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14/27

14、


(なんとも気さくな方だな)


 フォセットは先程の事を思い出しながら勘違いする者が居そうで苦笑した。


(そこは王族だしなんとでもなるのか…)


 深く考えるのも失礼だと思いあまり気にしないことにした。部屋に戻ると椅子に凭れながら伸びをした。


「それにしてもいつになったら帰れるんだ?」


 個人的に十分働いた筈なのだがまだ足りないとなるとこの先が面倒な予感しかない。


(あー早く家に戻りたいなぁ…)


 面倒だと思ってもこれは学園からの依頼なのでどうする事も出来なかった。


「あぁ……あの阿呆のせいで何故私がこんな目にぃぃ…いい加減にしてくれぇ…」


 思いが口をついていたが虚しさしかないので窓を開けて外の空気を入れ替えながら気持ちも入れ替えると今後に役に立ちそうな事は何かないかと思考を巡らせていた。

 思い返して良いことといえばキャラメツ伯爵と知り合えた事くらいでそこから気持ちを上げるのは簡単だった。


(いやぁ本当に楽しみになってきたなぁ…ペリオルビーの生態はなかなか観察する機会がないから今から楽しみなんだよねぇー)


 これは宿を借りてでも行きたくなる程だったので今回のお誘いは魅力的なものだった。


(早く休暇にならないかなぁ)


 窓を閉めた後も気持ちは上がり調子で自然と口許も緩んでいた。




*****




 それから日々が過ぎて試験が終わると皆の緊張が緩みまた穏やかな日々が過ぎてやっと待ちに待った休暇がきた。


(やっと…やっとこの日が…長かった…)


 終業式が近付くに連れてフォセットはソワソワしていた。


「フォセット、是非いらしてね!」

「はい。期日には必ず伺います」


 終業式の日。エビーチェとフォセットの二人は固く握手して休暇も会う約束をするとそれぞれの帰路に就いた。


「お父様、ただいま戻りました」


 フォセットは帰宅するとすぐに父キリアックのもとへ訪ねていた。


「お帰り。申し訳ないけどまだ連絡が来ないんだよ」

「そうですか…」


 それは理事長からの報せなのだがこの意味はまだ登校せよということだった。

 フォセットは気を取り直して学園での話をするとキリアックは少しやり過ぎな気がしたがノエリアはそれだけの事をしたので今は黙認する事にした。


「なるほどねぇ…そこまで成果を出してもまだ続行となると卒業までいさせるつもりかもね」

「お父様もそう思います?本当に困るので早く辞めさせてくれないかな…」


 二人はやれやれと溜め息が漏れた。


「でもここまでの成果で突然辞めるとなると学園側に何かあると思われるよね」 

「確かにそうですけど…そこは曖昧に研究生に上がったとかでも良くないですか?」


 キリアックも確かにと納得したがそれが出来ない理由がわからず困惑した。


「確かにやりようはあるか…一体何を考えてるんだか…」

「うちは男爵家ですから注目しなくてよくないかなぁって思うんですけど?」

「国は優秀な者を手放さないからねぇ…」

「それなら研究生でいいんだけどなぁ?」

「なんとなく学園側に尋ねても上手く躱されそうだね…」


 キリアックの言葉がとどめとなり二人は困ったような顔になっていた。




*****




 それから数日後。


「お父様、報告が遅くて申し訳ありません。明日から例のお出掛けをしてきますので宜しくお願いしますね」

「わかった。土産を頼むね!私もあそこの蜂蜜が大好きなんだよねぇ」

「わかります!それは勿論ですよ!現地なら安くで手に入ると思いますし…」


 この明るい話題になると二人はこの蜂蜜を使った食べ物の話題で会話を楽しんだ。

 そして楽しみにしていた出発当日。


「フォセットさん久しぶりだね」

「ハドマーさんお久しぶりです。今回は予定を空けて下さって有り難うございます」


 薄い茶髪に高身長で体格の良い彼の名はハドマー・ロナルド。フォセットがハンネスに昆虫学の権威と話していた人物で彼にはエルフの血が入っていて若く見えてもかなりの年齢なのだがエルフは華奢な者が多いので体格の良い彼の知識に興味を持つ者から『本当にエルフ族なのか』と疑う者が多く面倒になった彼は出来る限り他人との接触を避けていた。

 フォセットと知り合ったのは知人に誘われて行った集会で招待客の中には学園の関係者も参加するような集まりだった。

 そこで偶々(たまたま)彼女を見てまだ子供なのに昆虫の生態に詳しくハドマーの本は専門書なのに熟読していたので興味を持って話しかけたのが始まりだった。

 それから偶に会って話をしているといつしか共通の趣味友になり自然な流れでペンフレンドとなり今も交流は続いていた。


「私も誘ってくれて嬉しいよ。偶に領主からの招待は一応来るけど主に我々の結果のみの知識ばかり得ようとする者ばかりで深く耳を傾ける人はいなかったからうんざりしてたんだ。

 でも今回は研究の協力もしてくれそうだし楽しみにしてたんだよ」

「わかります。利益の知識ばかり得るといざと言う時に対応に困った挙げ句に最後には私達が責められるのは御免ですよね」

「そうそう」


 この日はハドマーがフォセットに会いに来て合流すると指定された時刻にキャラメツ伯爵家から迎えの馬車が来たのでそれに乗り込みこんな話をしていた。

 二人共それぞれ苦労をしてきたのでこの手の話題は尽きずに最後は愚痴のこぼし合いになっていてお互いに気付くと苦笑していた。





ここまで読んでくださってありがとうございます。

登場人物の紹介です。

フォセット…シャルダン男爵家の双子の妹。

キリアック…シャルダン男爵。フォセット達の父親

エビーチェ…キャラメツ伯爵家の令嬢

ハドマー・ロナルド…この国では昆虫学の権威として有名な学者。しっかりとエルフの血を引いているが周囲に疑われすぎて人間嫌いに…フォセットから「犯罪者ではないのに人種なんて気にする必要あるのか?」と断言されて差別しない性格なので仲良し

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