ばれている。今は秋学期なのでこの期間をなんとかやり過ごせばやっと家に帰れるのだがフォセットは全く興味のない事で縛られるのはとてつもなくエネルギーを使うのでこのままサボりたくなったがそうも言ってられないので渋々登校していた。
「フォセット今日から宜しくね」
「エビーチェ宜しくね」
二人は教室で会うと夏季休暇の話で盛り上がり始業式のあるホールへと向かった。
生徒会のメンバーが壇上に上がりセヴァロスが始業の挨拶をしていた。
(やっとあと半分か…長いなぁ…サボりたい…でもなぁ…本当に面倒を増やさないで欲しい)
こんな事を思いながらフォセットは壇上に居る姉のノエリアを見ながら彼女がこれ以上妙な事をしないでほしいと願っていた。
新学期になるとフォセットが何も出来ないと言う噂がかなり薄まっていて見る目が変わりフォセット対にして出来れば近付きたそうにする生徒が増えていた。
しかし彼女は周りにあまり興味を示さず劣等生として噂もあったエビーチェとよくいる姿が目立ちエビーチェに嫉妬する者も現れた。
「キャラメツ伯爵令嬢。貴女あの男爵令嬢とどうやって仲良くなったの?」
「それはあの方が一人でいらしたから普通に声を掛けただけですわ」
「…落ちこぼれの貴女がいると才女として噂も立ち始めてる彼女にも迷惑ではなくて?」
「…」
少しでも自分のプラスにしたい令嬢がエビーチェを人気の無い場所に呼び出して数人で囲い罵っていた。
「あぁ、エビーチェ様ここにいたんですね。探しましたよ。送るのでそろそろ帰りませんか」
エビーチェが困惑しながら涙目になっていると相変わらず飄々とした様子のフォセットが現れて彼女を見付けると他の令嬢達を無視して手を貸してその場を後にしようとした。
「少しお待ちになって!」
「なんでしょうか?」
「貴女はその子がどれだけ落ちこぼれで有名なのかをご存知無いの?」
「え?それは一体どなたの事を話されているのでしょうか?もしその落ちこぼれと言う人物が私の隣にいる令嬢なら貴女の目は節穴ですよ?」
当たり前のように平然と言ってのけるフォセットにエビーチェは唖然としていて罵っていた令嬢の口許は腹立たしそうに少し歪んでいた。
「な、なんですって!」
「何ってこれは本当の事ですよ。本当に彼女が落ちこぼれと言われていたならそれは彼女に味方がいなかったからですよ。
人にはかなり大きく分けて二つに分かれると思いますよ。一つは自己完結型。これは私のように誰かが何か言っても特に落ち込まず我が道を行きますから後からそれなりの人が寄って来ますね。
もう一つは他力本願型。これは誰がそばにいるかによって発揮できるその能力にも影響するんです。
この場合の彼女は明らかに後者で初めから頼れる人が一人でもいれば必ず伸びますよ。その証拠に前期の試験結果はかなり上がったでしょう?それが結果で現れていて全てですけど他に何かありますか?」
簡単に噛み砕いてわかりやすく説明すると令嬢達はなにやら癪に障ったのか更に腹立たしそうにした。
「確かに上がってましたわ。でも貴女が居なければ何も出来ないのと一緒よね?」
「では貴女は如何ですか?」
「え?」
「権力も翳す事もなく一人で過ごし結果を出せたなら私も認めますよ。でも今の貴女は多勢で一人を貶める醜い行為をしてますよね。
それで彼女を貶めるなら第三者の視点からすると明らかに貴女もご自身で自分も同じだと認めたようなものですよ?」
確かに今の状況では一人を囲って言いたい事を口にしてるだけの無能扱いをされてもおかしくはなかった。そこに気付いた令嬢は少しだけ動揺してるのか目が泳いでいた。
「わ、わたくしはただ…」
「ただ…?なんでしょうか。私が間違えた事を話してますか?もしそう思われるなら学園の監視映像の魔道具でこの時刻の様子の映像を出して頂いて周囲の方に見て貰い権力等を翳す事なく率直な意見を尋ねられてみられては如何でしょうか。
この場合では格下の方に見せた場合は皆様が貴女に遠慮なさると思いますから適切な人物としては今は好都合な事に生徒会に第三王子殿下もいらっしゃいますから一番の権力者である彼に公平な判断を求めてみるのも宜しいでしょうね」
言い淀む彼女に畳み掛けるように話すと流石にセヴァロスの目に入れられたくない令嬢達はわかりやすく動揺を見せたのでフォセットからは呆れたように小さな溜め息が漏れ出ていた。
「…私の事を申し上げますと彼女に教える事は私にとって有意義なことなのですが今の貴女の話ではそれを理解しようとはせずに一方的に自分の正義を振り翳しましたよね。
更に人との付き合いで能力を活かせるかどうかはその人次第なのに私の事を知りもせずに勝手に他人の価値観を決め付ける方は個人的に苦手なのであまり近寄らない事にしてるんです。
もし貴女が他人から勝手に決め付けられた挙げ句に伸びる能力も全く伸びずにそのまま潰されたらどう思います?堪ったものではないと思いませんか。
私はそういう伸びる才能が他人からの心無い一言で潰されるのがどうにも我慢ならないんですよ。
因みに彼女に教えると私は今まで自分の見えてなかった視点で物事が見られるので楽しんで教えてますからご心配には及びません。
もしその点をお気遣い頂いてたら申し訳ありませんが私にマイナスになることはありませんのでご安心下さいね。お気遣い有り難う御座いました」
淡々とした口調でエビーチェと居るのは邪魔ではなく寧ろ有益なのだと話すとエビーチェはなんだか心強くなり温かいものが溢れて頬を伝っていた。
その一方で令嬢達は馬鹿にされたと思いワナワナと震えていた。
「エビーチェ様?大丈夫ですよ。貴女は私の邪魔ではないし私が自分の意志で貴女との交流を選んで望んでますから。
貴女はたまに私に無い可能性を示してくれるし一緒にいると楽しいから安心して下さいね」
「フォセット…有難う」
「はい。どういたしまして」
エビーチェに向けて優しく微笑むと彼女も嬉しそうに微笑んだ。
「そんなに落ちこぼれと居たいならそうすればいいわ!後から後悔しても遅いわよ!」
「お気遣い有り難う御座いました」
その令嬢は腹立たしそうにしながら捨て台詞を口にして取り巻きを連れてその場を去ろうとした時にフォセットは彼女に対して一応礼だけは口にした。
「やれやれ…自分から無能を公表してどうするんだろうね?権力しか能がなければ媚を売るしか無いのに…もう少し賢く生きればこんな事をしなくても良さそうだけどねぇ?」
「…貴女に掛かればそうなるのね…」
「まぁそうだねぇ…」
(気付く者は既に動いてるけどねぇ…)
この時に含みを持たせたフォセットの話にエビーチェは不思議そうにしていた。
ここまで読んでくださって有難うございます。
ザックリ登場人物の紹介。宜しけれはご利用下さい。
フォセット…シャルダン男爵家の双子の妹。ここは学園で身分差もあまりない状態で身分を振り翳すのは阿呆だと思っている。
エビーチェ…キャラメツ伯爵家の令嬢。心強い味方が出来たことで心に余裕が持てた。
苛めっ子令嬢達…フォセットの能力が高いとわかり自分の格を上げたくてフォセットに近付きたかったがエビーチェが目障り思えて嫉妬したらフォセットにやり返されて腹立たしい




