13、
学園に戻ると魔法練習場に向かい久々に一人で魔法を使ってオリジナルの動く的を出すとそれを素早く攻撃する練習をしていた。
(もう少し改善するか…)
何もない空間をノックして空間魔法でメモを取り出すとすぐに感じた事を書き込んだ。
近くのベンチに座り魔法陣を描きながら検証してを繰り返すと妙な視線を感じた。そちらを見ると居たのは面倒な人だった。
「やはり君はあの時の生徒だよね?」
『以前に会った事がありませんか?』この口説きの常套文句のような台詞で近付いて来たのは第三王子で生徒会長のセヴァロスだった。
(あの時?何時だ?あまり社交に出なかったけど…面識あったかな?)
幾ら思い出そうとしてもこんな事を言われる覚えが全く思い浮かばず眉を寄せた。
「君は中等部で攻撃魔法の練習してた事があるよね?」
(あー、確かにストレス発散でやってたような気はするけど…)
思い出せる範囲で思い出そうとしてもやはり思い浮かばず『けど…』で終わり困った顔になっていた。
フォセットが本当に覚えてなさそうだったのでセヴァロスは少し残念そうに眉尻を下げながら説明する事にして当時にも声を掛けたが『下級貴族ですので…』と名乗らずに立ち去った事を話して様子を見ることにした。
しかしこの話を聞いてもフォセットはなんとなくやりそうだと感じる程度だった。
「本当に覚えてないんだね…」
「…申し訳ありません」
此方に悪気はないのだが彼の残念そうな表情を見るとなんだか申し訳なくなった。
「ごめんね。一度だけの出会いだったけど僕が覚えていただけなんだ。よかったら君の話を聞かせてくれないかな」
「話ですか?」
「そう。君はここで何をしてたの?」
「今は魔法の実験で…」
とりあえず素直に話すと彼もなんだか楽しそうに思えて興味を持った。
「じゃあさぁ…速度に問題があるなら…」
セヴァロスも魔法で紙を出すとそれに可能性を書き出した。
「なるほど…速度の最適化ですか…1〜5段階でイメージするとわかり易いかもですね」
「そうだね」
二人は初めはなんとも言えない雰囲気だったが話題が切り替わると意気投合して盛り上がり出来たものは漏れが無いか確認して威力を小さくして試すと上手くいき少しずつ威力を強めて何処まで対応可能なのかを確認した。
「問題はなさそうですね。とても勉強になりました。有り難う御座いました」
「私も楽しかったよ。改めて自己紹介をさせて欲しい。私は第三王子のセヴァロス・ヴェスタル。この学園では生徒会長をしている」
「…初めまして第三王子殿下。私はシャルダン男爵家の次女。フォセットと申します。
この度はお声掛け頂きまして光栄に御座います。殿下の貴重なお時間と知恵を賜り有り難う御座いました」
先に名乗られると流石に名乗らないわけにはいかないのでキッチリ挨拶して距離を取ることにした。セヴァロスは一気に距離ができた事を悟るとなんだか寂しくなった。
「ここは学園の中だから堅苦しいのはやめてもいいよ?」
「いえ、名乗って頂いたなら此方も外での対応を勘違いしてはなりませんので申し訳ありませんが適切な距離を取らせて頂きます」
フォセットの話は確かに正論だった。たまに勘違いして学園での態度を公の場でもしてしまい顰蹙を買う者がいる。それは友人だけの席なら問題はないが公の場での席で弁えずにやる者がいるため困る事があった。
個人的に親しくしてみたかったセヴァロスとしては物足りないものを感じていたがこれを言われると何も出来なくなった。
「…私はそろそろ戻ります。殿下の知恵をお借り出来たことに感謝致します」
「…こちらこそ。楽しかった」
再びフォセットは丁寧な礼をするとその場を去った。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
登場人物の紹介です。
フォセット…シャルダン男爵の双子の妹。
セヴァロス…このヴェスタル国の第三王子。現生徒会長




