2. とりま最低条件とっぱ
「はぁ……。」
ちょっと深めのため息をつきながら学校へ足を進める。
原因は昨日の会長の言葉だ。
「まぁ取り壊されたり先生に言いつけられるよりかは遥かに良い結果ではあるんだけど…。」
そういえばなんで会長も使いたいんだろうか。
もしかしたらあの堅物会長にもああいう秘密基地的なものにあこがれが…?
そうだったらちょっと面白いかもな。
そんなことを考えながら校門をくぐり、上靴に履き替えて教室に入る。
俺はあんまりクラスで目立つような活動はしていない。
中学ではしてたけど今は部活だってしてないし、放課後カラオケなんかに行くような友達ももちろんいない。
まぁ陰キャだな。
でもまぁ女子と話すときにあからさまにどもる、なんていう性格ではないのは自分のいいところかも。
近所のおじいちゃんおばあちゃん程度ならそこそこ話も弾むと思う。
ほとんど話したことないが。
さて、もうすぐチャイムがなる時間だ。
いつもなら大体このくらいの時間にあいつがやってくるはず。
ほらきた。
「けんいち―!おっはよー!」
…はぁ。相変わらず騒がしい奴。
今俺に激しく挨拶をしてきたのは白井葵。
性格ははじけるほど喧しい。
幼いころは元気すぎる性格から男だと勘違いしていた。
俺の幼馴染みだ。
まぁその時は今ほど安寧を求めていなかったから普通に話しかけたりもしていた。
俺とは漫画や小説の趣味があったのでよくしゃべるようになっていった。
そこから5年。
そいつが思ったよりも性格が激しいと分かったときには時すでに遅し。
俺の両親の問題や、自身の性格の変化などが合わさりクラスメイトとはなかなか話さなくなっていったのだが、こいつだけはいまだに話しかけに来る。
まぁこいつはうるさいだけで話自体は趣味が合うこともあり楽しくはあるんだがな。
如何せんクラスメイトの視線が怖い。
なぜなら、性格は男っぽいし髪の毛だって短めだが、謎に胸がでかい。
非モテな男子や、陽キャ集団の中からも妙な視線を感じる。
そう、つまり嫉妬されているのだ。
俺とこいつは互いに全く異性として接していないのに。
まぁでも実害はそんなものだ。
別に誰か絡んでくるといったやつもいない。
当然だ。もう三年以上はこの学校で過ごしている。
そんなやつがいたらすでに絡んできているし、みんな俺が他の人となかなか話したがらないことを多少は分かっている。
こういうといじめを危険視するやつもいるだろうが、この学校ではいじめが少ないらしい。
調べてみたら中高一貫校ではいじめが少ないらしい。
本当かは分からないけど現に俺は全くと言っていいほどいじめの兆候がない。
だからこいつが俺に話しかけることを許している。
ちょっと偉そうか。
「うい、おはよう。今日も騒がしいな。」
「うん!だって健一と喋ってるからな!」
「毎日会ってるだろうが。」
「でも放課後は絶対に遊んでくれないじゃん!」
「そりゃあ放課後は俺がめんどくさい。それにこれからはちょっと用事があるから余計に遊べんよ。」
「え!なになに?用事なんて珍しい!」
「教えたらお前は来るだろうが。教えねーよ。」
「ムー…。こうなったら帰りにつけていって…。」
「おいこらやめろ。んなことしてるの見つけたらまじで怒るからな。」
「もー。冗談だよ。いつかちゃんと教えてくれよー!あ、もうHRはじまるな!じゃね!」
「あいよ。」
…さて。こんな感じで俺の学校生活は始まっている。
はい、放課後。
え?いや、だってなんも言う事無いからさ。
休み時間にちょっとだけ葵に話しかけられるくらいだ。
その内容だって最近好きな漫画の内容だったりするしな。
というわけで
「やっと来たのね、健一さん」
倉庫に来た。
俺が行ったときには既に会長がいた。
「早すぎだろ。」
おもわず呆れてそう言った。
俺はHR終わって直ぐに来たと思ったんだが…
「別に、あなたが遅いだけよ。」
ちょっと拗ねたように会長が言う。
……かわいいな。
さすが高潔の乙女。あ、これ会長のあだ名的な物。
葵が言ってたのを聞いたことがあるだけだけど。
俺が扉を開け、会長と一緒に倉庫の中に入る。
中に入ってすぐ、俺は思いついた疑問を会長にぶつける。
「そういえば、何で会長はここに来たがったんですか?」
「.........別に、大したことではないわ。」
「まぁ言いたくないなら良いですよ。俺だってここの場所誰にも言われたくないですし。」
そう言って俺はゆっくり床に座り込み、会長も同じように促す。
それに従って会長も座る。
「そう言うことなら。ありがたくゆっくりさせて貰うわ。」
そうして二人してゆったりとした空気に身を任せた。
時折吹いてくる風で少しばかり涼しくなり、再び少しだけ暑い空気に戻る。
そんなミニサウナのような状況におかれ、大分リラックスしていた。
昨日と同じように、サッカー部の練習の掛け声が丁度いいBGMとなっている。
そんな、この世からこの部分が少しだけ切り取られたかのような。
まるでこの空間では全てを許されているかのような雰囲気に絆されてしまったのだろう。
会長がボソッと呟くように言った。
「............別に、本当に大したことじゃないんだけど。
生徒会長っていう座で活動することに少し疲れていたってだけよ。
ありがたいことだとは思っているけど......皆私に頼ってきて、好き勝手問題点挙げて、勝手な期待を背負わせて来るの。
なまじ今までの問題を解決してしまったから余計に期待が膨らんでしまって......。」
「...裏では高潔なる乙女なんて呼ばれてるとか聞きました。」
「あぁ...そのあだ名で呼ぶことはしないでちょうだい。」
堰を切ったように会長の口から不満があふれ出す。
まぁ聞いた限りじゃストレスすごそうだしな。
「......そんな感じでこの三年間窮屈で押さえつけられた生活をしてきたわけ。」
「はい。」
「中学を卒業して高校生になってもこのレッテルははがれそうにないなって憂鬱になってたんだけど、そこでこの倉庫の存在を見つけたのよ。」
「あー…。つまり、気を抜く場所にしたいってことですか?」
「その通り。ここなら誰にも見られそうにないし、学校外じゃないから私の精神衛生上もいい。最高ね。」
「なるほど。わかりました。そういう事情なら納得です。」
思いの丈を吐き出した会長はどこかスッキリとした顔だった。
もう大分少なくなった蝉の声が聞こえる。
そんなこんなで俺と会長の二人きりの空間は出来上がった。
ちょい短め。
続きかいてるけどさ
退廃的になっていく過程をしっかりと違和感なく描くのって
めちゃむずだね。
そりゃこのジャンルを書く人が少ないわけだ。
まーでも心のりびどーが収まらない限りは書きたいね。
そのためには自家発電を抑えなきゃだわ。
('Д')ムリメ