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1、


「ねぇ、貴女は何故そんなに目立つのが好きなのかしら?」

「は?」


 金髪の少女の話に銀髪の少女はいきなり何を言われたのかわからず初めはキョトンとしたが金髪の少女が先程から何やら不穏な雰囲気を漂わせていたので銀髪の少女は警戒して注意深く観察する事にした。


「私より目立たないで」

「目立つ?」

「白々しいわね?少しは年長者を敬いなさい」

「あぁはいはい…年長者ねぇ…それ年取っても言える?」


 年下の銀髪の少女は不敵に笑うと年上の金髪の少女は腹立たしそうにしていて少し口許が歪んでいた。


「なんて減らず口なの!兎に角!私を引き立てなさい!いいわね」

「ああ…糞面倒臭い…」


(あ、あら?この話し方なら問題ないような?これなら私が何も言わなくても引き立て役になりそうねぇ?)


 ボソリと呟いた銀髪の少女を見ながら金髪の少女はその口の悪さに内心ではにんまりしていた。


「今日のところはもういいわ!」


 この時の金髪の少女は銀髪の少女の部屋にいきなり訪れたかと思うとこのような事を話して銀髪の少女を困惑させると金髪の少女は何やら機嫌が直ったのかそのまま戻って行った。その後ろ姿を見ながら銀髪の少女はやはり一体何がしたかったのかわからず眉尻を下げていた。

 彼女達は双子であるが性格は違っていた。

 今目立つなと話していた彼女は少しだけ年上で普段は真面目で努力家な姉のノエリア・シャルダン。

 結局のところ何がしたかったのかわからず困惑しているこの彼女は少しだけ年下で普段は面倒臭がりだがいざとなれば有能な妹のフォセット・シャルダン。

 容姿は姉のノエリアは髪色が濃い金髪で妹のフォセットは一応は銀髪なのだが色が薄すぎるのでほぼ白色だった。

 瞳の色は同じ深い紫色だったがフォセットはよく見ると魔力が反射してキラキラしていてこれで性格も素直なら完璧だったがとてつもなく面倒臭がりで気分屋なので天は少しは残念要素を与えていたようである。


「なんだ?あれ」


 フォセットはたった数分しか違わない姉が威張り散らして立ち去る姿を見ながら面倒臭そうに頭を掻いていた。

 この時のノエリアの読みは浅かったのだと彼女自身が知るのはその後の事だった。


「フォセット様はとても覚えが宜しいですわ」

「既に義務教育の座学は終えてますし、こんなに優秀な生徒は初めてですよ」

「後は実技のみですわね」


 家庭教師達から妹が絶賛されて姉であるノエリアは肩身が狭くなっていた。




*****




「とりあえずやることは終わったんで今後はやりたい事やらせて頂きまーす」


 そう告げるとフォセットは早々と国が設立した王立学園の中等部の寮に入り姉から逃げた。

 この学園には初等部、中等部、高等部とあり、大学はないが研究院と呼ばれる専門分野を学びたい人が入る研究所があり一般課程とされる高等部までは移動の関係等で寮に住みたい人は自由に選択できるが研究院となれば全寮制が義務付けられる。

 この説明でなんとなくでもわかるように国が優秀な人材を囲い込むために作ったので彼等の成果はすぐに国に報告されていた。

 この国にはいくつかの学校があり識字率を上げるためと言う事で平民も含めて義務教育で子供達を教育していた。

 貴族の場合は主にこの王立学園に通う事になっていたがこの学園は優秀であれば他の学校からの引き抜きで平民も通うことができて彼等は貴族の生徒達から虐められないように校舎や寮を分けていたので同じ敷地内でも会うことはなかった。

 校舎等については貴族は家で学ぶ者が多いため高等部から通うものが多くなるので校舎も高等部だけは大きく作られていた。

 フォセットは年齢的な面も考慮してこの学園の中等部に通う事にすると迷わず寮生活を選んでいた。これで暫くはノエリアと会わずに済むのでやりたいことをして過ごす事にした。


「君は何故授業に出ないのかね?」

「とりあえず全て終わってます」


 この日はフォセットが退屈すぎる授業を抜け出している事を教師に気付かれてしまい呼び出しを受けていた。


「ではテストをしましょう。君が何処まで出来るのかを試すから出来なければ授業を受けなさい。いいですね」

「はい。では…もし出来たら授業を免除でサボりを認めて頂きますね」


 図々しい話に教師は腹立たしく思えたが出来ないだろうと思い頷いた。


「はい、楽勝ですねぇ」


 結果はフォセットが見事にやり遂げて教師達は惨敗した。


「では何処まで出来るのですか?」


 こうなると彼等も教育者として興味が湧き彼女の実力を知りたくなっていた。


「専門分野までは問題ありませんよ」

「では試してみましょう」


 こうしてフォセットは教師からサボりを容認させる事に成功した。

 この事は他の教師も知るところとなり流石に教師が負けたとなれば面子が立たないので黙認することになった。

 これで晴れて教師に認められた彼女は面倒事を避けるために学園の体面も視野に入れて一応は他の生徒に配慮しながらも自由に過ごしていた。

 この日は密かに魔法練習場に向かい攻撃魔法の練習で的当てをしながら気の向くままに魔法を打ちまくりストレス発散していた。


「君それだけ出来るって凄いね」

「え?どうも。終わったのでどうぞ」


 フォセットは折角乗ってきたところを知らない男子生徒に邪魔されて興が削がれたのでここは譲る事にした。


「待って!」

「何か?」

「名前を…」


(見た感じ…憶測だけど雰囲気で格上っぽいな…そうなるとやることは一つしかないか…)


 学園では制服なので皆が同じ服なのだが階級で少しだけデザインが違うことと雰囲気などでなんとなく上下がわかるのでフォセットは軽く観察して数秒考えた。


「ここは学園ですが普段の私は底辺に近い者ですので学園といえ名乗るのは恐れ多いと感じております。申し訳ありません、これで失礼致します」


 フォセットは相手が名乗る事がなかったのでこれを利用して適当に言葉を濁してこれ以上は関わらない事に越したことはないと瞬時に判断すると面倒臭さを隠さず怠そうに話して足早に部屋に戻った。


(次は何をしようかなぁ…なんかここも飽きたしなぁ…仕方ない…そろそろ戻るかぁ…)


 いつでも彼女の思考はぶれず自由人のままだった。教師達に家に戻る事を話すと中等部、高等部、研究院までの課程は既に終わっている証明書が貰えた。この時にもし中等部や高等部に入るなら特別枠で入れるそうで研究院に入る場合は得意な分野の院生の扱いになると説明を受けたのだがフォセットは説明を受けながら彼等の特別扱いが凄すぎて思わず苦笑しつつ礼を伝えた。

 そしてのんびりするために家に戻った。




*****




「暇で仕方なくて只今戻りましたぁ」


 自由人を全面に出して不良生徒のサボり文句のような事を口にして帰宅すると皆が苦笑していたがノエリアだけは睨んでいた。

 フォセットは然り気なく彼女をチラリと見てからこの状態の時に関わると(ろく)なことしかなくこの先が面倒になることを察して無視した。


「フォセットは後で話があるから着替えが終わり次第、書斎に来なさい」

「わかりました」


 父キリアック・シャルダンはフォセットよりも濃い銀髪で普段は優しそうな印象なのだがこのときは少し怒っている様子で書斎にフォセットのみを呼び出すと部屋に入っても飄々としている娘に困ったような顔を向けて口を開いた。


「それで?何故戻ったのか説明しなさい」

「…どうぞ」


 説明も何もなく淡々と差し出された書類に目を通すとキリアックは信じられないと顔が物語り書類とフォセットを交互に見ていた。


「凄いじゃないか!」

「有り難う御座います。気が向けば何時でも編入も可能だそうです」


 フォセットは中等部の校長と学園の理事長から受けた説明を話すと驚いていた。


「あー因みに研究院なら院生の証のローブを作らないといけないそうです」

「これからどうするつもりだ?」

「とりあえず…ごろ寝…のち…サボり?」


 少し首を傾げながら出てきた言葉はまるで天気予報のようだった。


「…」


 キリアックは考える仕草を見せつつもわかり易い程に完全にやる気を失くしている娘に呆れながら苦笑していた。




ここまで読んでくださってありがとう御座いました。

生意気なフォセットにも問題ありですがお付き合い下さると幸いです。

ここでは主に登場人物を整理します。

ノエリア・シャルダン…双子の姉

フォセット・シャルダン…双子の妹で主人公

キリアック・シャルダン…二人の父親

この話では「碌なこと…」を敢えて「陸なこと…」と書いてみてます。

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